原因がわかった‼
「何でアンタがここに居るのよ、美月?」
「どうして美月が⁉」
突然現れた美月に戸惑ってしまう僕とさやかちゃん
そんな僕らの驚いた顔をジト目で見ていた美月だったが、軽くため息をつくとネタ晴らしを始めた。
「昨日の事があったからね、圭一のスマホにGPSを仕込んでおいたのよ」
〈それが何か?〉とでも言わんばかりの態度であっけらかんと言い放った。
昨日僕のスマホをいじっていた時か⁉この女は一体何をしてやがる、それがスーパーアイドルのすることか⁉
「美月。彼氏でもない男のスマホにGPSを仕込むとか、どう考えてもそんなのおかしいじゃない
やっぱりアンタとこの男とは特別な関係じゃないの⁉」
美月の尋常ではない行動にさやかちゃんは再び疑惑を盛った様だ
それも当然と言えば当然の反応である……ただ一言だけ言っておきたい〈この女は頭がおかしいのです〉。
「【お台場坂49】では恋愛はご法度、そんな事が世間にバレたらアンタは終わりよ‼」
敵意にも似た視線を向け、美月を指さし不可解な点を指摘するさやかちゃんだったが、美月はそれを一蹴した。
「私と圭一が恋愛関係?笑えない冗談ね。コイツはね、私の詩織をないがしろにした上に
泣きすがる詩織を放り出して他の女の元へと走る様なクズ男よ、有り得ないわ」
あの美月さん、言い方ってモノがあるでしょう?部分各所に事実が入っているから
完全否定はしにくいけど、それ明らかな偏向報道ですよね?
悪意の塊としか思えないまるで低俗なゴシップ紙の様ですが。
そんな僕の思いを尻目に美月は右手に持っていたスマホを見せつける様にこちらに向け話し始めた。
「そんな事より、さっき圭一がさやかの手を握って力説しているのを撮影させてもらったわ……」
それを聞いた瞬間、さやかちゃんの顔から一瞬で血の気が引いた。
「まさか……それを週刊誌とか、SNSでばらまくつもりじゃないでしょうね……
止めてよ、そんな事をされたら私は……」
絶望的な表情を浮かべ崩れ落ちそうになるさやかちゃん。
だが僕はそんな彼女を安心させる様に声を掛けた。
「大丈夫だよ、さやかちゃん。美月はそんな事はしないよ
コイツは頭のおかしな女だが誰よりも【お台場坂49】を大事に思っている
さやかちゃんをスキャンダルに巻き込んで【お台場坂49】を
危機に陥れる様な事は絶対にしないさ、そうだろう美月?」
僕には確信があった。美月はそんな女じゃない、絶対にそんな事はしないという信頼に近い何かがあったのだ。
しかし僕の言い方が気に入らなかったのか、美月は不満げな表情を浮かべると
しばらく無言のままジッとこちらを見つめていたがヤレヤレとばかりにようやく口を開く。
「当り前じゃない、そんな事をして私に何の得があるのよ
後々【お台場坂49】にとってマイナスにしかならない事をワザワザやるほど私はバカじゃないわ」
そうだ、美月はそういう人間だ。これでさやかちゃんも安心しただろう。
だがさやかちゃんはまだ納得できない様子で再び問いかけた
「じゃあ、何で私と圭一君の事を撮影なんかしたのよ⁉」
「決まっているじゃない、その撮影動画を詩織に見せる為よ」
今度は僕の顔から一瞬で血の気が引いた。そうだ美月はそういう女だった……
「それだけは、それだけは何卒ご勘弁を‼」
僕は反射的に土下座していた。この際カッコ悪いとか言っていられない、なりふりなど構っていられるか
今の状態でそんなことをされたらマジでしおりちゃんに振られてしまう、それだけは何としても避けなければ……
先程まで二人に向かって堂々と語っていた僕が突然土下座で許しを請うという目まぐるしい急展開。
そんな僕の態度にさやかちゃんも驚いているようだった。
「なによ、圭一。さっきは私に向かって随分と偉そうに語ってくれたじゃない
どうせ私は頭おかしな女ですからね、感情に任せて何をしでかすやら自分でもわからないわ」
美月はここぞとばかりに僕をいじめにくる。
しかし今の僕にできることは誠心誠意謝罪して許しを乞うことだけなのである。
「先ほどのご無礼は謝罪いたします故、何卒ご容赦いただきたく、どうか、どうか」
「じゃあこの動画を見せない為の条件があるわ」
「この、私めにできる事であれば何なりと……」
「じゃあ、さやかから私に【推し変】しなさい」
えっ?何その条件……【推し変】とは自分が好きなメンバー、つまり推しているメンバーを変える事である
何で美月はそんな事を?でも……
「それは……出来ない」
「何で、詩織よりさやかの方が大事だとでもいうの?」
「そういう問題じゃない、二つとも僕にとってはとても大事なモノで比べる様なモノでは無いからだ
これは男としての矜持の問題だ‼」
堂々と言い放ってやった。脅迫に屈して【推し変】するなんて僕の信念が許さないからだ
だがそんな僕の思いを嘲笑うかのように美月は苦笑しながら呆れ顔を浮かべた。
「額を床にこすりつけて言うセリフじゃないわね……まあいいわ
ここで私の脅しに屈して一時しのぎの口先だけで【推し変】します
とか言い出していたら本当に詩織にばらしやろうかと思ったけど
