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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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パーティ結成 12

「よーし、このくらい集まれば十分でしょ。そんじゃあ帰るよー」


「…………」


「? ……あぁ、そうだ。帰り道はもっと慎重にいくよ。正体はわからんけど、絶対ヤバイのがいるからね。

 あんたはのうてんきってか、どっかに危機感おき忘れてるとこがあるからね……って、聞いてんの? おーい、アイリス?」


「…………」



 二コラが何度も語りかけるが、ピンク髪の少女は彼女に背を向けたまま、一言も発さない。

 不審(ふしん)に思った二コラは、確認しようとゆっくりと近付いていき――



「あ、もう集まったの? ごめんごめん、ちょっとあっちの方が気になったから探索しててねー?

 決して、サボってたとかじゃないから……って、えっ。そっちの()は……誰?」


「なっ!? こっちにもアイリス???」



 そろそろ依頼に必要な本数は集まっている頃だろうと戻ってきたら、二コラが知らない()に話かけていた。

 いや、知らなくはない……というか、あの後ろ姿は僕だね。


 すると、僕が認識するのを待っていたかのように、華奢(きゃしゃ)なピンク髪の少女の輪郭がボヤけ始める。

 加えて黒い(もや)のようなものが、うっすらと漂い出して――



「ぇ……っっ!?!?」



 その予期し得ない変化に、二コラは固まったように動けなくなっていた。


 そうだった。「驚かすのはもう十分だよ」って、伝えるの忘れてたよ。

 ま、まぁここまでやっちゃったし? もう最後までやりきるしかよね!



「ウォオオオォォォォォォォンッ!!」



 とかなんとかやってるうちに、少女の姿は掻き消えて黒い靄、つまりレイスに変化していた。

 えっと、この場合の正しい反応は……。



「きゃ、きゃあーー。レイスだぁ、怖いよー。はやくにげないとー…………?

 ニコラ、どうかした? ……あのぉー? えと、早く逃げないと殺されちゃう……あれ、死んでる?」



 というのは冗談としても、意識は手放しちゃったみたいだね。

 せっかくかわいい悲鳴――完全に棒読みだが――を上げて、盛り上げようとしたのになぁ……。



「……あーあ、キミがやり過ぎちゃったせいだよ? 反省してね?」


「ォンッ!?」



 人を驚かして楽しむなんて悪いレイスだなー。

 あ、やったのはボクじゃないから、全く悪くないからね?


 さてと、二コラが寝ちゃったなら、もう帰ろうかな。

 レイスの方は……うん。きっと反省してるだろうし、許してあげることも大事だよね!



「うんうん、次からは気を付けるんだよ?

 えっと、このままにするわけにはいかないから、二コラはボクが背負って……と、ホント見た目通りで軽いな~。

 じゃあボク達は帰るから。さよなら~――」


「ウォォンッ! ……ウォォォン……?」


「えっ? 自分はこれからどうすればいいのかって?」



 街に帰ろうとしたら、目の前を漂う(もや)から困惑のような感情が伝わってきた。


 召喚したモンスターって、どう処分したらいいんだろうね?

 スキルで呼んだわけだから未練なんてものがあるとは思えないし、放置してたら勝手にきえ……成仏してくれないかなー。


 ……なーんて、願っててもどうにもならないし、とりあえずはその場凌ぎのテキトーなことを考えないと。



「……いいかい? これからのキミは、自由な存在なんだよ。だから、好きなようにしてくれれば――自由が分からないって?

