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総責任者に選ばれた‼︎

「僕はバイトの帰りなのだけれど……」


僕は菅原が出てきた雑居ビルにチラリと視線を移す。


その雑居ビルの看板には〈キャバクラ〉や、どう見てもエロ系の〈マッサージ〉など


いかがわしい大人の匂いがするモノばかりだ。そんな怪しさ満載のビルからあの〈真面目女子〉菅原が出てきたのである。


あまりに意外な組み合わせに僕は動揺してしまい、菅原にどう話していいのか言葉を探してしまっていた。


そんな僕の態度を見て察したのだろう、菅原はいぶかしげな表情を浮かべ問いかけてきた。


「ねえ田村、あなた何か変な勘違いしているでしょ?」


「えっ!?な、何が?」


「私がこのビルの中のいかがわしい所に出入りしているって……」


「いやその、そんなことは無いけど。どうしてなのかな?とは思っているよ」


動揺を隠せずオドオドする僕の態度を見て、菅原は思わずため息をつく。


「ハア、全く……私がそんな変な所に出入りするわけないでしょ。


私が通っているのは三階のダンス教室よ」


「えっ、ダンス教室?」


もう一度雑居ビルの看板を見てみると、いかがわしい店の名前が並ぶ中に確かにあった【沖田ダンス教室】というものが


でも何でダンス?僕の知る限り菅原は部活にも入っていないし


特別何かに熱中しているという話も聞いたことがないのだが……


「何よその目は、さてはまだ疑っているわね?そりゃあ私がいきなりダンスとか


意味不明だと思っているのでしょうけど、コレには理由があるのよ……」


やっぱりきちんとした理由があるのだな、でも何だろう?クラッシックバレエでもやっているのかな?


「変な憶測でおかしな噂を立てられても嫌だし


仕方がないから本当の事を教えてあげるけど、誰にも言わないでよ」


やや恥ずかしそうに視線を逸らし、言いにくそうにしながらもその秘密とやらを打ち明けようとする菅原。


普段真面目で険しい顔しか知らない僕にとっては少し意外だった。


なんだ、この可愛い女子は?女の子ってどいつもこいつも表と裏の顔がありすぎじゃね?


「実はね、私【お台場坂49】の大ファンでいつか入りたいと思っているのよ


だから今はそのための準備としてダンスレッスンをしているの


私がアイドルって変だと思うかもしれないけれど、結構本気なの。でも恥ずかしいから誰にも言ってはダメだよ」


おおお、こんなところに同志がいたとは⁉︎菅原がまさかの【お台場坂49】ファン


しかも本気で入りたいとか、かなりガチだぞ⁉︎


「僕も【お台場坂49】の大ファンだよ‼この前のドームライブも見に行ったし」


「そうなの?田村も居たの、あそこに⁉︎」


「その言い方だと菅原も行ったの?」


「うん、抽選チケット当たったし、西側の席でね」


「へえ~、僕は東側だったけど、いいよね【お台場坂49】最高だよ‼︎」


「その語り口だと田村もかなりの【お台場坂49】ファンみたいね


ちなみに田村は誰推しなの?」


何という嬉しいことを聞いてくれるのであろうか⁉︎まさかこんな話の合う人間が身近に居たとは


僕と菅原はしおりちゃんとは違う意味で分かり合えるかもしれない。


「僕?僕は断然大橋さやかちゃんだよ‼︎ずっと応援している。菅原は?」


「私は断然月島美月よ、凛としていて格好良くて歌もダンスも完璧で惚れ惚れするわ


多分中身も凄く素敵な人なのでしょうね。とても私と同い年とは思えない


月島美月は私の理想なの、女の私から見ても彼女は最高よ‼︎」


う〜ん、分かり合えると思ったのは一瞬だった。ここで美月の本性をバラしても菅原の夢を壊すだけだし


そもそも僕の話など信じないだろう。ネットの中傷と同じ程度ととられるのが関の山だ。


ならばここは余計なことは言わずに穏便に……


「そうか菅原は、みづ……月島美月が好きなのか……イイよね、彼女」


「そうなのよ‼︎月島美月は最高なのよ、わかっているじゃない田村‼︎」


全然わかっていませんよ、いや君がわかっていないのだけれど……


何はともあれクラスの中で【お台場坂49】の話ができる同志ができたのはとても嬉しい


しおりちゃんは【お台場坂49】ファンという訳ではなく、個人的な美月の友人という立場だからあまり話が通じないし


そもそも美月本人があまり【お台場坂49】の話をしたがらない、話を振っても


〈詩織といるときに仕事の話をしないで‼︎〉と言われて終わりである


もはや同志として思いつくのは松永さんしかいないという不毛な人間関係なのである


菅原は気が乗ってきたのか機嫌良さそうに話を続けている、こんな嬉しそうな菅原は初めてみたな


普段特に話すこともない人物。恋人でも友人でもなかったクラスメイトとこんな他愛もない話をすることが妙に心地良い


好きなモノを共有し語り合う事がこんなにも楽しいと初めて知った。


「いけない、もうこんな時間だ、早く帰らなきゃ」


「そうだな、結構話し込んだかな?なあ菅原、また暇な時でいいから【お台場坂49】の話しようよ」


「私は良いけど、秋山さんはいいの?」


「えっ、何でしお………秋山さんが出てくるの?」


「だって貴方達付き合っているのでしょう?」


誰にも話していない事実をどうして菅原が!?


