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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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パーティ結成 7

 はい、ということでね。

 今回もニコラと僕の楽しいパーティ活動の時間だよ。


 本日の依頼は、とある薬草の採取。

 何でもその薬草は街の東にある山に自生するものらしく、軽い山登りを楽しんでるよ。



「山登りかぁ。いつ以来になるのかな? んー……、全く思い出せないから、それくらいしてないのは確定だね。

 あ、そういえばニコラはここ来たことあるの?

 って、薬草がここに生えてること知ってるくらいだから、あるに決まってるか~」



 特に意味のない独り言に続けて、頭に浮かんだ質問を前を歩く幼女に投げかけてみる。



「ううん、ないよ。薬草のことは、ギルドで聞いたってだけ。

 実際に見たことがあるわけじゃないから」


「そうなの?」



 ドワーフといえば山ってイメージだし、もしかしたらこの辺り出身なのかもって思ったんだけど、違ったみたいだね。

 ということは、詳細な位置までは分からないってことか……。


 彼女が知ってるものだと思ってたから、探す気ゼロだったよ。



「まあ、安心してよ。色んな人に聞き回って、どこら辺に生えてるかは大体把握できたから」


「おーすごい。しっかり準備してくれてたんだね、ありがと~。

 じゃあ、ボクはついて行くだけでも問題ないね~」



 やっぱり、ドワーフと言えば山、山と言えばドワーフだね!

 彼女に全てお任せしておけば、簡単に依頼クリアだよ。



「ふふん、任せておいて。この道をまっすぐ進めば時期に見えてくるよ。……たぶん」



 ん? 今なんか、小さく不安な一言を言わなかった?

 ま、まぁ大丈夫だよ。きっと何とかなるよ、うん……。


 こうして、若干の不安要素がありつつも、楽しい登山が始まるのだった。




 ***




 山からの景色を眺めたり、幼女との会話を楽しみながら進むこと数時間。

 たどり着いたのは、露出した山肌が天然の壁を形成する切り立った崖だった。


 マップウィンドウの表示から考えれば、大体山の中腹辺りだね。

 で、この先はどうするのかな? 崖を登るとか……?


 ま、まさかね~、そこんなことあるわけないよ~。



「あった! アレ、あの花が依頼のあった薬草だ!」


「え、ホント? あの紫色の小さいのがそうなの? ふーん、あんまり薬草には見えないね」


「ふぅ、よかったぁ。思ってたよりも遠いから、どっかで道を間違えたんじゃないか不安になったわ……」



 崖が見え始めたくらいから明らかにニコラの口数が減ったから、ハイキングからロッククライミングに変わるのかと心配しちゃったよ~。

 でもま、見つかったんなら何も問題ないね。



「この花を摘めばいいんだよね。えっと、どれくらい必要なんだっけ?」


「そんなに多くなくていいはずだよ。……たしか、この袋に入るくらいで十分って話だったな。

 ――あ、待った。根まで抜かないように注意しろって依頼にあったよ。根が残ってればまた生えてくるんだってさ」



 前に受けた採集依頼ではそんなこと言われなかったよね?

 なかなかにメンド……細かい依頼に当たったみたいだよ。



「えーっと? ここら辺を握れば丁度良く千切れる……のかな? ん、しょっ――ット!?」


「おいおい、言ったそばから全部抜くなよ……。

 アイリスって意外と不器用、ていうか馬鹿力だよな。……見た目、非力そうなのに」


「あ、アハハー。思ったよりも簡単に抜けるんだねー。

 次からは、ダガーで切り取るようにするよ……」



 鎌として使うには不向きな形だけど、切れるなら何でもいいよね。

 ということで、試し切りっと。うん、サクッと切れた。



 さて、僕の話は置いておくとして、だ。

 注目すべきは彼女の方だと思うんだよね。


 再び目を向けた先に見えるのは、小さな花を熱心に摘み取る少女の姿だ。

 それはどう見ても幼女がお花畑で遊ぶ光景であって、薬草摘みなどという無粋なものとは思えなかった。



「こんなものでいいのかな? 薬草ってよくわから……な、なんだよ? あたしをジッと見つめて、なにか用でもあんの?」


「ぁ!? ん、んーと? う、上手いなぁ~と感心しててねっ?

