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腹をくくった‼︎

「どうしてですか⁉まだ歌もダンスも見てもらっていないのにどうしてそんな事が言えるのですか⁉」


さやかちゃんに〈貴方はオーデヒションで落ちる〉と言われ興奮気味に問いかける菅原。


確かにその気持ちはわからなくもない、まだ何も見てもない内に全てを否定されたのである。


しかしその答えはさやかちゃんではなく美月が答えた。


「残念だけど、おそらくさやかのいう事は正解よ。貴方は普通にオーディションを受けたとしても、多分落ちるわ」


「どうしてですか?どうしてそんなことがわかるの⁉私、歌もダンスも頑張って来た


まだ何も見てもいないのにどうして……」


納得できないとばかりに食い下がる、そんな菅原を諭すように美月は淡々と答えた。


「貴方、私に憧れているそうね?そのせいもあるのだろうけど


貴方の見た目と雰囲気が少し私に似ているのよ、それが落ちる原因よ」


「何ですかそれ?意味がわかりません、わかる様に説明してください‼」


「わかった、説明してあげる。いい?【お台場坂49】というグループには大勢の人間がかかわっていて


大きなお金が動いているの、私達は遊びでやっているのではない。


言い方は悪いけれどプロのアイドルとしてビジネスでやっているの


ファンというユーザーにどれだけ満足してもらえるパフォーマンスが見せられるか


どれほどの価値を提供できるか?そういうモノを追及しているのよ


いうなれば私達は【お台場坂49】という店に並んだ商品と同じ


色々な商品の中からどれかを客に選んでもらって満足してもらう、みたいなモノなの


言い換えれば一つの店に同じような商品は必要ないという事にもなる。


もうここまで言えばわかるでしょう?【お台場坂49】に月島美月は二人もいらない。それが貴方の落ちる理由よ」


「そんな……だったら、どれだけ頑張っても、ダメじゃないですか。


夢を諦めずに努力すれば必ず叶うって、そういうモノだって信じていたのに……」


すると再びさやかちゃんが口を挟んだ。


「甘いのよ。夢を諦めず努力し続ける人が百人いたとして合格枠が一人しかないならば


残りの九十九人は涙を飲むのよ、そんなのわかり切った事でしょう?」


「じゃあ、その合格にたどり着ける人間は努力とか実力とか関係なしに


運がいいとかコネがあるとかの人間でなければ、ダメって事ですか⁉そんなのあまりにも……」


「何を勘違いしているのよ、いい?夢を諦めず努力してきた人間だけが


【お台場坂49】に入る為の〈挑戦権〉を得ることが出来るのよ


努力と実力なんかあって当たり前なの。その先は本当に神のごとき見えない力を手繰り寄せた者だけが入る事を許されるのよ


それが私達【お台場坂49】のメンバーに選ばれるという事よ、舐めないで」


口調こそ淡々と話していたが珍しく熱くなっていたさやかちゃん、そして美月も更に話を続ける。


「圭一から聞いたけれど、ご両親にも反対されているそうね。


貴方のパフォーマンスを見たご両親が〈やっぱりダメ〉と言ったら貴方はどうするの?」


「私は信じています、私の歌とダンスを見てさえもらえたら必ず


【お台場坂49】の良さが分かってもらえるって……」


「元々〈アイドルなんかダメだ〉と偏見を持っている大人にはどうやっても通じないモノよ……


あなた私の両親の事は知っている?」


「あっ、はい、お母様は元女優の月島みどりさんでお父様は凄腕プロデューサーの月島真司さんですよね?」


「そうよ、ウチのパパとママはね【芸能界のビックカップル】とか言われて大恋愛の末に結婚したの


でもパパは私がアイドルをやる事に大反対でね、それが原因で両親は離婚したわ


私が〈アイドルは諦める〉と言っていれば恐らくママも〈アイドルをやれ〉と無理強いはしなかっただろうし


