第7.5話
“幽霊は夢をみるのか?”
それは、この世に生きているかぎり誰にも確かめようのない問いです。けれど私だけは、答えを知っています。
“幽霊は夢をみる”
なぜなら──
私が今みているのは、“自分が死んだ日の夢”なんですから。
忘れもしない入学式の日のこと。
前日の夜に読んでいた本が面白くって、私はその日、ちょっと寝坊してしまいました。
中学の頃からずっと一緒に登校してた恵美ちゃんがいつものように迎えに来てくれたけど、先に行ってもらうことにしました。
オレンジジュースをグッと飲みほし、新しい制服に身を包み、三面鏡の前で髪を整えます。誕生日プレゼントに恵美ちゃんにもらった髪ゴムで、いつものおさげを結びます。ちりん、という音。
“七海は普段から危なっかしいからね。これなら、どこにいてもすぐにわかるだろう?”とは恵美ちゃんの弁です。もう私も高校生なんですから、いつまでも子供扱いは困りますっ、と言いましたが、とっても嬉しかったことを覚えています。
身支度が済んだ頃には、もう8時を過ぎていて。
行ってきます、と家族につげて学校へ向けて駆け出しました。
いつもは少しだけ遊んであげている近所の猫の前を通り過ぎ、近道の公園の中を駆け抜け、ようやく学校が見えてきます。校門前の横断歩道が都合よく青に変わってくれました。
8時25分。
私は、なんとか間に合ったことを確信し、ホッとしながら横断歩道を渡って──
夢はいつも、そこで終わりです。
知りようのないことは夢に見ない、ということでしょうか。トラックの運転手さんも、きっと徹夜で頭がぼーっとしていたんでしょう。
……仕方ありません。しかたない。
──でも。
もしも願いがかなうならば──。
せめてちょっとぐらい、高校生してみたかったなぁ……。