「何で知っているの?」


「見ていればわかるわよ、委員長だもん。ちなみに秋山さんは【お台場坂49】好きなの?」


「特に好きではないかな、個人的に、みづ……月島美月のことは好きみたいだけれど」


「そう、中々良いセンスしているじゃない、そうか、そうなの………」


菅原は何かを考え込む仕草を見せたが、すぐに僕の方を見て微笑んだ。


「じゃあまた学校でね。明日が楽しみだわ、じゃあね」


爽やかな笑顔と共に手を振りながら帰っていった菅原


〈明日が楽しみ〉とはどういう事だろうか?また僕と【お台場坂49】の話をしてくれるという事だろうか?


まあ何にしても明日わかる事だし、気にしても仕方がない。


この時の僕は何かを気にすることもなく帰路へとついた。


この後、僕自身がとんでもない事に巻き込まれていくのだがこの時点ではまだ知る由もなかったのである………



「田村くんが適任だと思いますので私の権限で彼を総責任者に任命します」


何だ、何が起こった?突然の出来事に僕は呆然としてしまった。


落ち着け、まずはパニックに陥りそうな頭を整理しよう……


事の始まりはクラスのホームルームでの出来事である。


議題は先日委員長の菅原から出題されていた【〈学園祭〉の出し物を各自考えてくるように】という課題だった


〈占い〉や〈コスプレ喫茶〉といった定番の案が次々と出される中で


僕は一人冷静に、そして達観して事の見守っていた。


色々な案が出て多数決になるのならば一番作業量が少なくて済むモノに賛成する


もし僕に出し物の案を求められたのならば〈喫茶店〉や〈お化け屋敷〉といったド定番を発案しお茶を濁す


クラスの中で影になりきりマタギのように気配を消しこの場をやり過ごすのに徹する


何せ僕には総選挙という大義と〈少しでも時間を空けてしおりちゃんとデートをする〉という崇高な目標があるのだ


クラスのみんなには悪いが〈学園祭〉に費やしている時間が惜しいのである


そんな中で皆がそれぞれ意見を出し合い、特に波風もたたないまま全ての意見が出切ったかと思われた。


僕にしてみれば完全に予想の範囲内である、さてコレからどれになるのだろうか?と考えていた時


議長の菅原委員長からとんでもない意見が出たのである。


「最後に私から良いかしら?私は【お台場坂49】コピーライブを提案します‼︎」


先程までの安穏ムードは一気に吹き飛び、クラス内がにわかにざわつき始めた……


「【お台場坂49】のコピーライブだって⁉︎」


「それって、私たちで【お台場坂49】の真似をして歌って踊るってこと?」


「それ、おもしろそうじゃん‼」


「でもいきなりは無理じゃない?そもそも誰が歌って踊るのよ?」


色々な意見が飛び交う中で菅原はしばらくの間、皆に自由な意見を交わさせていた。


そしてある程度の意見が出尽くしたと思われる時点でようやく口を開く。


「みんなの不安や疑問はわかるわ、でも私に任せて頂戴。


みんなには黙っていたけど、私こう見えて【お台場坂49】の大ファンなの


だからセンターである月島美月のポジションは私がやりたい。


他にやりたい人がいれば話し合いで決めたいと思うけど、どう?


何よりせっかくの〈学園祭〉じゃない、定番の出し物じゃつまんないよ


派手に行こうよ、そして【最優秀賞】はうちのクラスでいただきよ‼︎」


先程までの停滞していた雰囲気が一変した。皆が異様に盛り上がり菅原の意見を賛美する声で埋め尽くされる


もはや多数決を取るまでもなく菅原の出した案、【お台場坂49】コピーライブで決まったようなものである


菅原は凄いな、やっぱり僕みたいな単なるファンとは違い自分でも入りたいという奴はやはり何かが違う


それに【お台場坂49】コピーライブとなれば、僕も俄然楽しみになった、テンションが上がるな〜。


僕がそんな事を考えていた時、議長である菅原と目が合った。


すると菅原は僕の顔を見てニヤリと不敵な笑みを浮かべると皆に向かって言い放ったのである。


「この【お台場坂49】のコピーライブをやるにあたって、振り付けや歌の指導、曲の選択、舞台の演出、小道具や照明、衣装の用意


など色々な事が必要とされます。それぞれ適材適所で行うのは例年通りですが


このライブを成功させるために全ての総括をする総責任者を据えたいと思います


その責任者ですが………田村くんが適任だと思いますので私の権限で彼に総責任者に任命します、異論はないですね?」


その瞬間、クラスの全員の目が僕に集中する。何だ、なにが起こった?


訳がわからない、だがもはや断れる雰囲気ではなかった。


完全にクラスの意思を手中に収め意のままに操る菅原の人身掌握術は見事という他ない。菅原、恐ろしい子………


だがそれほど嫌だという訳ではない。大変なのは間違い無いだろうがこの演目であれば僕以上の適任者などいないだろう


素直に【お台場坂49】ファンとして血が騒ぐのだ。やってやろうじゃないか‼


【お台場坂49】本家の運営が度肝を抜かれる程のド派手なライブを


菅原の言い草じゃないが〈学園祭〉最高の出し物をしたクラスに送られる【最優秀賞】は絶対いただくぜ‼︎


この時の僕は珍しく前のめりに、そして生まれて初めてやる気満々で学園祭に臨むことになったのである。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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