パパとママも離婚しなかったと思うわ、でも私はどうしてもやりたかった


だからパパの大反対を押し切ってこの道を選んだの。つまり私のワガママで家庭を崩壊させたのよ


でも後悔はしていない。アイドルが好きだから、自分の夢だから……夢を追うってそういう事よ」


続くようにさやかちゃんも語り始める。


「私だって似た様なモノよ。ウチは私が小さい頃に母親が病気で死んで父さんが男手一つで私を育ててくれた


でも私が〈アイドルになりたいって〉言ったら猛反対されたわ


〈アイドルなんかになれるわけがない‼〉てね。でも諦められなかった私は父さんと大喧嘩して


家出同然で秋田の田舎から出て来たの。今ではさすがに表立っては反対しないけれど


やっぱり私がアイドルをやっているのは今でも嫌みたい……」


「何故ですか、今では【お台場坂49】のナンバー2で、誰もが認めるトップアイドルじゃないですか⁉


それなのにどうしてお父様は今でも反対なのですか?」


「私みたいなバラエティーもトーク番組もやるマルチタレントはネットだの芸能誌だのに色々書かれたりするのよ


私はそんなこと気にも留めていないのだけれど、父さんは田舎育ちで疑う事を知らないからね


そういった話を全部信じてしまうのよ……


自分の娘がボロクソに書かれていたら親としてはいい気分はしないでしょう


だから私は売れようが売れていなかろうがアイドルをやっている以上、親不孝な娘である事には変わりないのよ


でも後悔はしていない、親の為に生きている訳じゃないのだから


アイドルが好きで、アイドルになりたくて頑張ってきたのだもん


父さんには悪いけれどこれだけは譲れない。


正直ウチのメンバーにはそう言った話はゴロゴロ転がっているわよ、特に珍しい事じゃないわ……」


さやかちゃんの話を聞いた菅原はあまりの内容に絶句してしまう


しかしさやかちゃんは更に話を続けた。


「でも親御さんの気持ちはわからなくはないわ。私が将来結婚して娘が生まれたとして


その娘が〈アイドルになりたい〉と言ったら私は反対するもの」


「そんなの変じゃないですか、言っている事が矛盾していますよ⁉」


「だってしょうがないじゃない、アイドルってこんなにキツイ職業だとは思わなかったのだもの


親として自分の娘に同じような苦労はさせたくないと思うのは当然でしょ


でもね……それでも〈どうしてもアイドルがやりたい〉というのであれば反対はしないわ


自分の人生だもの……それにこの職業、アイドルをやっていなければ味わえない最高の瞬間というのがあるの


脳天から足のつま先まで痺れるくらいの、頭の中が溶けてしまう程の快感がね……


それを知ってしまうともう戻れない、アイドルを止めるなんて考えられなくなる


中毒患者みたいなモノよ、私も美月もその沼にどっぷりつかって

しまったわ」


さやかちゃんがしみじみと語った後、美月が菅原の両肩に手を乗せ、顔を近づけて問いかけた。


「どうするの?親に反対されても自分の夢を追いかけるか、それとも反対されたら諦めるのか


今ここで決めなさい、それでもやるというのならば腹をくくりなさい‼」


菅原は美月とささやかちゃんの気迫に押されややたじろいでいたが


すぐに真剣な表情に変わると自分の考えを頭の中で整理しているようにも見えた


そして決意の目で美月を見つめ力強い声で決断を下した。


「やります、やりたいです、やらせてください。私もお二人に負けないぐらいアイドル好きですから


【お台場坂49】が大好きですから‼」


菅原の言葉に無言のまま大きくうなずく美月とフッと口元を緩めるさやかちゃん


こうして菅原の決意は固まった。もう後は限られた時間の中で本番に向けて色々な調整を行うだけである。


「そうだ、美月とさやかちゃんの衣装合わせをお願い、しおりちゃん」


「わかったわ、でも横山さんと美月は同じサイズのはずだから手直しは必要ない