 自由っていうのは…………誰にも縛られず、自分の意志で思うがままに行動できる。そういった感じの素晴らしいものなんだよ……たぶん。

 ――ってことで、頑張ってね~。<テレポーテーション>!」


「ッ!!??」



 やっぱり、生き物は自然に帰してあげるのが一番だよね~。

 レイスが生き物なのかは謎だけど。



 こうして何も納得していないレイスを置き去りに、街へ転移するのだった。




 ***




「んぅ…………んん? ここは……アイリスの部屋?」



 簡素なベッドで身を起こした幼女が、部屋を見回して困惑気に呟いている。

 昨日の今日なのに、もう覚えてくれたみたいだね。



「あ、おはよう。そうそう、ここはボクが泊ってる部屋だよ。覚えててくれて嬉しいな~」


「なんでぇ……? なんで昨日も泊ったんだっけ……。

 っ!! お、おばっ、オバケはっ?!」



 おっ、昨夜の事もしっかり覚えてる。

 でも気絶しちゃうくらい怖かったのなら、アレは夢ってことにして忘れさせてあげた方が二コラのためかな。


 ……あの時、レイスは僕の姿になってたから、変に関係とか疑われてもメンドーだしさ。



「オバケ……? あはは、そんなものいなかったよ~。

 もしかして、怖い夢でも見たのかな?」


「そっ、そんなわけないじゃんっ!? あんたと思ってたのがっ、いきなりおぞましい何かになってっ!

 それで……っ、それでっ――すぅぅ、はぁぁぁぁ……。おちつけぇ、おちついて考えるんだ、あたしっ……!

(あたしの記憶は……ちょっとあいまい? だったら、アイリスが見たもののほうが正しいのかも……)

 ――アイリスは、()()()()にっ! なにも見てないの?」


「う、うん。オバケというか変わったもの? は、何も見てないね。

 ……ボクはセイメイカを集めようとしてちょっと離れたところまで行ってたんだけど、戻って来たらすやすや眠ってる二コラを見つけた……みたいな?

 確か、そんな感じだったよ?」


「……そっか。あれは夢だったんだ……。

 だ、だよなぁ~? あたしだって、はじめからわかって――!?」



 どうにか自分を納得させた二コラだったが、部屋のある一点を見た途端に固まってしまった。


 何か気にあるものでもあったのかな?

 んーでも、この部屋は割とシンプルだから、面白いものは置いてないはずなのに。


 えっと、彼女が見てるのは窓?

 外に何か面白いものでもあるのかな……あー、そうだった。外じゃなくて、アレを飾ってたんだった~。



「あ、それね。昨日のあの場所、凄く綺麗だったからさ。一本飾ってみたんだよ~」



 窓の前に置かれた一輪挿しには、薄くて儚げな青い花が活けられている。



「今はまだ光ってないけど、夜になったらまた光り出すのかな?

 まあ、一本だけだと物足りないかもね。やっぱり、あそこにみたいに幻想的な光景にはならない――」


「ア、アイリスっ!!」


「ひゃぃっ!? どっ、どうしたの? ……二コラ?」



 幼女が唐突に抱き着いてくるから驚いちゃったよ。

 ……もしかして、レイスを召喚したのが僕だってバレちゃった……とか?


 いやいや、そんなはずないよねぇ?

 だって気付かれる要素はないわけだし……でもそうじゃなきゃ、こんなタックルみたいに突撃してこないだろうし……。



「きょ――ぇて」


「え? ごめん、良く聞こえなかった……。もう一回いい?」


「今日も泊めてっ!」



 僕を見上げる、大きくて丸い目が不安で揺れている。

 しっかりと耳に届いたはずの言葉よりも、その綺麗な(ひとみ)に心を捉えられてしまったようで、ボーっとしてしまう。



「昨日は、泊っていいっていった。……きょうは、ダメなの?」


「ぅぇ……っ? う、ううんっ、もちろんいいよ! むしろ何日だってOKだからっ!」



 ふぅ、良かった。この様子ならバレてはないでしょ。

 たぶん、花を見たら色々と思い出しちゃったってとこかな?


 一度は冷静になったと思ったのに、分からないものだね。



 まぁ何でもいいや。

 とにかく、こうして今日も可愛い抱き枕が手に入って言う事なしだよ~。

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