表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
87/134

商人の娘 2

 様々な苦難を乗り越えて採取してきた薬草を納品し、依頼を達成した翌日。

 今日は冒険者ギルドではなく、とある建物が二コラとの待ち合わせ場所になっていた。



「ここならもっと高値で買い取ってくれるでしょ!」



 彼女が元気に宣言した"ここ"というのは、前に隊商護衛の依頼で訪れた商会のことだよ。

 要するに、倒したハーピーから手に入れた羽毛とかを売るために来たんだけど……うーん、個人的には気が乗らないんだよねぇ。



「やっぱり止めない? ギルドでも買い取ってくれるんだし、それで十分だと思うなぁ」


「……ここまできてなに言ってんのさ? あんただって、あの程度の金額じゃ納得できないでしょ?」



 ギルドには討伐報酬とは別に、モンスターから手に入れた素材を買い取る制度も存在している。

 なので、まずはそこで査定をしてもらったんだけど、普通の羽毛と変わらない金額――僕には相場なんて分からないので、ニコラ情報だけど――だったんだよ。



「(元々、売るために毟ってたわけじゃないから、いくらでもいいのに……)」


「ん? なにか言った?」


「え? あー、ええと……そ、そうだよねー? ハーピー強かったし、その羽なんだから、もうちょっとくらい高くてもいいよねー?」



 とはいえ、お金にするためと言って集めたのは僕だし、今更本当の理由を話す気にもなれないし…………うん。

 彼女のやる気を否定するのは良くないよ。やりたいようにやらせてあげる、それって大事だよねー。



「どうせ、他では売れないと思って足もと見たんでしょうけど、あたしはそんなに甘くないから。

 じゃあ、適当に誰かつかまえて話を――」


「ア~ちゃんっ!! やっと会いにきてくれた……えっ、どうしてニコちゃんが一緒なの?」



 商会を入ってすぐにあった、無駄に豪華なラウンジのような場所で話していたら、可愛らしい少女の声が聞こえてきた。

 アーちゃん? 何だったかな、その呼び方には聞き覚えが……あ、そうだ、フローラだよ!


 ……うん? それともう一つ、よく知ってるようで知らない名前も呼んでなかった?



「にこちゃん?」「あーちゃん?」



 声の主を確かめるよりも先に隣の幼女を見ると、彼女の方も僕の事を見つめていた。



「フローラと知り合いだったの?」


「知り合いってかっ…………。

 そ、そっちこそ、どうなのさ? あんたのことなんて、フローラから聞いた覚えがないんだけど」



 始め何を言いかけたんだろう?

 誤魔化そうとしてるし、何となく怪しいなぁ。



「むぅー。わたしを無視して、ふたりだけで楽しそうにしてる……」


「っ! いやだなぁー、無視なんてするわけないよぉ。

 むしろ、ここに来たのはフローラに会うためと言ってもいいくらいだって! あ、あははー」



 明らかな不機嫌オーラが漂って来たので、急いでフローラと会話することにした。


 そこにいるのは、数日前にこの場所で出会った女の子……のはずだ。

 キラキラと(つや)やかな深緑のツーサイドアップは記憶通りなんだけど、何だか今日の笑顔は怖い……。


 これは、フローラのご機嫌取りが最優先だね。



「……だよね~。アーちゃんとは遊ぶ約束してたもんね~?

 まさか、忘れてた……なんて、ありえないよね~?」


「約束? うっ、うん! 約束してたよねー。……したかな?

 えっとぉ、ご、ごめんね? あれから色々とあってさ~、なかなか来られなかったというか……」



 話の流れでテキトーに頷いちゃったよ。

 ま、まぁ美少女がそう言うんだもの、きっと間違いないよ。うんうん。



()()()()ねぇ。

 悪いけど、あたしたちは仕事でここにきたの。いつまでも子供みたいに遊んでられないからね」



 ニコラ、何で遊ぶってところ強調したの? それ完全に煽ってるじゃん……。


 とはいえ、これはこれで仲良しなのかも? ……うん? 仲良し……友達、ケンカ……。

 あっ、そういえば。フローラは冒険者になった友達とケンカ中とか、誰かが言ってたよね?



「っ!! ……ニコちゃんは冒険者になったんでしょ?

