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夫婦サイコロ

作者: 甚九郎

「半か丁か!」

悠紀子の掛け声に俺が応える。

「半!」

「四六の丁!」

「負けたぁ!」


今日の賭けの対象は向こう一週間の食事当番。負けた方が食事を作り、勝った方が皿洗い。


夫婦共働きやから夜の8時9時に帰宅してから厨房に立たんならん食事当番賭けるんは結構真剣勝負や。


でも良くしたもので悠紀子の創作料理と俺の簡単料理の割合はだいたい半分になっとる。


「やっぱり確率ってあるんねぇ」

「でも俺らの勘かて関係してるし、純粋に確率とは言えんのとちゃう?」

「うーん」


俺ら夫婦が丁半サイコロで色々決めるようになったんは、ジャンケンでは後出しとかあるなぁって話になってから。


「小学校んときそんなんあったわ」

「あったあった。喧嘩にはならんかったけど、ずるいとか言うてたわ」

「ほなさ、ウチらでなんか決めるん他のもんでせえへん?」

「……くじ引きとか?」

「なんやピンとせんなぁ」

色々案を出して決まったんが丁半サイコロやった。


悠紀子はネットで壺振りのシーンを拾って来て、「入ります」と言う掛け声で右手のマグカップにチンチロリンと左手のサイコロを投げ入れるんを何回も練習したほどで、今は大抵悠紀子が壺を振っている。


「なあ、ちょっとええ」

俺が皿を洗い終ってゲームでもしよかと携帯を手に取るとリビングから悠紀子が声かけてきた。見ればもうマグカップとサイコロを用意してる。


「何か賭けなアカンことまだあったか?来週のんは全部決めたんとちゃうかった?」

「ウチの将来と子供」

「はあ?」

「部長からプロジェクトの打診受けてんけど……受けたら来年から5、6年はめっちゃ忙しくなんねん。子供産んでも育てる余裕ない」

「ちょう待って。子供は作ろなって決めたやん。5年待てて、何それ」


「ゴメン……せやから、サイコロに聞かせて。ウチももうどうしたらええかわからん」

「……」

俺の子供欲しいって気持ちと板挟みになって泣き顔の悠紀子見てたらまあええかと思えてきた。

「ほな、恨みっこなしやで」

「おおきに、アキちゃん……」

悠紀子がサイコロ指に挟んだ手とマグカップ持った手を顔の前で左右に泳がす。サイコロがチンチロリンと鳴り、バンとマグカップが重ねた漫画雑誌の上に伏せられる。

「半か丁か」

「半!」

「三四の半!」

ふぅと悠紀子がため息をついた。

「ほな、赤ん坊やな」

「うん……」

俺はサイコロとマグカップを手に取った。

「何なん?」

「俺、主夫になって育児しよかな思て」

チンチロリン

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