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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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輝く花 2

 低ランク向けの依頼が集まる一角に、四人の男と彼らに囲まれる形で一人の女が立っていた。


 僕の記憶が確かなら、二コラがパーティに入れてもらおうと頑張ってた人達だね。

 何だかひさしぶりに会った気がするよ。


 ここ数日はほとんど毎日ギルドに来てたのに、会わなかったってことは…………長期の依頼にでも出かけてたのかな?



「ん? あっ、キミはあの時のドワーフさんっ!? 無事だったのか……。

 っ! あ、あのっ……前はワイルドボウを押しつけちゃって、ごめんなさい!!

 で、でも、僕たちも危険が迫っててっ! だ、だから、悪気があったわけじゃあっ!」


「……。弁解なんて求めてないから、いらないっての。

 あ、あれくらい敵じゃないっていうかぁ~? あたしらにはだたのザコだったし~?」



 ワイルドボウっていうと、あの猪みたいなモンスターのことだね、たぶん。

 ということは、二コラに気付いて話しかけてきたこの人は、彼女が助けようとしたら猪を押し付けて逃げて行った人ってことかぁ。



「そ、か……。ドワーフさんは強いんだな……」


「ま、まぁな。てか、あたしらのことより、あんたらの方がたいへんだったんじゃない?

 メンバーの二人、知らないやつに変わってるし」



 え、前と違う人がいるの? うーん、ダメだ全く分からない。

 というか、彼らのことはリーゼって娘のおまけで覚えてるだけだから、彼女以外が変わってても、ねぇ?



「あ……うん、ヤンとクンツのことだよね。

 彼らは僕たちをワイルドボウから守るために囮になってくれたんだよ。

 ……だけど、その代わりに大ケガしちゃってね……」


「っ!! そ、そうか。それは、なんというか……ご愁傷様……」


「なんとか復帰できないか待ってみたんだけど、やっぱり無理だっていわれちゃって。

 新しく彼らを迎えて……だから今日は、僕たちにとっては再出発の日なんだ」



 最後には前向きなコメントが出てきたけど、思ったよりもヘビーなこと言ってるよ。

 僕は知らない人達だからどうでも良くても、ニコラにとっては違ったりするのかな?



「そうだよ。ドワーフさんも僕たちのパ――」


「カールさん? そちらの方とぉ、なにかありましたぁ?」



 数日前にも聞いた覚えのある、甘ったるい話し方の人物が会話に入ってきた。

 まあ、ほとんど真横で話してたんだから、普通に聞こえてるよね。



「リーゼちゃんは覚えてるかな? ワイルドボウから逃げてた時、助けてくれたドワーフさんだよ」


「……えぇ、覚えてますぅ」



 ん? なんだろう……彼女のフインキにちょっとした違和感? みたいな、何かを感じたような……。



「二コラでいいよ。『ドワーフさん、ドワーフさん』ってよばれるのは、なんか落ち着かないからな」


「ニコラさんはぁ、お一人なんですかぁ?」


「? ちゃんと紹介してないからか?

 こっちのアイリスとパーティ組んでるんだよ」



 うわ、ついに話を振られちゃったかぁ……。

 二コラとリーゼ達で完結してたら良かったのに……こうなると、ちょっとメンドーなことになるな。


 あ。何がメンドーかというと、今は隠密スキル発動中だから……



「こっち? ――っ!!」


「っ!?」「!! どこから出てきたんだ……??」「っ! ……全く気づかなかった」



 ほら、やっぱり驚いてるよ。

 このスキルって、透明になってるわけでも見えなくなってるわけでもなく、存在感がとっても薄くなってるだけだから、意識を向けられると気付かれちゃうんだよね。


 ……うん、逆に視線を集めちゃってるね。

 変に注目されるくらいなら、使わない方が良かったかな?


 まぁ、今更言ってもだよねぇ。



「いつの間にっ……ではなく。あなたがぁ、あいりすさん、ですぅ?」


「ぁ、はい。アイリスです……どうも。ボクは、その。影が薄くて……驚かせちゃって、すみません」



 とりあえず謝っておこう作戦で乗り切れるといいなぁ。……いきなりだったから、ドモちゃったけど。

 まぁ、影が薄いのは前世から続く事実だから嘘は言ってないし、問題ないはずだよ。



「ワイルドボウはアイリスと二人で――いや、ほとんどアイリスが一人で倒したんだ」


「え、えっ? ……えぇっと、そんなことはないんじゃないかなぁー。

 あれは二人で倒したんだよ。うん」



 ニコラ、何故か急に持ち上げてくるし。

 そういうの慣れてないからやめてほしいな……。



「そうなんですかぁ? アイリスさんはお強いんですねぇ~」



 リーゼも僕の話なんか聞いてないみたいに、話を進めてくるよ。

 しかも、ちょっとずつ近くなってない?



「いえですから、二人で倒したもので……」


「Dランクなんですねぇ。もうぉ上位の冒険者一歩手前じゃないですかぁ~。

 リーゼぇ、憧れちゃいま――っ!?」



 身を屈めて僕の首元にある冒険者プレートを確認した後、自然な動きでフードに隠れた顔を覗き込まれた。


 わぁ……綺麗な瞳だなぁ。

 そんな風に見つめられると、目線を外せなくなっちゃうよぉ~。


 というか、こんなにグイグイこられたの初めてなんですけどっ!

 もしかしてこの()、僕に気があったりするのかな~?



「――す。なのでお互いがんばりましょうねぇ? ではぁ、さよならですぅ」


「へ? あ、はい。さようなら……」



 それだけ言うと、彼女はギルドの出口へと歩いていってしまった。

 あれぇ? 話切り上げるの早くない……?


 ここから仲良くなって、僕達のパーティに入りたいとか言い出す流れだと思ったのに……。



「り、リーゼちゃん!? おいっ、俺達も行くぞ!」


「「あ、ああ!」」


「えっ、ちょっと待ってっ! ――二コラさん、危ないところを助けてくれてありがとうっ!」



 そして、彼女を追いかける取り巻き達。

 うん、こっちはどうでもいいね。



「……なんだったんだ?」


「さぁ……? 何か急ぎの用事でもあるのかもね」



 自分で言っておいてだけど、「それはないなぁ」とは思うよ。

 ――が、考えても答えが出ない事は気にしても仕方ないね。


 それよりも、ちょっと気になったことでも聞いておこうかな。



「ところでさ。彼らとは昔からの知り合いだったりするの?」


「いんや? あいつらと出会ったのも最近のことだし……あぁ、そうだ。あんたと初めて会った日だわ。

 あのちょっと前にパーティメンバーを募集しだしたから、声をかけたんだったな」


「そう、なんだ……」



 ということは、大して知りもしないどーでもいい人のために、モンスターから身体を張って守ろうとしたり、大ケガしたことを聞いて驚いてたってことか……。

 ふむふむ、なるほどね。やっぱり、二コラは優しい()だな~。

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