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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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パーティ結成 10

「さっ! がんばってセイメイカ探しするぞぉ~!」



 二コラが目を覚ましたので、僕達は"セイメイカ"という花の採取依頼を受けて、森の中へと移動していた。


 え? 穏やかな一日で終わるんじゃなかったのかって?

 ……僕はそれで良くても、二コラが許してくれなかったんだよぉ。


 しかも、既に夕方だったから、日はすっかり暮れて真っ暗闇だし。

 一応、この時間に来たのには、ちゃんとした理由があるんだけどね。というのも……



「その『セイメイカ』って、夜になると光るんだっけ?」


「ああ。ただし、淡い光だから見落とさないように注意しろってさ。

 ま、これだけ暗けりゃ嫌でも目立つんじゃない?」



 とのことなので、真っ暗なのは悪い事ではないらしい。


 でも、夜の森ってなかなかフインキあるよねー。

 正直なところ、一人だったら帰ってたよ。


 この森自体は前の依頼で来たことがあるから、知らない場所じゃないはずなのに……印象って、少しの違いで変わるんだなぁ。



「でさ、アイリスはどれくらい見えてんの?」


「んー、そうだねぇ……ニコラの顔がギリギリ見える、くらいかな。

 あはは、これだと何も見えてないのと変わらないかもね」



 ただの夜闇ならもう少し見えていたと思うから、星の光が木々に遮られて届かないってところがポイントなのかな?

 後は、持ってきていた明かりも「モンスターの注意を引きたくない」って言われたから点けてないし。



「そんなに? 人間も不便だな。じゃあさ――ん」


「え? ……この手は?」



 このままだと不便なので暗視スキルでも使おうかと考えていたら、小さくて可愛らしい手が目の前に出てきた。



「あたしらドワーフの目は、真っ暗な坑道内でも行動できるようにできてんだよ。

 だ、だから、手かしてよ? そしたら、あたしがエスコートしてやってもいい……っ」



 どうやらドワーフという種族には、暗視のような特性が備わっているらしいね。

 鉱物の加工に優れた種族ということだから、採掘の方も得意ってことかな。


 でも、暗くても見えてるのね……。

 夜の森で怖がる幼女が見られると期待してここまで来たのに……あーあ、残念だよ。


 ――ま、柔らかなお手々を握ってお散歩出来るんだから、悪くはないか~。



「へぇ、便利な能力があるんだね。じゃあ、頼らせてもらうよ。ありがとね。

 だけど、ホントにボク何も見えてないよ? 二コラの負担にならないかな?」


「い、いいよ。要は道案内するだけなんだし……。

 言っとくけど! もしモンスターが出てきたら、アイリスにも戦ってもらうからなっ」



 気恥ずかしそうにしてる割には、やっぱ止めたとかはないみたいだね。

 これってもしかすると、いいところを見せて昨日の失態を挽回したい的なヤツだったりして……可愛い事考えるなぁ~。



「うん、ありがとね。……ふふっ」


「っ!! へ、変なこと考えてんだろっ!?

 これは別にその、あんたが頼りになったこともあったからそのお返しってだけでっ! 深い意味はなにも……っ!!」



 この焦った反応、十中八九正解だね。

 ニコラは可愛いな~。



「うんうん。分かってる、分かってるよ~」


「それっ、絶対わかってないだろっ! ――も、もういいっ!!」



 ちょっとからかったら、プリプリ怒って歩き出しちゃったね。

 でも手はちゃんと繋いだまま。やっぱり、優しいな~。



 さてと。ニコラがこんなに可愛いことしてくれてるんだから、何かしらのモンスター遭遇イベントはあってもいいと思うんだけど……うーん、この近くにはそれっぽい生命反応がないんだよねぇ。

 んーと、何かないかなー? 夜、幼女と美少女が二人きり……ってことは、このスキルなんていいかも? <死霊召喚>。


 ふふふ、これでちょっとは彼女に見せ場をつくってあげられるでしょ~。



「っ!!」



 スキルを発動したら、ニコラが突然後ろを振り返った。


 え、バレた……?

 せっかく魔法陣とか何も出ないスキルを選んだのに、失敗しちゃった?



「どうしたの? ……何か変なものでも見つけたのかな?」


「よくわかんないけど、背中がゾワって……っ!

 ぁ、いや、なんでもないわ。ちょっと、寒気がしただけ……それだけだから気にしないで」



 どうやら頭上を漂う(もや)のようなものには、気付かなかったみたいだね。

 念のため、召喚場所を見つけにくい場所にしておいて正解だったよ。



「体調不良とかだったら言ってね? 今日じゃなくても、明日だっていいんだからさ」


「ホントにダイジョブだから。さ、行くぞー」



 誤魔化せた……? よし。最後にやって欲しい事を召喚したモンスターに伝えたら終わりだね。

 でも、どうやって? 直接話かけるわけにはいかないし……んん? 何だかこうすればいける気がする……っ。



 ――キミは隣の()が活躍できるように、テキトーなところで驚かしてくれるー?

 ――それでボク達をイイ感じに盛り上げてよー、お願いね~?



 と、試しに心の中で語りかけてみれば、伝わったような伝わっていないような微妙な感触があった。


 多分、これで大丈夫かな? ……うん、きっと伝わったから準備完了だね。

 それじゃあ改めて、幼女とのドキドキ肝試しの始まりだぁ~!

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