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男として体を張った‼︎

美月とさやかちゃんを従えるようにノビノビとパフォーマンスを発揮する菅原


まるでゾーンに入ったかのような彼女の歌とダンスは曲が進むにつれ輝きを増していった


全て観客を圧倒するかのようなそのパフォーマンスは時の流れを忘れさせ、見ているもの達の心を鷲掴みにする


そんな喜びにも似た感情を全身で表現し、素晴らしい歌とダンスを撒き散らす菅原の姿は見ているもの達に雄弁と語りかける。


〈見てお父さん、お母さん、凄いでしょ⁉︎観客の人たちも、もっと私を見てよ‼︎


これが私よ、これが【お台場坂49】よ、素晴らしいでしょ、もっと見て、もっと私を見てよ‼


ああもう終わっちゃう、もっと歌っていたい、もっと踊りたい、もっと見て欲しいの


終わりたくない、もっとよ、もっと……〉


菅原による魂の叫びのようなパフォーマンスは見ているもの達を否応無しに魅了し


その幻想のような時間はあっという間に終わりを告げたようとしていた


名残を惜しむように予定通り三曲目のラストで菅原がソロパートを歌い始めると


会場の照明は暗くなりセンターの菅原にスポットライトが当たる


その隙にこっそりと裏から抜け出しにかかる僕と美月とさやかちゃん。


「今回は私たち、完全に脇役だったわね」


「悔しいけど認めざるを得ないわね、やるじゃないあの子。


ただ気持ちやテンションでパフォーマンスが左右しそうなタイプに見えた、ムラっ気がなければいいのだけれど」


「心配性だねさやかちゃん。じゃあ校舎裏にタクシーを待たせてあるから、急いで行くよ、付いてきて‼︎」


僕は二人を引き連れ走り始めた。これほどの無茶を聞いてくれた二人を何が何でも守らなければ男じゃない


そんな柄にもないことを思いながら走り出すと、早速前方に三人ほどの生徒が視界に入ってきた


向こうもこちらに気づいたのだろう、嬉しそうにニヤつきながら近づいてきた。


「写メ、いいっすか?」


「ファンです、握手してください」


そんな空気を一切読まない馬鹿どもに対し、僕はありったけの大声で叫ぶ。


「うるせー、どけオラ‼痛い目見たくなければ道を開けろ‼︎」


僕の怒鳴り声の様な恫喝で三人が一瞬怯んだ隙に素早く横を駆け抜ける僕達


そんな僕の言葉に美月とさやかちゃんも少し驚いていた。


「何、今の?」


「ビックリした、もしかして本当の圭一くんはこっちなの?」


「いや、まさか。ウチの学校いっても進学校なので、喧嘩とか慣れていない生徒が多いだろうし


言葉の威嚇で引いてくれればそれに越したことはなので、ハハハハハ」


乾いた笑いで誤魔化す僕だったが、こんなセリフがキャラ的に僕に一番合わないことは自分自身が一番理解している。


そして一難去ってまた一難。もうすぐそこにタクシーを待たせているのだが


そんな僕達の目の前に再び立ち塞がる生徒がいた。


「痛い目見たくなければ、どけコラ‼︎」


再び脅し言葉で相手を引き下がらせようとしたのだが


そんな僕の言葉のチョイスが逆に相手の闘志に火をつける結果となってしまう。


「テメエ、何だ、その口の聞き方は⁉︎」


「お前二年生だろ、上級生に向かって何だ、その口は⁉︎」


「後輩のくせに生意気だぞ‼︎」


うわ~三年生かよ、しかしもう後戻りはできない。


「うるせー、ぶっ飛ばされたいか‼︎」


僕は勢いに任せて三人の上級生の腹と顔面に正拳突きと掌底突きを連続で叩き込んだ。


「ぐえっ」


「ぐはっ」


「ゲホッ」

まさか相手も本当に暴力を振るわれるとは思っていなかったのだろう。


意表をつかれた三人は前のめりに崩れ落ちる


一応怪我させないようには手加減はしたが、やってしまったことは事実である、もうここまできたら腹を括ろう。


「姫君と天使様に近づく奴はこの俺がぶち殺す‼︎痛い目見たくなければ近寄るな‼︎」


う〜ん、我ながら本当にキャラじゃない。自分の言動を冷静に客観視すると死にたくなるほど恥ずかしい


しかし気分は悪くなかった。すると体育館の方からすごい数の生徒がこちらに向かってくるのが視界に入ってくる


我がクラスの出し物が終わり、美月とさやかちゃんがいないことに気づいた生徒達が一斉に出て来たのであろう


マズい、あの人数では少々の脅しでは効かないぞ……僕はもう覚悟を決めた。


「もうすぐそこにタクシーを待たせてある。二人は早くタクシーに乗って、一刻も早くここを離れて‼︎」


「で、でも、大丈夫なの?圭一……」


「僕に構わず早く行け、ここは僕が食い止める‼︎」


一度言ってみたかったセリフだが、まさか本当に言う機会が訪れるとは夢にも思わなかった……


迫り来る悪の軍団(我が校の生徒達)に悠然と立ち塞がる僕


今の僕は熊だろうが牛だろうがドラゴンだろうが殴り殺すことができるだろう


しばらくして二人がタクシーに乗り込み発進する音が聞こえてホッと安堵すると全身の力が抜けた


