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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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商人の娘 4

「それで? 何でケンカすることになったの?」


「ぁー……やっぱさ、この話やめない? あんまり面白いものじゃないし。……ダメ?」



 さっき「話すのはいい」って言ったばかりなのに、もう気が変わっちゃったみたいだ。

 というより、日和(ひよ)ったというべき?


 さて、彼女はこう言ってるけど僕はケンカの理由が気になって……いるのかな?

 よくよく考えてみると……うん、どうでもいいなぁ。



「んー、まあそうだね。ケンカの原因を聞いたからってボクに何が出来るわけでもないし、いい事ないもんね。

 あでも、さっきみたいに気まずい空気になったら、二人で何とかしてよ?」


「えっ、そこで納得する……? あっさりしすぎでしょ…………」



 おっと、これはやったかな?

 ポッカリと口を開けて呆然としてる……思ったことを素直に伝え過ぎたかも。


 もうちょっと興味があるフリくらいはしとくべきだったかぁ。



「――ははっ、なにそれ! ぜんぜん興味ないのな! あははっ!」



 今度は急に笑い出したし……ど、どうしたの??

 僕は面白いこと言った? いや、言ってないよねぇ?



「はははっ……はあ、はぁ。

 ううん、あんたの能天気な顔見てたら気が変わったわ。すべて話すから、ちゃんと聞いといてよ?」


「へ? う、うん。ニコラがいいなら聞くよ……?」



 能天気って、褒められてるとは思えないんだけど。

 まあ、何だかご機嫌みたいだし、結果的には良かったのかな?



「どこから話すか……ま、始めからになるよな。

 もう知ってると思うけど、フローラの父親(おやじ)って商人じゃん?

 だから、昔はあいつもそれにくっついて色んなところを旅してたんだよ」


「へぇ、そうなんだ。でも、今は街で帰りを待ってるよね? 今日商会にいたのも、帰って来るって聞いたから迎えに来たんでしょ?」


「それはここ一、二年くらいの話だな。商売が軌道に乗ったからなのか、家を定めたみたいだ。

 あいつは退屈してるみたいだけど、危ない旅に連れていくよりは留守番してた方が安心だし、あたしはいいんじゃないかと思う」



 商売成功でマイホーム購入ねぇ。

 何というか、幸せストーリーって感じだね。……どこからケンカの話になるのかな?



「でさ。あたしの住んでた街にもあいつら商売でやってきてたから……まぁ普通に知り合って、普通に友達になったんだよ」


「二コラの住んでた街に? へぇ、二コラってここの出身じゃなかったんだね」


「ん? そうだけど……そういや、あたしのことほとんど教えてなかったよな。あたしはグノーム王国の……って、この話は今度な?

 話を戻すと、留守番するようになったってことは、こっちの街には来ない……もう会えなくなるってことでしょ?

 だから、あたしがこっちに越してきたんだよ……」



 友達に会いたいがために引っ越して来たってこと?

 フローラのこと、大好きなんだな~。



「……なに、ニヤニヤしてんだよ。絶対、変なこと考えてるだろ?」


「えぇぇ? ボクのことは気にしないで、ほら続きつづき~」


「くっ、こいつ楽しんでるなぁ……こほん。そこまではいいんだよ、あいつも喜んでくれたし。

 問題は、あたしが冒険者になることを伝えた後なわけで……、『わたしとは、もう一緒にいてくれないの?』って駄々をこねだしてさ。それでちょっとモメちゃって……」



 その時のことを思い出したのか、彼女は俯いて黙ってしまった。


 今もダメージ継続中のようだね。

 それにしても、一緒にいて欲しいあまりにケンカするって。もう完全に両想いでしょ。


 二人の仲は大体分かったけど、どこから冒険者になりたいって希望が出てきたんだろう?

 少し気になるから、同情するフリして聞いてみようかな。



「そっか。大変だったんだね……。

 ところで、どうして冒険者になろうと思ったの? 話の流れ的にちょっと唐突に感じたんだけど」


「あー、そこ気になっちゃうよなぁ。……フローラには、絶対しゃべるなよ?

 あいつって、父親にべったりでしょ? だからきっと、そのうち自分も商人になると思うんだ。

 そしたら、護衛も必要になってくるわけで。なら、あたしが冒険者になって守ればいいじゃんって気がついたわけよ!」



 さて、本人の口から冒険者になった理由を聞けたわけだけど……何というか、信じられないくらいにフローラが起点の話だったね。

 だけど本心であることは確かなんだろうなー。


 語る表情が生き生きしてて、それが現実になるとまるで疑ってない顔してるもの。



「なるほどねー。何となくは分かったよ。

 だけど、冒険者になるの急がなければ、ケンカもしなくていいんじゃないかな?

 フローラが商人になってからとかさ」


「は? それだと遅いでしょ。

 有名な高ランク冒険者になっておかないと、あたしに頼んでくれないかもじゃん。

 あいつが『どうしても、ニコちゃんにお願いしたいのっ!』って、いってくるくらいじゃないとね~」


「あっ。ランクを早く上げたいのって、そういう……?」



 お、思わぬところで、彼女が冒険者ランクを上げたい理由が判明してしまったよ。

 分かってしまうと全然大したことなかったね。


 ……いや、あんな思い詰めた表情で言うことじゃないよね?

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