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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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酒場の看板娘達 4

「ほ、本当に、あなたもこの街にきてたのね…………」



冒険者ギルドでニコラと別れた後、一昨日可愛いエルフ達を発見したあの酒場を訪れていた。


それで、今の言葉は入店した僕を迎えてくれたカルラのものだね……って。

えっ、何故か複雑そうな表情で酷い事を言われたんだけど、何か悪い事した?



「もしかして、来ちゃイケなかった……?」


「う、ううんっ! そんなことはないのよっ。

ただ、ここでは会いたくなかったというか……ちょっと、ばつが悪いというか……」



否定してるように見せかけて、「会いたくない」ってはっきり言ったよね?

……い、いや、そんなことではめげないけどねっ。何でかと言うと――



「でもボクは、ここで会えて嬉しかったよ?

その服凄く似合ってて、もし見れてなかったらと考えたら悲しくなるもの」


「なっ、なにいって~~っ! もぅ、からかわないでよ……。

さ、さあ、席へ案内するわね。こっちよ」


「は~い」



誘うようにひらひらと揺れる短いスカートの後をついて行く。


彼女も、ラドミラやアンジェと同じ可愛いデザインの制服を着てるね。

昨日は厨房から出て来なかったけど、こうして接客もするみたいだ。



そして案内されたのは隅っこの席。要するに昨日と同じ場所だよ。

早くも僕の指定席として覚えてくれてるのかな~。



「注文は決まってる?」


「んー、特に決めてはないんだけど。

昨日の料理美味しかったから、カルラが作るものだったら何でもいいかな」


「ふ~ん。い、いいわよ?

けれど、昨日よりもっと美味しくなってるんだからっ。期待して待ってなさいよね!」



カルラは注文を聞くと、見るからに上機嫌な様子で店の奥へ姿を消した。

おそらく、そこが厨房のはずなので、彼女自身が本当に作ってくれるのだろう。


正直なところ、自分の舌に自信ないから、客観的にどれくらいの味かなんて判断出来ないけど。

まあでも、美少女が作ったものなら何でも美味しい、ってことでいいよね~。




***




「ど、どうだった? ……うまくできていたかしら?」



食後の美少女観察タイムを満喫していると、僕のテーブルにカルラが来てくれた。

話し相手になろうと来てくれたのかな? これは絶対愛されてるよ! 嬉しいな~。



「うん。期待した通り、凄く美味しかったよ~」


「そ、そう? ……ふぅ。ま、まあっ、あたしが作ったんだもの、当然よね!」



平静を装おうとしてるのかもしれないけど、色白な頬が紅潮してるから喜んでいるのが分かりやすいね。

面白くなってきたから、もうちょっと続けてみようかな。



「何というか、たまにピリッとするのがクセになる味だよね。あれが隠し味? ってものなのかな?」


「ええそうね。それ、あたし達の国ではよく使う木の実なの。けれど、人間はあまり使わないのね?

ここはわざわざ取り寄せてるみたいだったから、使わせてもらったのよ」



どうやらこの店、異国の料理を出すタイプのところみたいだ。あまり気にしてなかったから、気付かなかったよ。

もしかすると、そういったところで彼女の料理を気に入ったのかもね。



さてと、機嫌も良くなったみたいだし、そろそろ気になっていた事を聞いてみようっと。



「へー、あれは特別なものだったんだね。

……ところで、さっき言ってた『ばつが悪い』って、どういう意味なの?」


「うっ。……聞こえてたの? そ、その……、アイリスが悪いということではないのよ?

ただ、あの街を出る時、『あたし達の国で待ってるわ』みたいなことを言っちゃったでしょ……?

だから、ここで顔を合わせるのはちょっと気恥(きは)ずかしかったのよ……」



そう言われると、彼女達三人を見送った時にそんな事を言っていた気がするね。

でも、仕方がない理由もあるみたいだし、そこまで気にすることはないと思うけどなぁ。



「そんな事、気にしないでもいいのに。だって、お金が尽きちゃったなんて、どうしようもない事なんだしさ」


「ええ、かもしれないわね……。けれど、あなたには恥ずかしいところばかり見せてるから、これ以上は……って、待って?

あたし達の路銀が尽きたこと、なんであなたが知っているの?」


「……え?」



なんでって、それはアンジェに教えてもらったから……あっ、そうだった。

これは秘密だったね、忘れてたよ~。



「な、なんでかなー。ふしぎだねー?」


「……あの子が話したのね? もおっ、おしゃべりなんだからっ!

そ、そうよっ。もう取り繕う必要もないから正直に話すと、そんな恥ずかしい理由で働いてるだなんて知られたくなかったのよ……っ」


「ご、ごめんね? 変なこと言わせちゃって……」


「ううん、いいのよ。ふふっ……むしろ、あなたに全部話したらスッキリしたから。

あなたの言う通り、気にする必要なんてなかったわね」



この時見せてくれた、ふにゃっとした柔らかな表情は今までで最高の笑顔だと思えた。

ラドミラを助け出した時の笑顔とかも可愛くて、良かったはずなんだけど……どうしてかな?


一番自然だなって、思ったんだよね。



「…………」


「? あっ、そろそろ仕事に戻らないと。

追加の注文はあるかしら? あなたのなら優先させるわよ」


「ぇ、ええとー……今日はもう帰ろうかな。また来るね」


「ええ、いつでもきて。待ってるから」



満足した気分で席を立つ。

こうして僕は、この店の常連となり日課のように通うことになるのだった…………。



「――おっと。ぁ、すみません……」


「っ!! ……危ねぇなあっ、どこ見て――ほぉ?」



せっかくいい気分で終わろうとしてたのに、何?

……どうしてだか、こういう時に限って上手くいかなんだよねぇ。


大した事ではないけど、ちょうど入店してきた男にぶつかりそうになってしまったよ。

ま、気分が良くなってフラフラ歩いてた僕に原因があるのかもしれないけど……それは考えないでいこう。



そんなことよりも、男の反応がよくない方向に向かってる気がするよ。

僕の顔を見た後、全身を舐めるように観察して……うん、これはダメなパターンだね。


早くフードを被り直して逃げよっと。



「おいおい、悪くねえ面してんだ隠さなくてもいいだろ? 詫びに酌くらい――」


「どうかされましたか?」


「……これは旦那、もうお着きでしたか。いやなに、丁度いいところに……どこ行った?」



男が話しかけられた隙をついて脱出できたよ。

けど、あの旦那って呼ばれてたおっさん、何となく見覚えがあるような気がするんだよね……誰だったかな?

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