5話 メコノプシス・グランディスの採取
遅くなりました。
簡単な準備をして出発した。地図や行動食など。
街を出て誰にも見られて居ない事を確認し、魔力を使って主な三元素の窒素、酸素、二酸化炭素を進行方向に向けて加速させる。
追い風を作り出すことに成功する。同時に前方にある抵抗を取り除いていく。
ダッシュする。「ビュ~ン。」楽ちんだ。
ん?あれ?10分程で山の麓まで到達する。確か10㎞弱あったはず…。まあいいか。
今までの人生で受けてきた理不尽な扱いがレベルアップと言う形で帰って来てくれたお陰で今がある。塞翁が馬である。感謝。
ここから4,000m程標高を上げなければならない。1,000m毎に休憩を入れていこう。
カイト・クロノア
Lv:79
Hp:1515
Mp:3239
筋力:250
魔力:1000
防御力:650
俊敏性:30
スキル:虐げられるもの
何度か魔物らしき影と出くわした気がしたが、そのまま素通りした。標高3,000m近くになると雪も残っており寒くなってきた。防寒着を着込む。
特にトラブルもなく無事に標高4,000mに到達する。辺りを探す。
「メコノプシス・グランディス、メコノプシス・グランディスは、どこかな。」
突然、上空から何かが飛来する。
「ドス~ン!」
「わぁ!」
カイトは驚く。一体何事かと。
そこには、10mは有ろうか。エメラルドの大きなドラゴンが佇んでいた。【綺麗だ】ちょっと見とれてしまった。そのドラゴンが言葉を発する。
「ん!何だ。こんな所に人間の子供?」
「まあいいか?今晩の夕食だ。」
などと独り言を言っている。なので溝内に本気でボディブロウしてみる。
「ドス~ン!」
「はう!」
美しいドラゴンは声に成らない声を発し、狐の時と同様に七転八倒している。
【以外に大したことなかったな。】カイトは思った。
「それよりメコノプシス・グランディスだよね。」
少し開けた場所に湖がある。その周りに美しい青の花が咲き乱れている。
「あった!やった!」
すると、後ろから
「小僧、舐めた真似を!」
ドラゴンが襲い掛かって来た。仕方ないので再び溝内にボディブロウする。
「ドス~ン!」
「はう!」
ドラゴンは声に成らない声を発し、七転八倒している。狐といい、このドラゴンといい学習しない子が多い。
早速、メコノプシス・グランディスを採取して帰ることにする。
「ふう。回収終了。さてと帰りますか。」
「こ、小僧!待て!」
何度も何度も学習しないな。溝内に一発。
「ドス~ン!」
「はう!」
止めは肝臓打ちで
「ドス~ン!」
「ぶっは!」
また、ドラゴンは七転八倒している。さ、帰ろう。魔力で元素を操り追い風を作り出す。前方の抵抗を無くし加速する。「ビュ~ン。」
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早速、子狸いやモンクレーの若様のところへ向かった。
そういえば、子狸の名前を聞いてなかった。何番目の子供なのか?まあいいか。後で母さんに聞いてみよう。
呼び止められた部屋の前に行きノックする。
「トントントン。」
「モンクレー卿、カイトです。」
「ん?入れ。」
「失礼します。ご依頼の品お持ちしました。」
「そうか。良くやってくれた。礼を言うぞ。」
子狸は凄い喜びようだ。
「後で褒美を出す。期待して待っておれ。」
「はい。失礼します。」
期待しないで待っていよう。家に帰ってのんびりしよう。
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「オン シュリマリママリ マリシュシュリ ソワカ」
「ゴシゴシ。キュッキュッ。」
「ゴシゴシ。キュッキュッ。」
ああ、もう生活の一部となっている。烏枢沙摩明王、感謝です。【ありがとうございます。】
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朝食の時、母さんから話があった。
「今日からロクサーヌもモンクレー家でメイド見習いとして働くことになったのよ。」
「えぇ~。ね、姉さんもですか?」
「そうよ。よろしくね。何よ。私と一緒じゃ嫌なの?」
「そ、そんな訳ないですよ。心強いです。宜しくお願いします。」
そんな訳でロクサーヌと一緒に働くことになった。少し気が重い。
「母さん、話は変わりますがモンクレー家の3階の一番東側の部屋にいる方は、どなたですか?」
「その方は、デュラン様の三男のロデオ様ね。どうしたのそんなこと?」
「ちょっと話する機会がありまして、どなたかなぁ?と」
「長男のジーク様は、独り立ちして外に出ているわ。次女のビクトリア様は3階の真ん中の部屋にいるわ。3人兄弟ね。」
「そうなんですね。ありがとうございます。」
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モンクレー家へ3人で仕事に向かった。仕事の場所はロクサーヌとは別なので少し心の荷が下りた。
「カイト、トイレ掃除は完璧に熟せる様になったようだな。」
執事長が初めて名前を呼んでくれた。認めて貰えたのだろうか?
「いえ、まだまだです。」
「次のステップに進む。幸運を呼び込む家はトイレに限らず綺麗でなくてはならない。床に物が散乱しているなど言語道断だ。」
「トイレ掃除に時間がかからなくなってきたので、トイレ掃除が終わったら部屋掃除もしてもらう。特に北東の部屋と南西の部屋は綺麗にするように。北東は鬼門だ。鬼門が汚いと女性の体調が崩れることが多い。南西は裏鬼門だ。裏鬼門が汚いとモンクレー家にいい縁談が舞い込まない。しっかりと掃除するように。」
「はい。頑張ります。」
「!」何だか。屋敷中が騒がしい。どうしたのだろうか?ちょうど母さんとすれ違ったので聞いてみた。
「母さん。何だか騒がしいのですが、何かあったのですか?」
「そうなのよ。実は、ロデオ様がある公爵家の令嬢に結婚を申し込まれたらしいの。」
「そうなんですか。大変ですね。」
「結婚を申し込まれるのは、いいのよ。でも、あの幻の花を100本持って行ったらしいわ。」
「その花は、メコノプシス・グランディスと言ってとても貴重な花なの。」
「ドゴール山脈の中腹に生息しているのだけれど、標高4,000mで、とても険しい場所なの。人が入れる場所じゃないわ。」
「おまけにエンシェントドラゴンのテリトリーよ。食べられてしまうわ。」
「一体、どこで手に入れたのか。メコノプシス・グランディスは高額で取引されていて、あの量だと小さな領地が買えるわね。頂いた公爵家も困ってしまったそうよ。」
「…。」
ロデオ様は仰られた。他言無用だと。俺は知らない。俺はドゴール山脈などに決して行ってないのだ。…。
「オン シュリマリママリ マリシュシュリ ソワカ」
「ゴシゴシ。キュッキュッ。」
「ゴシゴシ。キュッキュッ。」
俺は、全て忘れて掃除に勤しむのであった。
「オン シュリマリママリ マリシュシュリ ソワカ」
「ゴシゴシ。キュッキュッ。」
「ゴシゴシ。キュッキュッ。」
掃除は全てを忘れさせてくれる。感謝です。
こうご期待。