酒場の看板娘達 6
「みーんな、エルフ、エルフってさぁ……。ドワーフだって……ドワーフだってぇ……」
二コラが同じようなことをうわ言みたいに呟いている。
初めは変なフインキになっちゃったけど、その後は食事も楽しく進んで解散……みたいな流れを想定してたのにね。
どうしてこうなったんだろう? いやまぁ、確実に酒が原因なんだけど。今も片手に持ったそれのことだけは忘れないで、ぐびぐびと飲んでるし。
真赤に染まった頬や完全に据わってる目からして、かなり酔ってるんだろうね。
どんどん空になる酒杯を眺めながら「やっぱり、ドワーフは酒に強いんだなー」って思ってたら、かなり出来上がってたよ。
ま、いいや。このままテキトーに相手しておこう。そしたら、お持ち帰りまでイケちゃうかもしれないしね~。
「うんうん、そうだよねー。ドワーフも可愛いよねー?
ドワーフのこの愛らしさが何でみんなには伝わらないんだろー? 不思議だなぁ」
「そんなこといって……。あんたもさぁ、おなじじゃん……」
あれ? 気付いたら、ジトーっとした目が僕に向けられてるよ?
あ、まずい。テキトーな相槌を返し過ぎて怒らせちゃったかな……。
「へ? 同じ? ……な、何が?」
「あんたもさぁ、わかってんでしょ……?
まわりの男たちの視線! あんたのこと見てるヤツもいっぱいいるじゃん……っ。
こんなの、あのエルフたちと同類だつってんのっ!」
「「「っ!!?」」」
彼女の言葉が聞こえてたであろう、周囲のテーブルのうち何人かが目を逸らした。
店の中で隠密スキルを使うわけにもいかないから、チラチラと見られるくらいは受け入れることにしたよ。
見られるだけなら……まあ、何とか許容できるくらいには慣れてきたし。
それにここなら、ナンパというか絡まれるまでいくと、ラドミラ達が助けてくれるって安心感があるからね。
「お待たせしました! 追加のエール――」
「むねか!? やっぱ胸なんかっ??
ならっ、こいつとか変わんないじゃん! あるのかないのか、わからないくらいのサイズじゃんっ!」
「!!?」
なんてしょうもない話をしてたら、酒を運んできたアンジェが巻き込まれちゃったね。
可哀そうに、突然攻撃力マシマシな言葉を受けてプルプルしちゃってるよ。
「まあまあ、落ち着いて。店員さんに絡んじゃダメだよー? ね?
それに、胸っていうのは大きさだけじゃないんだから。
手に吸い付いてくるみたいなモチモチ感触だったり、薄いピンク色の可愛い先端とか、色んな楽しみを提供してくれるんだよ? アンジェの胸は」
「ちょっとっ!? アイリスさんはアイリスさんで、なにいってるのっ!?」
前に、風呂で揉んだ時の感触が甦るね。
あー思い出したら、もう一度触りたくなってきたなぁ。ちょっと揉むくらいだったら許してくれるよね?
「そうよ、そうよ!
『なにもしないとスカスカで不格好』だからって、実はつめものまでしてるのよ!
なにもないように見えるて、なにかはあるんだから!」
「……けんか売ってる、カルラちゃん?
怒るからね? わたしだって怒るときもあるんだからねっ!」
いつの間にかフロアに出てきていたカルラが、フォローなのか分からなこと言ってるし。
それにしても、詰め物してるのか……じゃあ、今触ってもそれは偽物の感触なんだね……。
「う、うっさい、うっさい!! とにかく、あんたらエルフは恵まれすぎなんだよ!
こうなったら――飲み比べで勝負だっ!!」
え、何で? どういう流れ?
意味の分からないことを言い出しちゃって、酔っ払いはどうしようもないなぁ。
「いいわ! その勝負受けて立つわよ――アイリスがねっ!!」
「しかも、受けてるし。……って、ボク?
いやいや、ボクは全然受ける気ないから。
やるんならカルラか、だいぶお怒りゲージが溜まってるアンジェにやってもらいなよ……」
「だって、あたしたちお酒を飲める年じゃないもの。
お酒は二百歳になってから。大事なことなのだから、守らないとダメよ?」
「それなら、勝負なんて受けなければいいのに……」
でも、そっかー。成人してるようには見えなかったけど、お酒もダメな年齢――って、二百?
や、やっぱり、エルフは長命みたいだねぇ。
「ごちゃごちゃいってないで、誰でもいいからはやく始めるぞー。
だれが相手だろうと、どうせあたしの勝ちなんだからな」
「はぁ、分かったよ。やればいいんでしょ? ……お酒は好きじゃないんだけどなぁ。
とりあえず、エールでいいよね。アンジェ、ボクの分ももらえる?」
結局は酔っ払いに理屈なんて通用しないからね。諦めて勝負を受けることにしたよ。
たぶん、ある程度飲んだところで降参した方が楽に終わるもの。




