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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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ブルクハルト伯領 6

 朝になった。


 寝るのが早かったからか、ぴったり日の出と共に起きてしまった。

 こんなに早く起きるなんて何年ぶりだろう?


 昨夜は、ぐっすりと眠れた。

 魔法にスキルと気になることができた割に、寝ると決めたら意識が途切れるのは一瞬だった。

 そのおかげか、寝起きなのに思考はクリアだ。


 半分眠った頭で朝食を食べていた前世とは比べものにならない。

 女性用の下着を着るのには少し手間取ったけど、とりあえずは身支度も整えた。



 今日の予定は、冒険者になることだ。


 魔法のことも気になるけど、一旦は後回しにしておこう。

 ここで使うのは危ないだろうし、冒険者になれば街の外に出ることになるだろうからね。


 そういえば、冒険者ギルドってどこにあるのかな?

 ノラたちが向かった先にあるとは思うけど、何の目星もなく行ったら迷子になりそうだ……。

 まずは、カウンターで聞いてみようかな。



「部屋の鍵を返しに来ました。ここに置いておきますね。……それと、冒険者ギルドの位置ってご存知ですか?」


「冒険者ギルド?

 それなら南門まで行って、そこからずっと右に進んだところだね。

 大きな建物だし、無駄に武器を持った人間が出入りしてるからすぐ分かるよ」


「そうなんですね。ありがとうございます」



 南門か。きっと、僕が入ってきたところだよね。

 そこからずっと右、ノラたちもそっちに行った気がするし、合っているはず。


 意外にも聞いたことはしっかりと教えてくれる人だ。

 早い時間だからカウンターにいるか不安だったけど、昨日と同じようにいてくれて助かった。

 安宿だなんて、思ったことを心の中で謝罪しておこう。




 ***




 冒険者ギルドの建物は確かに大きかった。


 3階建てというのは特段強調するものではないかもしれないけど、周りが2階建てのために頭一つ分大きい。

 しかも、周りの建物との間隔が広く、両側が道になっている。

 それによって、余計に冒険者ギルドの建物は際立って感じるようだ。


 正面には星のマークが付いている。

 冒険者ギルドのマークは星なのだろう。一応、覚えておこうかな。



 中に入ると酒場のような空間が広がっており、既に数人が飲んでいるようだ。

 僕が入ると鋭い視線が集まった気がする。絡まれたりしませんように……。


 奥の方にカウンターがあるし、入会の受付はあそこに行けばいいのかな?



「あの~、冒険者になりたいのですが、受付はここですか?」


「はい、冒険者志望ですね。加入金として銀貨1枚が必要になります」



 某狩猟ゲームの受付嬢のような格好をした女性だ。

 加入金が銀貨1枚か。まだ、この世界の金銭感覚がよく分からないけど、払えない額じゃない。



「これでお願いします」


「加入金は問題ありませんね。ではこちらにお名前をご記入ください」



 黄ばんでゴワゴワした小さな紙……のようなものを渡された。

 流れ的にエントリーシートみたいなものだろうか。ってこれ、名前しか書く欄がないけど、これで大丈夫なのかな……。


 やはり、文字を読めたように、書くことも問題ないようだ。

 全然知らない言語のはずなのに、書きたいことを思い浮かべれば勝手に手が書いてくれる。


 そういえば、名前は思いついたけど苗字は考えてなかった……。名前だけでもいけるかな?



「……はい、書けました」


「アイリス、さんですね。それでは少々お待ちください」



 よかった問題ないみたいだ。

 本人確認のようなこともしないし、そこらへん適当なのだろう。


 でも、苗字は考えておいた方がいいよね。

 名前は花だったし、そんな感じで考えておかないと。



「こちらがあなたの冒険者プレートになります。肌身離さずお持ちください」


 小さな木の板を渡された。一応、僕の名前が表面に書いてある。


 名前を書いた紙に長方形の箱を載せて、それをこの板に載せると名前が印字されていた。

 これインクではないよね……? どういう仕組みなのだろう?


 それ以外には、首にかけるための紐がついているが、どう見てもただの板だ。

『黄金の盾』のみんなも同じような大きさのプレートを門番に見せていたけど、少なくともあれは金属製だったと思う。


 新人はこういうものなのかな?



「冒険者の手続きは以上となります。冒険者ガイダンスは必要ですか?」


「はい、お願いします」



 ここまで事務的な対応だったけど、冒険者ガイダンスというのも終始事務的に進んだ。


 内容をまとめると、依頼は掲示板に張り出され、それを受付に持ってくれば、依頼の受注ができること。

 モンスターを討伐したら、その一部を持ってくればそれを討伐証明として、また、ものによっては素材として認定し報酬が払われること。

 受注した依頼で怪我や、最悪死ぬこともあるが、それらについてはあくまで自己責任であり、原則としてギルドから補償金等は一切出ないといったことを説明された。


 この辺は大して面白味もないので、軽く聞き流しておこう。



 また、冒険者にはランクというものがあるらしい。


 冒険者ギルドや露店などで見た文字の種類からすると、この世界の文字はアルファベットモドキと、数字のようなもので構成されていると考えれば問題ないと思う。


 冒険者のランクをそれに当てはめると、A~Fの6段階と、それらよりさらに上のSの合計7段階で構成されている。

 当然僕は、最低のFランクの冒険者になった。



「以上が冒険者についての説明になります。質問はありますか?」


「いえ、大丈夫です。

 採集系の依頼で、いまのボクが受けられるものはありますか?」


「そうですね、Fランクの依頼ですと、チユ草の採集依頼があります」


「チユソウ……? というのは、どのようなものでしょうか?」


「見たことありませんか? ……こちらがチユ草になります。

 南の森に自生していますので、そこを探すのが良いと思いますよ」



 知らないのは変だったかな。いや、そんなこと今さらだよね。


 受付嬢はカウンターの下から、分厚い本を取り出した。

 そこには様々な植物の絵が載っており、そのうちの一つを指差している。

 他の植物との違いがよく分からない……。というか、僕にはただの草にしか見えないけど、何とかなるのかな?


「なるほど。では、そのチユ草の依頼を受けます」


「こちらは下級ポーションの材料としても利用されるため、常時依頼となっております。

 ですので、お好きな時に持ってきていただければ、依頼成功となります。

 では、これで依頼の受付は完了となります。頑張ってください」



 受付嬢の明らかな営業スマイルに見送られてギルドを出る。

 さて、初めての依頼開始だ。

21/05/04 サブタイおよび、本文修正。

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