目の前にはさっき殴り倒した先輩がものすごい形相で迫って来ていた


手加減した分だけダメージ回復も早かったのだろう。姫と天使を送り出した僕にもう戦う理由はない


迫り来る憤怒と憎悪の前にそのまま飲み込まれてしまう、早い話が僕は無抵抗のままボコボコにされたのである。



 【停学通知書】 

二年一組 田村圭一は多数の生徒に対し暴力的行為をおこなった為、一週間の停学処分とする。

 令和○○年 △月 ◇◇日


〈学園祭〉の翌日、学校の掲示板にこのような書類が張り出された。


まあ仕方がない、この処分は覚悟の上だ。むしろ一週間程度で済んで良かったとも思える。


この人生で初めて食らった停学処分。一番辛かったのは一週間もしおりちゃんと会えなかったことだ


逆に一番嬉しかったことは、そのおかげでしおりちゃんとものすごくラインを交わしたことだ。


そんな悶々とした一週間を過ごした停学明け。何とも不思議な気分で久しぶりの学校へと向かう


教室に入り自分の席に座ると皆が僕を遠巻きに見ながら誰も近づいてこないという何とも言えない異様な雰囲気が漂う


だがそれも無理からぬことだろう。何せそれまでずっと目立たない行動をしてきた僕が


いきなり【お台場坂49】の月島美月と大橋さやかを連れてきたかと思えば


上級生相手に殴る蹴るの大立ち回りをやらかしたのである


皆、僕のことをどう扱っていいのか戸惑っているようだ。まあ仕方がない、これも込みでの行動だ、悔いはない……


そんな僕の席の前に立ち止まり見下ろす者がいた。思わず視線をあげその人物を確認するように見上げると


それはクラス委員長、菅原であった。


「お勤めご苦労様」


「ハハハハハ、たった一週間だったけれど貴重な経験だったよ」


「でも随分と派手にやったわね、上級生を相手に暴力とか」


「柄じゃないことは分かっていたのだけれどね」


「でも、おかげで助かったわ。ありがとう田村」


「そんなお礼を言われるようなことじゃないよ、僕自身はそれほどたいした事をしたわけじゃない」


「ううん、あなたのおかげよ。感謝してもしきれないわ」


優しい笑顔で頭を下げる菅原だったが、普段持ち上げられることが無い僕は逆に恐縮してしまう。


そんな空気に耐えられなくなり話題をそらすように問いかけた。


「それで菅原、その後はどうなったの?」


「うん、おかげさまでお父さんとお母さんは渋々だけれど認めてくれたわ


それで、昨日【お台場坂49】の運営事務局というところから連絡があって


〈オーディションを受けにきませんか?〉って……」


「凄いじゃないか⁉︎それ美月がいう通り〈内定〉と同じということだろう?


いや〜我がクラスからもついに【お台場坂49】のメンバーが誕生するのか⁉︎


凄いよ、菅原‼︎」


「ありがとう、みんな田村のおかげだよ。結局学園祭の最優秀賞は逃したけれどね」


「あのライブで最優秀賞逃したのか?」


「うん、得票数は二位に五倍以上の圧倒的な差をつけたのだけれど


他のクラスから〈あんなの反則だろう‼〉というクレームが入ってね。結局失格になったわ」


「まあ、学園祭のクラスの出し物にプロのアイドルを起用したのだから仕方がないか」


僕と菅原は思わず顔を見合わせて笑った。


「凄い経験をさせてもらった……今回改めて【お台場坂49】のツートップの凄さを知ったわ


その意識と覚悟、今まで私の考えがどれ程甘かったか思い知らされた。特に月島美月さんは思った通り……


いえ、思った以上に凄かった。益々尊敬する、どれほどリスペクトしても足らないぐらいよ」


どこか遠い目で美月の事を語る菅原。


「そうか……でも菅原って本当に美月のことが好きなのだな?」


「もちろんよ、今回のことでますます好きになったわ」


「いや、でもアイツは表面上で見るのと裏の顔と全然違うのだけれど……」


僕が忠告気味に助言すると菅原は露骨に怒りの表情を浮かべたのである。


「いい?例え田村でも美月様のことを悪くいったら許さないからね


今回だけは特別に許すけど次は無いわ、覚えておいて‼︎」


そう言い放ちクルリと背中を見せて立ち去った、また僕の周りに変なのが増えたな


でも悪くない、何だかわからないがこんなやりとりがもの凄く心地いい


こうして僕のクラスの委員長、菅原ともよはこの数ヶ月後、正式に【お台場坂49】の正式メンバーとなる。


「頑張れよ、菅原。応援しているぞ‼︎」


立ち去る菅原の背中に声をかけると菅原はふと立ち止まり、首だけこちらを振り向かせてこう言った。


「いらないわよ、どうせ田村は私推しじゃなくて、いいとこ二推し三推しでしょ?


私、一番じゃなきゃ嫌なの。私を一番に〈推し変〉してくれるのなら応援して」


僕は何も言葉を発することなく首を振った。こうして波乱の〈学園祭〉は幕を閉じた。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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