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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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酒場の看板娘達 7

「おかわりぃ……はやくぅ、もってこーぃ……」



 耳元をすくぐるように可愛らしい寝言が聞こえてくる。


 なんと今、僕の背中では愛らしいドワーフが無防備に寝てるんだよ~。

 どうしてこうなったかというと……



「ドワーフのくせに、あれくらいで酔いつぶれるなんて情けないわね」


「それ、見てただけのカルラちゃんがいえることじゃないよ……」



 もちろん、彼女が泥酔するまで僕が負けなかったからだよ。

 ……ドワーフよりも強いだなんて、いくら何でも酒豪過ぎるよね……。



「アイリスさんは大丈夫なんですか? かなり……というか、二コラさんよりも飲まれてたと思うんですが……」


「そ、そうだねぇ。ニコラも周りも飲めってうるさいから、ちょっと流されちゃったかなー」



 心優しいアンジェは、僕のことも心配してくれてるよ。

 途中から集まって来て、面白半分に「飲め! 飲め!」コールしてた観客とは大違いだね。


 もしかしたら、酔った後に介抱すると見せかけて、色々しようとしてたのかもしれけど……ま、僕にはこれがあるから不可能だったね。



「でも大丈夫、酔ってない……というか、たぶん酔えないからね」


「?」



 久しぶりに意識の内に入ってきた半透明のウィンドウに、こんな表示が出ていたんだよね。



【ログウィンドウ】

<毒耐性>が発動しました。



 酒――というよりもアルコールなのかな? ――は毒判定になるみたいだ。

 いくら飲んでも「酔った感覚が全然しないなぁ」と思ってたら、スキルの影響だったというわけだね。


 酔えもしない酒ね……うん。やっぱり、現世でも酒はあんまり飲まないだろうなぁ。



「受け答えもはっきりしてますし、足取りも確かなので大丈夫だとは思いますが……。

 ニコラさんはわたしが運びましょうか? もし転んだりしたら、危ないですし」



 本気でこちらの事を心配していると理解出来る程、一直線な瞳で見つめられてる……っ。

 本心を言えば、背中の暖かな感触は手放したくない! けど、この綺麗な目を見てると、頷くべきだって思えてくるぅ……。



「そこまでしなくてもいいんじゃないかしら?

 アイリスって意外に力あるし、このくらい楽勝だと思うわよ」


「か、カルラちゃん失礼だよ!

 アイリスさんだって女の子なんだから、嫌かもしれないよっ!」



 僕は馬鹿力だと認識されてるみたいだね。

 美少女に力持ちって言われるのも、ま~悪くないかな~。



「ううん、心配してくれてありがとね。

 カルラの言う通り、ニコラをおんぶするくらい何ともないから、大丈夫だよ~」



 考えてみると、ニコラはいつも通り斧や防具を身に着けてるから、かなり重いはずなんだよね。

 だから、たぶんアンジェには持てないかな…………。


 あ、「重過ぎて、押しつぶされそうになってるアンジェも見てみたいな~」なんて、考えてないからね?



「それじゃ、そろそろ行くね? また来るから~」


「ええ、明日も待ってるわ」「はい、また明日です」



 どうやら明日も来ることは確定してるみたいだね。

 こうなってくると、毎日通って常連にならないといけないな~。




 ***




「んぅ…………んん? えっ、ここ……どこ?」



 簡素なベッドで身を起こした幼女が、部屋を見回して不安気に呟いた。

 おそらく、彼女の記憶に合致する場所が存在しなかったために、軽く混乱しているのだろう。



「あ、起きたね。ここはボクが泊ってる宿だよ~。

 ニコラがどこに住んでるか知らないから、とりあえずここに運んだってわけだね。

 ……ボーっとしてるようだけど、体調とか大丈夫かな?」


「アイリスの……?

 昨日はあたし、あんたと一緒に酒場へ行ってそれで、それで……。

 うわぁ、やらかしてんじゃん…………」



 彼女は昨日の一連の流れを覚えているようで、顔を隠すようにポフンと再度ベッドに横になった。

 とりあえず元気そうだし、二日酔いとかもなさそうだね。



「あー、その……さ。迷惑かけた、ゴメン……」


「ん? 別にいいよ。全然、ぜーんぜん、迷惑じゃないから」


「ほんと……?」



 こちらの様子を窺うためだろう、隠れていた顔を一部だけ出して問いかけてくる。

 そこから見える顔は見事に赤く染まっており、彼女の照れ具合が分かるようだ。


 彼女のこんな弱った姿が見られるなんて、連れ帰ってきて正解だったよ~。



「うん、ホントホント。迷惑だなんて、これっポッチも思ってないよ」


「そっか、あんがと……。あれ、この服……?」


「そのままだと寝にくいだろうから着替えさせたんだよ。

 でもボクのだと、サイズ合ってないよね? ゴメンね、でもそれくらいしかなくてさ~」



 いわゆる"彼シャツ"ってヤツになるのかも。

 転生して小柄になった僕の服でこんなことが出来るとはね。流石はドワーフってところかな。



「いや……。なにからなにまで、その……悪いな」


「だから、いいって~。……おかげで役得もあったしさ」


「?」



 おっと、つい本音が……。え、「役得って何だよ」って?

 それはまぁ、ヒミツかなぁ。ん~でも、言える範囲だと……モチモチ肌だったね、見た目通りだったよ。



「き、気にしないで? た、大したことじゃないからぁ……。

 あーそうだー、今日はどうしよーか? こんな時間だし、せっかくだからもう一泊してく?」


「こんな時間って、今は――えっ?」



 窓から入った西日によって、この部屋は茜色に染め上げられていた。

 そのことに彼女も気付いたようで、窓の外を改めて確認して驚いたみたいだ。


 最近は冒険者し過ぎてたから、幼女を眺めて終わる穏やかな一日? というのもいいものだな~。

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