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固唾を飲んで見守った‼︎

「遅かったね、そんなにトイレ混んでいたの?」


「うん、女の子は時間がかかるから……って、また圭くんは」

 

「あっ、ゴメン、つい……でももう結果発表始まっているよ」


「別に、私は美月の結果さえわかれば後はどうでもいいし。美月の結果発表はまだまだ先でしょう?」


「えっ、あ、うん、そうだけれどね……」


何だろう?確かにしおりちゃんは【お台場坂49】のファンという訳ではない


単に美月の友人として来ているのだからその言葉はある意味当然と言えば当然なのだけれど……


何か言葉に妙なとげの様なモノを感じる、気のせいだとは思うけど……


メンバー達の結果発表が次々とおこなわれていきその順位に一喜一憂するメンバー達とファン


着々と結果発表は進み司会進行役の男性が名前を読み上げ祝辞を述べる


名前を呼ばれたメンバー達は一人一人がファンヘの感謝とこれからの決意を口にし、会場もそれを拍手で讃える


順位が上に行くにつれ、ある程度予想通りの位置に収まっていく選抜メンバー達


ここまでは驚くようなサプライズも無く、予定調和ともいえる展開で喜びというより安堵に近い空気が会場にも漂う


定番と言われるメンバー達が続々と居並び、会場全体の空気が重くなり否が応でも緊張感が高まっていく。


今大会は言い換えれば二人の為の戦いであり、マッチレースと言っても過言ではない


その事を会場のファンも他のメンバー達もテレビの前の視聴者すらも理解していた。


そしていよいよ運命の二位発表の時が来た。二位が発表されるという事は同時に一位が決まるという事に他ならない


言い方は悪いがこの総選挙はこの瞬間の為だけにあるといってもいいだろう。


テレビの番組スタッフから司会進行の男性に指示が飛ぶ


それに応じて司会の男性はやたら回りくどくここまでの戦いを説明し、過去の二人の対決を語り始めた


見ているファンにしてみれば〈早く結果を教えろ‼〉と心の中で叫ぶが


その気持ちを弄ぶように焦らしに焦らす司会者、僕もやたらと喉が渇く


この数分が何時間にも感じ息苦しさすら覚える、だが僕の心は今この瞬間も迷っていたのだ


〈僕はどっちに買って欲しい?どちらが勝っても喜べないのではないのか?〉と


そんな中でドーム内の照明が一斉に消え、ドラムロールの音が鳴り響く


この古臭い演出さえもどうでもいい、早く結果を教えてくれ、僕を楽にしてくれ‼


これ以上ない程ファンをいたぶって来た司会者は、スポットライトを浴びてゆっくりと前に出て来る


そして手に持っている結果の書かれている紙を仰々しく開き目を閉じた


もうこの手の過剰演出にはウンザリだ‼今後アンタの出ている番組は二度と見ないぞ‼


と心に誓い、その口から発せられる言葉に耳を傾けた。


「それでは発表いたします、第三回【お台場坂49】総選挙、第二位は……


獲得ポイント3756045点……大橋さやか‼」


その瞬間、ドーム内は〈ワアァア――‼〉という歓声と〈ああぁぁぁ〉というため息に包まれた


その正確な数は不明だが、僕の感想ではほぼ半分ずつといった感じだ。


名前を呼ばれたさやかちゃんは天を仰ぐように上空を見上げ小さな声で呟いた。


「届かなかった……か」


悲鳴のような歓声と祝福する声。拍手もパラパラと起こり始め、色々な人が様々な思いをぶつけている


さやかちゃんがどんな思いでこの戦いに挑み、どれほど一位を取りたかったのか


僕は知っているだけに僕はいいたたまれない気持ちになった。


しかしさやかちゃんは清々しい顔で前へと出て来ると司会者からマイクを受け取り会場のファンに語り掛けた。


「今回は私に投票していただいた人達に本当に感謝しています、ありがとうございました


私は秋田の田舎から出て来た特にとりえのない田舎娘です


ですがこんな私を支えてくれる人達や応援してくれる人達がいて……


嬉しくて、ありがたくて、だからそんな人たちの為に頑張りたいと思っていました


