彼女と仲直りできた‼︎
どうにも余計な心配だとは思うのだがしおりちゃんにとっては不安な様である
僕が何とか安心させようとしても険しい表情を崩すことはなかった。
「でも、怖いのよ……美月が、あの美月がもし本気になったら
圭くんをあっという間に持って行っちゃう、取られちゃう
そう考えたら怖くて、怖くて……
私は何て馬鹿な事をしたのだろうって……だから無理を承知で圭くんにねだったの
〈私とデートして〉とワガママを言ったの、〈美月じゃなく私を選んで〉って……」
まるで懺悔するかのような告白だった。
まさかしおりちゃんがそんな事を考えていたとは夢にも思わなかった
あの無茶な要求はそんな意味が……
知らなかった、わかってあげられなかった。〈美月が僕の事を好き〉とか
あまりに馬鹿馬鹿しい心配でしかないけど
しおりちゃんにとっては凄く大事な事なのだろう。
よし、ここは彼氏として頼りがいのあるところを見せなければ
「でも少し嬉しいよ、僕は嫌われたのかと思っていたからね
しおりちゃんにヤキモチを焼いてもらえるとは、何とも光栄な話だよ。
ワハッハハッハ」
あえて大袈裟に明るく振舞ってみたが、反応は良くない。
というか完全に無反応だ、どうやら豪快にすべった様だ。
よし、ここは方向転換だ、切り替えよう。
「心配のしすぎだよ、しおりちゃん。美月に限って僕を好きになるとか有り得ないし
そもそもアイツはしおりちゃんにべったりじゃないか。
そんな親友の彼氏を取るとかそれこそ有り得ないよ
アイツしおりちゃんに嫌われたら多分生きていけないよ?」
「でも……さっきも美月と一緒にいたよね?」
「一緒にいたというか、美月が僕のスマホにGPSを仕込んでいてつけて来たのだよ
〈またしおりちゃんをほっぽり出して泣かせないために〉とか言っていたな
倫理観とか正当性とか世間常識とかがどこかへ吹っ飛んでしまっているとしか思えない
滅茶苦茶だよアイツ。そもそも今回の僕たちの喧嘩の原因も大部分は美月のせいだし」
「でも圭くんは美月と一緒にいた……虫けら扱いとは思えないよ……」
う~ん、これだけ言ってもまだ安心というか納得してもらえないのか、意外と頑固だな。
それにちょっぴり面倒臭いなしおりちゃん……女の子ってこういうモノなのだろうか?
大体美月が僕の事を男として見ているという説にはかなり無理がある。
僕自身も美月の本性を知ってしまうと〈彼女にしたいか?〉と聞かれた場合
かなり微妙だ、勿論嫌いではないが。
「しおりちゃんは一番大事な事を忘れている、それは僕の気持ちだよ。
もし仮に、ひょっとして、万が一、もしかして美月が僕の事を好きだったとしても
僕が好きなのはしおりちゃんだよ、それを信じてもらえないと何も話が進まないよ
僕を信じてくれないのかい?」
「ありがとう圭くん、信じたい……ううん、信じる。
ゴメンね、変な事ばかり言って。私の事、嫌いにならないでね」
「もちろんだよ、大好きだよ、しおりちゃん」
しおりちゃんは僕の胸に縋りつく様に抱き着いて来た
僕もしっかりと彼女を抱きしめ、その気持ちに応えた
嬉しいというよりホッとしたというのが偽らざる気持だ。
でも美月といいしおりちゃんといい女の子の気持ちというのは本当にわからない、正直疲れた……
だがここで気を緩めてはいけない、この前のような事だけは絶対に阻止しなければならないからだ。
そこで僕はある事を思いついたのである。
「ねえしおりちゃん、今から僕とデートしてよ」
「えっ、今から?もう七時になるよ」
「今から行けばギリギリ観覧車に間に合う、行こうよ‼」
「うん、行く‼」
僕達は手を取り合って駅へと向かう
彼女の眩しい笑顔に再び出会うことが出来て疲れもどこかへと飛んでいく
もう二度と放さないぞ、こんな思いはもうたくさんだからだ。
「もう終了時間だよ」
「そこを何とかお願いします、この観覧車に乗るのが楽しみで来たのです」
観覧車の終了時間に五分ほど間に合わなかったが、係の人に頭を下げて必死に頼み込んだ。
ペコペコと頭を下げる行為自体はややカッコが付かないが、今日の夕方には
土下座までしているのだ、頭を下げるくらいなんでも無い。
そんな僕の思いが通じたのか、係の人は渋々ながらも乗車を許可してくれた。
「今日だけ特別だよ」
「ありがとうございます‼」
僕としおりちゃんはお礼を言うとそそくさと観覧車に乗り込んだ
係の人が言うように今日という日は本当に特別な日になった
そして特別な日にしたいものである。
ゆっくりと上昇する観覧車の中でしおりちゃんが静かに口を開いた。
「圭くん、この観覧車、美月との疑似デートで乗ったのだよね?」
「美月から聞いていた?あの時のデートは他の所は散々だったからね、美月も怒ってしまうし
そんな中で唯一この観覧車だけが良かったかな。
あの時は夕日がきれいだったけど、今なら夜景が見えて綺麗かな?
