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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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商人の娘 3

「では、私はこれで失礼しますよ。予定が詰まっていましてね」


「まっ、話はまだっ……!」



 縋るようなお義父(とう)さんの言葉を無視して、副店長は席を立ってしまう。

 そして、数歩進んだところでこちらを見て……あ、目が合っちゃった。



「おお、これはアイリスさんではないですか! また当商会の護衛依頼を受けてくださったのですかな?

 いや、本日出発予定のキャラバンはなかったはず……となると、何かご入用ということですか。

 そういうことであれば、この私が(うかが)いましょう。なに、大抵のものは取り揃えておりますので心配無用ですよ!」



 うわ、見つかったと思ったらすぐに近寄って来たよ。

 というか、さっき「予定が詰まってる」とか言ってなかった? こちらを優先してくれるってこと……?


 いらないなー。美少女なら嬉しいけど、おっさんは求めてないんだよ。



「……この人と知り合いなのか?」


「う、うん。前に依頼でね」



 それに、この状況で話しかけるのはホントにやめて欲しかったね。

 二コラが聞いてこなかったら、百割無視してたよ。



「おっと、このようなところで立ち話とは……。私としたことが、配慮に欠けていました。

 さ、あちらに商談用の個室があります、詳しいことはそちらで。お連れの方もどうぞ、どうぞ……おや?

 レオノーラ殿達ではないか? ドワーフのお嬢さんに、それに……それ、に……っ!?」



 ペラペラと話していた副店長だったが、フローラを見た途端に固まってしまった。

 彼女を見てこの反応をするってことは、あの人の娘だって知ってるのかな?



「ど、どうしてフローラがここにいるんだいっ!? 私が伝えた予定では、数日後に戻ることになっていたはず……っ」


「……パパの知り合いって人が家にきてね。『今日、お父さんが帰ってくるよ』って教えてくれたの。

 だから、迎えにきたんだよ? ……ねえ。さっきの話、本当なの?」



 こちらに気が付いたお義父さんも話に入ってきたよ。


 それにしても、その知り合いって人はかなり親切な人みたいだね。

 わざわざ余計な事を伝えてこなければ、こんな重い空気も出来なかったのに。



「ぉ、おおっ! き、急用を思い出しましたっ。

 申しわけないが、ご用件は他の者にお願いします!!」



 そして、親娘(おやこ)の会話が始まって早々に副店長は逃げ出したね。

 逃げ足速いなー。流石、ワイバーン戦ではいつの間にか消えていただけのことはあるよ。



「本当、なんだ……」


「っ! ……そ、そう心配するんじゃない!

 お父さんはこの程度のピンチ、何回も乗り越えてきたんだよっ?

 だから全て私に任せて、フローラは安心して家で待っていなさい」



 なーんだ、よくある事なのか~、それなら大丈夫だね~。

 無理矢理作った笑顔にも見えるけど、きっとあれは余裕の笑顔ってヤツだよ。



「ニコラさんに……そちらは以前もこちらでお会いしましたね? アイリスさん、でしたか?

 お恥ずかしいところをお見せしました。本日は立て込んでおりますので、これで失礼します。

 ……フローラ、家へ帰ろうか」


「……うん」



 くたびれた中年男と、華奢で繊細な少女の背中が共に遠ざかって行く。


 あーあ、また連れて行かれちゃったよ。

 父親だからって、毎回美少女と帰るのズルくない?


 まぁ、帰っちゃったものは仕方ないし、こっちの娘に色々と聞いてみようかな~。



「えっと、色々と聞きたいんだけど。まずは……友達、でいいんだよね?」


「…………ああ」



 上の空という感じだったけど、一応返事はしてくれたね。

 凄く真剣に、二人が出て行った扉を見つめてるから「ボクの話なんて聞こえてないかも」って不安だったよ。



「そっか。でも、ケンカしてると何かと不便じゃない? 仲直りはしないの?」


「あぁ――んっ!? なんで知って……いや、さっきのやりとり見てたら誰でもわかるか……。

 仲直りするのは、あっちが謝ってきたらね……あたしは悪くないんだから」



 拗ねた表情も可愛いなあ~。……おっと、間違えた。

 じゃなくて、「彼女の反応を見るに、思ったより根深い問題なのかもしれないね」って、言いたかったんだよ。



「よかったら何があったか教えて――」


「ちょい待ち。話すのはいいけどさ、先に目的を済ませない?」



 目的……? あれ、僕たち何でこんなところに来たんだっけ?



「その顔、まさか忘れたの? はぁ。ハーピーの羽がもっと高く売れないか交渉しなきゃでしょ?

 とりあえず、あそこのカウンターで聞いてみるか」



 あっ、そういえばそんな目的があったんだった。

 どうでも良い事って忘れちゃうものだよね~?


 ということで、商会の人と交渉してみたんだけど、高く買い取ることは出来ないってさ。

 ……ん? 交渉したのはもちろん二コラだよ? 僕はやりたくないから当然だね。


 何でも、冒険者ギルドとの取り決めがあるらしくて、ギルドで提示された以上の値段では買い取れないみたいだよ。

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