綺麗事ではなくそんな人たちの為に一番になった私を見て欲しい、貴方達のおかげで一番になれました……


って感謝の言葉を言いたい、ずっとそう思っていました。


でも今日気づいたことがあります。自分が頑張る理由を他の人たちに丸投げしている時点でダメなのだと


逆にみんなに甘えているのだと思い知りました。でもこれだけは言わせてください


私は今回二位という結果で終わりました、私自身はこの結果に納得していますし凄く感謝しています


でも私を支えてくれる人達や応援してくれるファンの方々は間違いなく世界一だと思っています


今回このような舞台を用意してもらって、ここまで頑張れたのは全て皆様のおかげです、ありがとうございました」


会場からは惜しみない拍手と健闘を称える声がさやかちゃんに向けられた


深々と頭を下げ中々頭を上げないさやかちゃん。


今回の総選挙はテレビ側の意向もあり、月島美月VS大橋さやかという図式で進められた


三位以下に三倍以上ものポイントを獲得したさやかちゃんだったが


意味合い的には〈敗者の弁〉と呼ばれるモノである事は理解しているだろう


だがその態度と言葉は何処までも堂々としており胸を張ってこの結果を受け止めていたように見えた


僕も手の感覚が無くなる程拍手しさやかちゃんの健闘をたたえた。


「おおおお、何故だ、どうして‼」


少し離れた所から松永さんの声が聞こえてくる。


この数多くの観客のいる広いドーム内で聞こえてくるのだから凄い事である


それは正に魂の叫びだったからだろう、そんな松永さんにも〈お疲れ様でした〉と心から言いたい気持である


さて二位の発表が終わりいよいよ一位の発表。だが結果はもう誰もがわかっている


皆の興味は美月がどんな気持ちでこの結果を受け止め、どのような事を話すのか?それだけを注目していた。


「それでは発表いたします、第三回【お台場坂49】総選挙、栄えある第一位は……


獲得ポイント3756347点……月島美月‼」


その結果を聞いた時、別の驚きが会場を包み込んだ、獲得ポイント差は僅か302点


CD枚数に換算すればたったの30枚分である、本当に、本当に大接戦だったのだ。


司会者に促され美月がゆっくりと前へ出て来る、だが僕はここである違和感に気づいた


先程二位だったさやかちゃんが晴れやかな顔をしていたのとは対照的に


一位を獲得したはずの美月の様子が少しおかしい、思いつめた様な表情でうつむきながら出て来たのである


スタンドマイクの前に立った美月は何も語らずただ黙って立っているだけであった


その様子は念願の一位を獲得した者と言うより葬儀の喪主の様な雰囲気である


さすがに会場のファンも美月の異変に気付き始めザワザワとし始める


この展開は予想外だったのだろう、慌てた司会者が美月にコメントを言うように促すが、まるで反応は無い……


何だ、一体何があったというのだろう?僕は気になって横のしおりちゃんに視線を移したが


しおりちゃんは真っ直ぐ冷静な目で美月を見つめている、まるでこうなる事を知っていたかのようだ


いつもやさしいしおりちゃんが無表情のまま真剣に美月を見る姿は僕の知っている秋山詩織ではなかった


美月の事を一番知っている彼女にこの事態を聞きたかったのだが


何故かとても近寄りがたく、声を掛ける雰囲気ではなかった。


美月が無言のまま立ち尽くして何秒が経ったのだろう?動揺したファンによる会場のざわつきがピークを迎えた頃


番組スタッフが司会進行の男性に指示を出し慌ててCMを挟んだ様である


そして長い沈黙の後、ようやく動き出した美月は何も言葉を発することなく深々と頭を下げた


何事か?と皆が困惑する中でゆっくりと頭を上げた美月は静かに語りはじめた。


「今日は皆さんに報告したいことがあります……」


真剣な面持ちで語りはじめた美月、その雰囲気だけでただならぬ決意が見てとれた。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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