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真実を話して


 

 みんなが自分の話を真剣に聴いてくれている中、包み隠さずに話した。

 自分は冒険者でありながら後輩を虐め周りの人を不快にする人間だと。沢山の人々から借金をし、その返済すらできない借金まみれなダメ人間だと。

 昔の輝かしい栄光などとうに堕ち、レイアが望んでいた聖人君子などではないただの愚者だと。


「――私は本当にどうしようもない人間です。そんな私が聖女様や皆様と同じ空気を吸うことすら烏滸(おこ)がましい。ですから他の謝礼は頂けません」

『『……』』


 ボールスの話を聞き誰も何も口にしない。


 それはそうだ。聖女様を助けてくれた奴が良い人だと思ったら蓋を開けたらとんでもない屑男だったのだから。

 ボールス(こんな奴)聖女様でも見限るだろ。ま、逆に俺はそれで構わない。貰った金で借金を返済してこの街から離れればそれで良い話だからな。


「――ですが、ボールス様はお会いした当初から今まで悪い人の様な雰囲気はしませんでしたよ〜?」


 空気を変えたのは聖女の言葉だった。


「ありがとうございます。ですが、私は本当に悪人でした。そんな私は“黒髪を持つ青年”に吹き飛ばされたことにより目を覚ましました。目を覚ました後、自分がやったことの後悔が立ち、少しでも皆さんの役に立とうと思ったのが聖女様と出会う少し前の話なのです」

「そうなのですね〜ですからお優しいのですね〜」


 コルデーから「優しい」と言われた俺は気恥ずかしくなり頰を掻く。


「はは、自分で肯定するのもあれですが。昔の私のまま聖女様と出会っていたらどんな不埒な態度を取っていたか、自分の目を覚ましてくれた青年には感謝しかありません。ですからもし他にも謝礼があるのならその青年に渡してください」


 俺はそれだけ言うと頭を下げる。


 ふっ。どうよこのトーク力は? 他の謝礼は要らないと言う話からあの黒髪の青年を売る…青年に恩を返す作戦。そしてあの青年が聖女様が言うような「救世主」本人だろうし、その手助けを出来る…完璧だな。


 俺の話を聞いたコルデーは微笑を絶やさず、受け答えする。


「わかりました〜後日そのお方と会って話してみます〜」

「はい、そうしてください」

「はい〜ところでボールス様はこの後のご予定は〜?」

「あ、はい。私は借金を返済するついでに迷惑をかけてしまった人々に謝りに行きます。その後はこの街を離れようと。私がいても邪魔なだけでしょうし」


 「せっかく頂いたお金をこんな使い方してしまいすみません」と苦笑いをしながら。


 ん? 待てよ、借金返済してもまだまだお金は残る。教会に行って性○を治せるのでは? そんなことを考えてしまった俺ははやる思いに駆られ立ち上がる。


「あ、すみません。お呼ばれされてなんですが、大事な用事を思い出したので自分はこれで――」

「レイアさん」

「はっ」


 立ち上がり早口でその場を離れようとした瞬間、コルデーから命を受けたレイアは立ち上がり肩を掴まれる。その時に「お許しください」とレイアから耳打ちされた。


「いでっ!?」


 物凄い腕力で肩を掴まれた俺は悲鳴を上げる。それでもレイアは手を離さない。俺とレイアの二人を囲むように騎士達が集まってくる。レイアの代わりに騎士達が俺の身動きを止め、抵抗できないようにする。


 な、何だよ!? 俺、何かしたか?


 突然の急展開にパニックを起こしコルデーの顔を見る。


「――ッ」


 コルデーの顔を見た俺は「ゾッ」と恐怖を感じてしまった。コルデーは自分のことを家畜でも見るような蔑んだ目付きで見てきていたのだ。さっきまでのほんわかとした微笑む姿はそこには無い。


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