今回は勘弁してあげる、ありがたく思いなさい」
「有難うございます、美月姫様‼」
危ね~、一時しのぎの口先だけで【推し変】しますって言うところだった
だが思いのほかの温情判決で助かった、まあ本当に無実なのだし
後ろ暗い事も無いのだから当然と言えば当然なのだが……
「今回だけは不問にしてあげるから、さっさと詩織の所に行って仲直りしてきなさい」
「ありがとう美月。でもしおりちゃんは僕に会ってくれようとしないのだよ
二人で話をしたくても逃げられてしまって、話し合う事もできない状態なんだ
もう僕とは口を聞くのも嫌だと思われているのかな……」
僕は思っている不安を打ち明けると、美月はフッと笑って静かに口を開いた。
「そんなことは無いわ。詩織はね、圭一から話があるって言われた瞬間
別れ話を切り出されると思っているの、だから怖くて逃げ回っているのよ」
「何でそんな事になるのだよ?まだ付き合って数日しか経っていないし
デートだってまだしていないのに別れ話とかする訳ないじゃないか
どうしてそんな風になってしまったんだ?」
僕の胸にモヤモヤした何かが込み上げて来た
それが怒りなのか焦りなのかはわからないが、どうにもやり切れない気持ちを吐き捨てる様に口にした
もしそれが真実ならばとんでもない誤解を受けている可能性がある
これは早急に何とかしないと大変な事になるぞ⁉しかしどうして……
想定外の事実に戸惑い、その原因を考えていた時である
僕の言葉にビクッと反応しバツの悪そうな表情を浮かべて露骨に視線を逸らす美月。
僕はその一瞬を見逃さなかった。
「おい、美月……お前、しおりちゃんに何かしただろ?」
「べ、べ、べ、別に何も言っていないわよ、変な言いがかりをつけないで」
そう言いながらも目は泳ぎ落ち着かない様子で僕と視線を合わせないようにしている
これは明らかに挙動がおかしい、これは何かあるな?
〈世界に羽ばたく女優になる〉という美月パパの見込みは残念ながら外れているかもしれない
このわかりやすい態度、コイツは女優には向いていないぞ。
「正直に言ってみろ、美月。お前しおりちゃんに何を言った?」
僕の尋問に視線を泳がせながら正直に言う事を躊躇していた被疑者美月だったが
もはや逃げ切れないと観念したのか、ようやく犯行を自供し始めたのである。
「その……詩織が圭一と喧嘩したっていうからアドバイスというか……
もう別れた方がお互いの為じゃないの……的な?
その流れで〈その内、圭一の方から別れ話を切り出されると思う……〉
みたいな話を少しだけした……かもしれないわね」
何じゃそりゃあああああ。という事はコイツが全ての元凶じゃないか、何てことしやがる⁉
「美月……お前って奴は⁉」
「怒らないでよ。悪いとは思っているわ、詩織があんなに思い悩む何て思わなかったのだもの
だから圭一に何とかしてもらおうと思ってさ……」
そういう事か、ようやく全てを理解することができた。
僕としおりちゃんが喧嘩した事を聞いた美月はこれ幸いとばかりに僕と別れる様に説得を試みた
だがしおりちゃんが思いのほか落ち込んでしまったのでどうしていいのかわからず
慌てて僕の所に怒鳴り込んできたという訳か……
真相を聞いてみれば何とも馬鹿げた話だが、実に美月らしい。
自分で仕掛けておいて想定外の事態に狼狽えてパニック起こすなんて、コイツは本当に……
「じゃあ今からしおりちゃんに会いに行ってくるけど、多分僕の電話には出ないだろう
今、しおりちゃんが何処にいるか知っているか?」
「ここまで来たら乗りかかって船だもの、私が詩織を呼び出してあげるわ。感謝しなさい」
何を偉そうに、乗りかかった船とか……お前がその船底に大穴を空けた張本人じゃないか⁉
だが、もうそんなツッコミを入れている時間も惜しい。とにかく一刻も早くしおりちゃんに……
美月は持っていたスマホでしおりちゃんに電話をかける。
「あっ、詩織?今から圭一をそっちに行かせるから。大丈夫よ、別れ話じゃないから
うん、そう、それは私の勘違いだった、うん……逃げないで詩織。わかった、じゃあね」
電話を切り〈ふう~〉と大きく息を吐くと、こちらに視線を向けた。
「詩織には私のマンションの前に来るように言ったわ、さあ誤解を解きにサッサと行ってきなさい‼」
僕の背中を〈バン〉と叩き、なぜかいい感じ風に言い放つ美月。
くどいようだが何度でも言おう、悪いのは全てコイツである。
色々と言いたいことがあるが今はその時間さえも惜しい。
とにかく一刻も早くしおりちゃんに会って話をしないと。
「じゃあ行ってくる」
急いで部屋のドアの方へと向かおうとしたが、そこでふと足を止めた。
「さやかちゃん、今度の総選挙では必ず一位を取ってよ。こんな奴に一位を取らせちゃダメだ
僕たちも全力で応援するから、じゃあね」
呆然としているさやかちゃんに想いだけを伝えて足早に部屋を出る。
後ろから美月の怒鳴り声が聞こえたがその内容はどうでも良かった。
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