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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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パーティ結成 8

「アイツら……っ! ま、まだ追ってきてんのっ!?」


「うん、ずっと真上を飛んでるね。『絶対逃がさないぞ』って、声が聞こえるようだよ」



 ニコラが走る速度に合わせて並走しながら、三人称視点で観察した上空の様子を答える。


 木々が邪魔となる林の中に入れば追いかけるのは諦めるかも、という彼女の提案を実行してみたけど、上手くいかなかったね。

 木の密度が薄いからダメなのかな? もしこれが森林浴だったら、緑の間から見える青空が気持ち良いのに~。



「……っ。み、みぎ! 右にっ、曲がるよ!」



 息切れにより途切れ気味な言葉に従い、次に見えた比較的立派な木の根本で右方向へ曲がる。

 空から見れば木の葉が最も視界を遮るであろう地点で進行方向を変えて、どこに行ったのか分からなくする作戦だった。



「んーと、やっぱりダメそうだね。すぐに真上をキープされちゃうよ」



 なんてことをさっきからやってるけど、僕達がジグザグに移動しては上空のハーピー達もついて来るっていう流れを何度も繰り返し中だね。

 だからきっと、撒くのは無理なんだろうなー。



「な、なあ! あそこのアレ……っ。ど、洞窟じゃないっ?」


「どれどれー? ホントだ、洞窟っぽいね」



 彼女が指す方を見れば、露出した山肌に大きな穴が開いている。


 洞窟……洞窟といえば探検。なるほど、一緒に洞窟探検しようってお誘いだね!

 見た目だけじゃなくて、中身も子供っぽいだなんて可愛い娘だな~。



「あ、もしかしてただの洞窟じゃなくて、ダンジョンだったりするのかな?

 宝箱とか置いてあったりしてね。なくてもいいけど、そういうのあったら嬉しいよね~」


「は、はぁ? あんたが、なに言ってるか……、さっぱりだけどっ。

 とにかく、あそこに非難するよ! 」



 ……うん。この反応、何か勘違いしてたみたいだ。

 勝手に盛り上がってたと思うと、とても悲しくなるね……。



「ひ、非難のためね……。もちろん、いいよ~」



 そこからは無言でダッシュだ。

 確かに、狭い洞窟へ入ってしまえば、空を飛べるというハーピーの優位性が崩れるものね。


 それにしても、彼女達は何で襲って来ないのかな?

 ――といった疑問には、すぐに回答が提示されることになった。



「やっと、出てきやがったナァ」



 洞窟の入口を目前とした僕達の前に、五匹のハーピー達が降下して立ち塞がった。


 林と洞窟の間にある数十メートルは木が何も生えてないから、そこを狙われたみたいだね。

 今の言い方からして、こうやって林から出るまでずっと待ってたのかな。



「後ろもふさがれた!?」


「当たり前だロ? ココが哀れな獲物の()殺場なんだからヨォ」



 ニコラの言うように、僕達が林に戻れなくするために背後へ五匹降下して来た。

 更に付け加えるのなら、上空にはまだ十数匹のハーピー達が待機しており、どこに逃げても捕捉可能な陣形ができている。



「前と後ろ、どっちに行っても同じなのね。だったら……決めた。

 ニコラ、前に進もうよ。どっちに進んでも同じなら、さっき決めた通り洞窟に入ろう」


「あ、あぁっ、洞窟ねっ!? 洞窟に入れば安全!! そ、そうだなっ!?

 い、行くぞー……やってやるぞー――っ!? ま、待ってっ!? だから心の準備がまだなんだってっ!?」



 一向に動く気配がないニコラの手を取り、強制的に走り出す。


 これで手を繋ぐのは二度目だ。

 幼い()特有の柔らかさと、体温の高さが心地いいな~。



「破れかぶれカァ? ただの馬鹿ダ――ッ! 避けロ!!」


「<アイスショット> んー、全部は当たらない?」


「「「ガハッ!?」」」



 五つの氷の(つぶて)を前のハーピーに向けて発射するが、そのうち二匹には避けられてしまった。


 命中したのは生命反応がなくなってるので、威力はこのままでいいかな。

 でも当たらないんじゃ威力とか関係ないし……問題は速度ってことね。



「よくモ仲間オォッ!!」


「――おっと。速度、速度を上げるには……どうすればいいかな?」


「グッ!?」



 攻撃を避けた方のハーピーが、すぐに体勢を立て直し反撃してきたので、バックラーを叩きつけることで対応しておく。

 ちなみに、ダガーを使わないのは右手がニコラと繋がってるからだね。


 えっ、戦闘中なんだから手は離せって……?

 嫌だよ。たとえ切り落とされても離さないよ。



 そして、同じく攻撃を避けていたもう一体には……



「うりゃっ!」


「グッ……! だが、まダダッ!!」


「片手だと力がうまく入らないんだけど!」



 ニコラは右手に握るハンマーで殴るが、鳥に似た腕で防御され決定打にはならなかった。

 隣から聞こえた苦情は、無視しておこう。


 これで、前にいた五体は対処出来たわけだけど、まだまだお代わりがいるんだよねー。



「なんダ、あの詠唱時間ハ……ッ!

 一斉に攻撃を仕かけロ!! お前タチのスピードであれバかわせるゾ!!」



 しかも、上空からすぐに次の指示が飛んで来るし。

 ブンブン飛び回られると狙い辛くなるからやめて欲しいなぁ。



「あともうちょっと……っ、ホントにあとちょっとなのにっ……!」



 ニコラの絞り出すような言葉の通り、洞窟までの僅か数メートルが間に合いそうにない。


 魔法で打ち落とそうにも、さっきの攻撃を見て警戒されてる状況だと何匹かには絶対避けられるし。

 そうなると、何かしらの攻撃は受けることになる。


 僕は怪我をするかどうかも分からないけど、二コラは重症かもしくは死ぬかもしれないね。

 ――ま、いいや。彼女頑張ってたし、これで死ぬとしてもいい人生だったと思えるよね~。



「行ってっ!! 一瞬だけでも時間をかせぐから!!」



 えっ、ちょっと待ってよ。そういうのは僕の役目じゃないの?

 というか、せっかく最期になるんだから「ずっと一緒にいてほしい」とか、言ってくれたら良かったのに……僕だけ逃げてもねぇ。



「諦めたカ! 望み通り、お前からヤッてやルッ!」



 なんて思っても、説得する時間が残ってないし。

 ……はぁ、仕方ない。一応何かしらは試してみるかぁ。



「とりあえず、小さくすれば速くなったりして? 後はまぁ、多ければ避けにくくなるでしょ。ってことで、<アイスショット>」


「避け――ぐッ、ガッ!?」「ぎゃァ!!」「ガハッ!」



 その一つ一つが高速となり、さらには数を増した氷の(つぶて)がハーピー達を襲う。

 メンドーになって、五十発くらいテキトーにばら撒いたけど、どうだろう?



「どんどん落ちてきて、みんな死んでる……お、もしかしてイイ感じだった?

 あーでも、六匹残ったね。全員は無理かぁ」


「ッ!?!? ……テ、撤退だ!! 各自離脱を最優先しロッ!!」



 指揮官ポジションらしいハーピーが指示を出すと、呆然と地上を見下ろしていた他の五匹も合わせて、彼女達はどこかに飛んでいった。


 貫通するまでの威力は持たせてないから、後ろで待機していたのが生き残っちゃったね。

 んーでも、結果としてはみんな逃げたんだし、それくらいはいっか~。

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