 アーちゃんはわたしと遊ぶから、冒険でもなんでも一人で好きに行ってきたら?」


「な、なら、アイリスもあたしと一緒に冒険だねっ。

 なんたってこいつは、あたしの仲間なんだからなっ!」



 なるほどね。どうやら二コラがその友達ということで正解っぽいよ。

 ……友達なら、僕は二人の邪魔すべきじゃないかー。しばらく聞き手に専念しよーっと。



「……ふーん、そうなんだぁ。

 アーちゃんのいう"色々"って、二人で楽しく冒険者してたってことなんだぁ……へー」



 と思った矢先なのに、こっちに話が来たよ。うわー、不機嫌オーラが成長していくなー。

 この状況を何とかしてくれる人、誰でもいいから募集中ですぅ、何とかしてくださーい!


 ――という祈りが通じたのか、この話は中断することになった。



「お願いしますっ!!!」



 突如、悲鳴にも近い男の大声が響いた。

 反射的に声がした方を確認すると、ソファーに腰掛けてた二人の男が見えた。


 片方は確か……そうだ。前に隊商護衛の依頼をしてきた商人さんだね。

 もう一方の頭を下げ過ぎて、テーブルと額がくっ付きそうな中年男は……どこかで会ったことがあるのかな? 見覚えある気がするよ。



「パパ……?」



 ん、それそれ! フローラの父親――お義父(とう)さん。確か彼女と会った時にご挨拶した気がするね。

 印象が薄い人だったからなのか、ほとんど記憶にないけど。



「金貨百でもいいのですっ! 融資をっ、何卒融資をお願いします!!」


「担保になりそうなものは残ってないのですか? 何かしら提示いただければ、私共も最大限配慮いたしますので」


「家も家財も、価値があるものは既に担保にしていましたから……」



 んー? どんな事情があるのか分かんないけど、お義父(とう)さん必死そうだね。

 あそこまで切羽詰まってる様子はなかったような……?


 前はそんなこと……って、よく考えたら彼の事なんて大して知らないんだから、僕に分かるわけないじゃんね。



「私に提示できるものはございません。ですが今日までの取引――その実績を信用の材料として頂きたいのです」


「……ヒューベンタール殿、頭を上げてください」


「で、では!」


「となれば難しいですな。

 非常に残念ですが、どう説得されましてもこの決定が変わることはないでしょう」


「っ!!」



 あーあ。お義父(とう)さん、断られたショックで言葉も出なくなっちゃったよ。

 可哀そうだね。


 それにしても、商人さん偉そうじゃない? あんな人だった?

 そういえば、自己紹介の時にここの副店長? とかなんとか言ってた気がするね。


 てことは、そこらの平商人よりは偉いのかなぁ。



「心情的には、あなたに同情しているのですよ?

 尾のないワイバーンに襲われたということですが、私も最近似たような経験をしましたからね。

 アレはどうしようもない、まさに空より降りかかった厄災(やくさい)といえるものでした……」



 "尾のないワイバーン"? ふーん、またワイバーンね。

 意外と遭遇率高いものなんかな? この世界の人は大変だなー。



「そうなのですっ! アレは天災も同然っ。ですから、資金さえ融通(ゆうずう)して頂ければやり直すことは容易なのです!

 いえっ、これまでに(つちか)った経験を活かし、挽回(ばんかい)するだけでなくさらには」


「――ですが。私は、全ての荷を失うという、最悪の結果は回避しました。

 (ひるがえ)って、あなたはどうだったでしょう?」


「それは……運が悪かったとしか」



 どうやら、彼の方は積み荷を全部やられたみたいだね。

 まあ、ちょっと炎を吐かれたら全て燃えちゃうからね。そういうこともあるよ。



「運というのも、大事な要素だとは思いますがね。

 しかし、今回の結果を招いた原因は、護衛の質にあるのではないですか?」


「!? な、んのことですか?」



 明らかに声が動揺してるよ。

 何か思い当たるフシでもあるのかな?



「近頃は、ならず者同然な人間を雇い費用を削っていると、そのような噂が私の耳にまで届いておりましたよ?

 優秀な冒険者を雇っていればワイバーンを退治できる――とまではいいませんが、最低限の荷は確保出来ていたかもしれませんな」


「それはっ……! ですが……っ、ぅ…………」


「この事態はあなたの不手際でもあるのです。

 何にしても、商売は自己責任というもの。すっぱりと諦めることをお勧めしましょう」


「…………」



 お義父さん、完全に黙ちゃったね。


 対する副店長は、何かキリっとした顔してるよ。

 もしかして、『フッ、決まったな……』とか思ってたりするのかなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