すれ違いコント「妹が大好きな勇者と剣を貰った戦士」
勇者…妹のことを話してるつもり
戦士…剣のことを話してるつもり
勇者「そういやこないだ戦士に俺の妹を紹介したよな。あの後どうなったか聞いてみるか」
戦士「そういやこないだ勇者から剣をもらったよな。お礼言わないといけないな」
――
勇者「おー、戦士！」
戦士「おう、勇者！」
勇者「こないだの件どうだった？」
戦士「こないだの剣？ 最高だったよ！」
勇者「そうか、よかった」
戦士「ああ、本当にありがとう」
勇者「あいつ優しかっただろ」
戦士「易しい？ ああ、扱いやすかった」
勇者「扱いやすいってそんな言い方ないだろ」
戦士「え……」
勇者「もうちょっと言い方考えろよ」
戦士「悪かったよ。だけどあまりに軽くてさ」
勇者「確かに軽いところはあるな」
戦士「手で握った時の感触といったら感動したね」
勇者「手を握ったぐらいで初々しいな」
戦士「だろ？ だからさっそく振ったよ」
勇者「フッたの！？」
戦士「うん、もう振りまくり。何度も何度も振りまくった」
勇者「何度も！？」
戦士「もう楽しくてさー」
勇者「楽しいってなに考えてんだ！ 傷つける気かよ！」
戦士「え、だって傷をつけるための道具だろ？」
勇者「道具！？ お前……！」
戦士「いや悪かった。今のは失言だった。ごめん」
勇者「いくら何でも酷いぞ」
戦士「だよな。作った人の魂が宿ってるもんな」
勇者「作った人って言い方は引っかかるけどそうだよ」
戦士「鍛冶職人の」
勇者「鍛冶職人！？ 何言ってんだ、あいつを産んだのは俺の母親だよ！」
戦士「お母さんが作ったの！？」
勇者「そうだよ、親父と一緒に」
戦士「すげえなお前の両親」
勇者「……それで？」
戦士「え？」
勇者「あいつをフッたらどうなったんだ？ あいつの意志は？」
戦士「石？ 石ならメチャクチャ斬れた」
勇者「キレたのか……。まあキレて当然か。いきなりフラれたんだから」
戦士「もう斬れまくり。怖いぐらいに」
勇者「怖いのになんでそんな嬉しそうなんだよ」
戦士「こんなに斬れるんだ……って俺も興奮してきちゃって」
勇者「興奮したの！？ キレたところに！？」
戦士「もうたまんなかったね」
勇者「お前にそんな一面があったとはな……」
戦士「そりゃあ俺だって長年剣で戦ってるんだから、そういうところだってあるさ」
勇者「長年戦ってて目覚めちゃったってことか……」
戦士「そういうこと」
勇者「それにしてもいきなりフるのは酷すぎるぞ。常識がなさすぎる」
戦士「そうか？ 悪い。お前そんなに大切にしてたんだな」
勇者「そりゃそうさ。あいつがいたから俺は勇者をやれてたみたいなとこあるし」
戦士「まあ、そりゃそうだな」
勇者「あいつのおかげでいつもおいしい料理を食べられたし」
戦士「料理！？ 料理作ってたんだ！？ すげえな」
勇者「俺たち兄妹は家を出て二人暮らしだから」
戦士「普通に包丁使ってもよかったような……」
勇者「包丁使う時はハラハラしたもんだよ。ケガするんじゃないかってさ」
戦士「いや絶対包丁のがよかったと思う」
勇者「そうか？」
戦士「うん、包丁のが安全だろ」
勇者「とにかく俺は命よりもあいつを大事にしてるから」
戦士「命よりも！？」
勇者「あいつが危ない目にあったら体を張って守ってやる」
戦士「それ本末転倒じゃね！？」
勇者「そうかな」
戦士「うん、だって人や物には役割ってあるし」
勇者「確かに俺の行動は勇者としては褒められたもんじゃないかもしれない。だけど兄としては当然だろ？」
戦士「勇者とか兄貴とか関係ない気がするけど」
勇者「……で、どうなんだ戦士」
戦士「え？」
勇者「さっきお前はフッたって言ったけど、ホントはあいつのこと好きなんだろ？」
戦士「好き？ 好きだな、うん。気に入ったし」
勇者「愛してるんだろ？」
戦士「愛して……？ まあ愛してるとも言えるのかもしれない」
勇者「よかった。本音を聞けた」
戦士「……？」
勇者「じゃあさ、改めて付き合ってみないか？」
戦士「突き合う？ 確かに俺、突きも得意だけど」
勇者「話しながら思ったけど、やっぱり相手はお前が相応しいと思うんだ」
戦士「おう、望むところだ！」
勇者「ってことは付き合ってくれるのか？」
戦士「突き合う、突き合う！」
勇者「じゃあ妹のとこ行こう。俺から話してやるよ」
戦士「なんでだよ！？」
勇者「え？」
戦士「なんでそこで妹ちゃんが出てくるんだよ」
勇者「だって付き合うんだろ？」
戦士「俺は……お前と突き合いたいんだよ！」
勇者「はぁ？」
戦士「真剣勝負したいんだよ！」
勇者「真剣勝負！？」
戦士「そうだ、今思えば俺はずっとお前を意識してた！」
勇者「そうなの！？」
戦士「頼む、俺と闘ってくれ！」
勇者「や、や、や、ヤるって……」
戦士「一対一で！ 正々堂々！」
勇者「そりゃま、俺も三人でとか経験ないし」
戦士「決まりだな。さっそく手合わせといこう」
勇者「いや手を握るなんてまどろっこしい。キスからいこう」
戦士「え？」
勇者「ん～」
戦士「ちょっと待て！ なんだよいきなり！」
勇者「ん～」
戦士「やめてくれ！ 俺には妹ちゃんがいるからァ！」
勇者「フッたんじゃないのかよ！」
完
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