後は間宮さんの衣装をさやかさんに合わせる作業ね」


しおりちゃんは笑顔のままさやかちゃんに近づく。先程まで雄弁に語っていたさやかちゃんだったが


目の前にしおりちゃんが現れると先程自分が仕掛けた悪戯を思い出し、バツの悪い表情を浮かべたのである。


「初めましてさやかさん、寸法測らせてもらいますね?」


「あっ、はい……」


思わず視線を逸らすさやかちゃんだったが、しおりちゃんは気にする様子も無く黙々と作業を進める。


「うわ~ウエスト細いですね……」


しおりちゃんがさやかちゃんのスタイルに感心しているが


当のさやかちゃんはバツが悪くてまともに会話ができないでいた


助けを求める様に僕と美月の方に視線を移すが僕達はダンスの最終調整の為に打ち合わせ中である


そんな沈黙に耐えられなくなったのか、さやかちゃんは躊躇しながらもしおりちゃんに話しかけた。


「あの~しおりちゃん……さっきはゴメンね。圭一君がさ、私のファンだというのに


〈しおりちゃん、しおりちゃん〉とばかり言うから、何か腹が立って、つい悪戯しちゃったの、ゴメン」


「もういいですよ。それに私、一度さやかさんとは話してみたかったですし」


「私と?」


「ええ、さやかさんの事はいつも美月から聞かされていて……」


「美月から?どうせロクな事を言っていないでしょ。悪口とか、文句とか……」


「クスッ、そんな事ないですよ、美月はいつもさやかさんを褒めていますよ」


「嘘、美月が私を⁉」


「本当です。仕事のチェックでよく録画映像を美月と一緒に見るのですけど


美月はいつもさやかさんを褒めていますよ、〈さやかは本当に凄い、私に持っていないモノを持っている〉って……」


「本当に、あの美月が⁉」


「ええ、それに美月はこんな事も言っていますよ〈だからさやかには絶対に負けたくない、一番のライバルだ‼〉って


美月はあんな性格だから絶対に面と向かってさやかさんには言わないでしょうけど、本当ですよ」


それを聞いたさやかちゃんは嬉しさで身震いするほどであった


唇を震わせ必死で涙が溢れるのを耐えていた。


「だからいつまでも美月のいいライバルでいてあげてください……


あっ、私が言ったという事は美月には内緒にしてくださいね」


悪戯っぽく笑うしおりちゃんの笑顔に思わず笑みがこぼれるさやかちゃん。


「美月はいい友達を持ったわね。美月や圭一君がしおりちゃんを必死で奪い合う理由も


少しわかる気がするわ。私もしおりちゃんみたいな友達が欲しかったな」


「友達ならいつでもなれるじゃないですか、私の方からお願いしたいくらいです」


「ありがとう。じゃあしおりちゃん、友達として最初のお願いがあるのだけれど」


「何ですか?」


「圭一君を私にちょうだい」


さやかちゃんの思わぬ要求に一瞬驚いた表情を見せたしおりちゃんだったが


悪戯っぽく笑うさやかちゃんを見て、満面の笑みを浮かべると明るく答えた。


「嫌です」


「だよね~ゴメン、また悪戯しちゃった。本気じゃないから安心して


私結構面食いなの、圭一君は私の中では第一書類審査で落選かな?


アイドルは恋愛御法度だしね」


「フフフフ、もうその手の悪戯は止めてくださいね」


「もうしないわ、これ以上やったらしおりちゃんに嫌われちゃうものね。美月も怒るし、それに……」


その後さやかちゃんは独り言の様な小声で呟いた。


「こんなことまで美月と張り合う気はないもの……」


「えっ、何ですか?聞こえなかったのですが?」


「別に何でも無いわ、気にしないで……」


誤魔化すように微笑むさやかちゃんを不思議そうに見つめるしおりちゃんであった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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