と思ってね、デートに夜景とかベタ過ぎるかな」
「ううん、そんな事ない、嬉しいよ、圭くん」
満面の笑みを僕に届けてくれたしおりちゃん。コレだよ、コレ
この笑顔の為に必死に頑張って来たのだ。しかし何という長い一日だったのだろう
でも〈終わり良ければ全てよし〉ってね、ようやくしおりちゃんの機嫌も直った様でめでたし、めでたしだ。
夕焼けをバックに上昇する観覧車も素晴らしかったが、夜の空を昇っていく観覧車もまた格別である
窓から見える夜景が何とも言えない雰囲気を漂わせ
まるで宇宙へと旅立つような幻想的な気分にさせてくれた。
「しおりちゃん、これから一杯デートしよう
行きたいところがあればどこでも行こうよ、二人で」
「うん、行こう、でも来週から中間試験期間だね」
「その先は学園祭か……でもその先に楽しいデートが待っているかと思うと試験も頑張れそうだよ」
「圭くんの方は、学園祭の後は予定ないの?」
「そうだな……後は【お台場坂49】の総選挙ぐらいかな?
僕の予定ではないけれどね、ハハハハハ」
ハッ、しまった、また余計な事を言ってしまったか?
でもしおりちゃんの機嫌も直ったようだし、まあいいか……
僕の言葉が呼び水になったのか、しおりちゃんがふと問いかけてきた。
「ねえ圭くん。美月の事、どう思う?」
随分と意味深な質問だ、ここは慎重に答えないと……
「う~ん、難しいね。【お台場坂49】のエース月島美月としては
完璧なスーパーパーアイドルだし尊敬もできるけれど
しおりちゃんの友人としての美月は色々なところが破綻している変な女って印象かな?
隙さえあれば僕としおりちゃんの仲を引き裂こうとするし
その為の手段は選ばないし、感情的に突っ走るし、僕の事なんか虫扱いだし
何度も言うけど美月に限って僕を男性として見ているという事は絶対にないよ
まあようやく虫から人間扱いしてもらえるようにはなったけどさ
所詮僕なんかその程度さ、ハハハハハ」
しおりちゃんの不安を取り除く様に渇いた笑いを交えて説明してみたがどうだろう
ちょっとわざとらしかったかな?
しおりちゃんはそんな僕の答えに微笑んでくれた
少し陰りのある微笑みだったが、恐らく気のせいだろう
虫扱いからようやく人間扱いになった程度で心配しすぎだと思うけどな
まあそんな心配してくれるくらい僕の事を想っていてくれるのは素直に嬉しいけど。
僕がそんな事を考えている時、しおりちゃんは独り言の様にボソリと呟いた。
「でも人扱いになったのか……知っている圭くん?
〈人〉に〈恋〉って気持ちが付いてきたら(恋人)になっちゃうのよ……」
「えっ、今何て言ったの、しおりちゃん?よく聞こえなかったけど」
よく聞き取れなかった僕は思わず聞き返したが
しおりちゃんはゆっくりと首を振った
「ううん、何でもないよ……」
複雑な思いを抱えながら僕達を乗せた観覧車は夜の空をゆっくりと昇って行った。
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