 力加減とか参考にさせてもらえたらな~、って見てただけだよ?」



 ホントは、薬草摘みよりも花かんむり作りの方が似合いそう、とか考えていたことは内緒にしておこう。

 彼女は子供扱いが嫌いみたいだからね。



「……絶対、変なこと考えてるでしょ?

 ま、いいけどね、なに考えても。手を動かしてくれるならさ」



 ふんっ、という感じにそっぽ向かれちゃったよ。

 やっぱり仕草が小さな女の子のそれで、最高だね!



 ――というように、半分遊びながらも必要な分の薬草を集め終わった頃。

 遠くの空に、鳥と呼ぶには少しばかり大きな影を発見した。



「よし、これくらいあれば十分だな。

 じゃあ山を下りるか……って、今度はなんか空見つめてるし。どうかした?」


「大した事じゃないんだけど、またモンスターがいるなぁーと思ってね」


「モンスター!? そ、それはたいしたことっ!! モンスターが近くにいるのは重大なことだからなっ!!

 しかも、空中にいるってこと? あたしの攻撃とどかないじゃん……。お願い、せめてあまり強くないのに――っ?!?!」



 昨日の猪がトラウマにでもなってしまったのか、隣からはかなりの慌てようが伝わってきた。


 とは言っても、慌てるのはモンスターの種類を確認してないからでいいと思うんだよね。

 だってアレ、そんなに怖い相手じゃないもの。



「まあまあ、まずは慌てないで相手を確認してみてよ。

 あ、見えないかな? あそこに飛んでるの何だけどね。

 えーと、名前は……何だったかな? 鳥っぽい、何というか鳥人間みたいな――」


「ハーピーじゃん!!?」



 そう、それだよ~。確かに、ノラ達もハーピーとか呼んでたね。


 顔と胴体が人間みたいで、他は鳥って感じのモンスター。

 また、全員女の子に見えるけど、僕には分からないだけで男も混じってたりするのかな?



「それそれ、そのモンスターだ~。ね? 大した事なかったでしょ?」


「やっぱ、たいしたことあるじゃん! ハーピーはCランク向けだよっ?? あたしらの敵う相手じゃないからっ!!」



 え、そうなの? 前に街道で会った時は大して強く……そういえば、あの時は周りの皆がBランクだったよ。

 だから、弱かったように感じたのか~。



「Cランクかー、それは確かに強そうだねー。でも、きっと大丈夫だよ。

 あっちは全然気付いてないみたいだし、今のうちに隠れたらやり過ごせるんじゃない?」



 ハーピー達との間にはかなりの距離があるので、あちらは僕達を発見出来ていないようだ。


 こっちからすると、他に何もない空中に人間サイズの物体が浮かんでるんだから目立つね。

 ……僕が気付けたのは、生命反応が集まってたからだけど。



「気づかれてないとはいっても、あんたはもう少し危機感をもったほうがいいと思うけどね……。

 だけどまぁ、あんたが先に見つけてくれたから、なんとかなりそうだわ……ありがと。

 さ、さあ、急いで隠れるよっ!」


「うん、そうだね~。っとその前に、草を切ったり土を触ったりして汚れちゃったから、一旦綺麗にしておこうかな。<クリア>」



 魔法が発動し、僕とニコラに付着していた汚れは即座に消え去る。

 ――と同時に、それは本来の意図以外の効果をもたらしていた。



「なっ……!?」


「あれ? ハーピー達、こっちに来てる? なんで気付かれたんだろうね?」


「このアホ! あんたが魔法なんて目立つもの使ったからでしょ!?

 と、とにかく! ここは上から丸見えだし……あっちの林に逃げ込むよっ」



 あ、そうだった。魔法って、使うと魔法陣とか無駄なエフェクトが出てくるから、目立つものだった。

 最近は隠密や透明状態で使ってたおかげで、そこら辺あんまり気にしなくなってたよ~。

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