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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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パーティ結成 5

 ゴブリン達を一掃したことで、ドデンと鎮座する塊だけが後に残された。

 う~む、近くで見ると……なおさら亀だなぁ。


 ずっと閉じこもったままだけど、生命反応はあるから生きてはいるみたいだね。



「それじゃあこの亀倒して、終わりにしちゃおっか」


「え゛、やるの? 本気? スタークトータスはこっちから手を出さなければ無害だしなぁ。

 放っておいてもよくない?」



 なんだ、モンスターにも無害なのとかいるのね。

 てっきり、見つけたら絶対殺さないといけない、みたいな考えが一般的なんだと思ってたよ。


 となると依頼はクリアしたも同然だし、もう一つの目的がどうだったか聞いておかないとね。



「へー、そうなんだ。知らなかったよ。

 だったら、ゴブリンの討伐証明を回収するだけでいいね。

 それで……ボクは合格になるのかな? このままパーティ組んでくれる?」


「ぁ、あぁ、そうだな……。あんた――アイリスも、なかなかやるじゃん……っ?

 だから…………ま、そういうことだよ……」



 短いながらもその言葉には、僕を認めてくれたと確信させる響きがあった。


 とりあえず、スタートラインに立てたというところかな。

 ん? 何のかって? それはもちろん、幼女攻略道のだよ~。


 いやぁ~、大変な道のりになりそう――



「な、なぁ? ……あたしはどう、かな?」


「んん? どう、って?」


「そ、そりゃあ。アイリスから見て、あたしはどうだったか……って、ことだよ……」


「あ、うん。もちろん、ニコラもいい感じだったよ。

 弓を持ってるゴブリンを先に倒したり、戦闘中も冷静だったでしょ? アレ、頼もしかったな~」



 とりあえず褒めておくのが正解だよ。きっとね。

 というかこれ、もうデレ期に入ったと言っても過言じゃないかも?


 フフフ、幼女とお楽しみできる日も意外と近いね!



 ……って、あれ? この生命反応、こっちに近づいて来てるような……。



「~~っ! へ、へぇー、そう、なんだ~。まぁ、当然といえば当然だけどねっ!

 あたしにかかればこの程度――どうかした? 遠くの方をじっと見て……まさか!?

 まだゴブリンが残ってたとか……っ!!」


「どうだろうね。たぶん、ゴブリンではないと思うけど、何かがこっちに来てるみたいだよ」


「なにかっ!? なにかって、なにっ!! ……ち、違う違う。こういう時こそ落ち着いて……そうだ!

 何があるかわからないから、そいつの裏に隠れて様子をみようっ」



 そう言うと、彼女は僕の手を取って甲羅の陰へ連れて行く。


 ふむふむ、これは……小さくて可愛い手だなぁ。

 幼女だ幼女だって思ってはいたけど、想像通りのぷにぷに感だね~。



「……たしかに、何かがきてる……。だけどあれ、人間じゃないか?」


「ぁあ、ホントだー、ただの人間だねー」



 なんだ、モンスターじゃないのかぁ。

 見るからに恐ろしいヤツだったら、恐怖に震えるニコラを抱き締めたり、色々する口実になったのにね。


 ……いや、待って。あの先頭を走る娘は……それに、後ろにいるのだって…………。

 どうやら、まだまだ終わりではないみたいだ。



「ねえ、あの人なんか見覚えない? それに、なんで一直線にこっちへ来るんだろうね?」


「見覚えっていわれてもなぁ、遠くて朧気(おぼろげ)にしかわからんし……。

 んー、ピンク髪なのか……? で女かな? って、あの女じゃん!?

 アイツらもきてたのか……」



 そう。こっちに向かって来てるのは、ギルドでニコラのパーティ参加を断った人達だ。

 しかも――



「かなり慌ててる? ……待って、後ろにいるのって!?」


「うん。すごく大きな(いのしし)? みたいなのに追われてるね」


「ワイルドボウかよっ! アイツら下手にちょっかいでもかけたのか!?

 いや、不意に遭遇したってことも……」



 わいるど……え、なに? と、とにかく、新しいモンスターが出たってことだけ分かれば問題ないね。

 彼女――確かリーゼって()が先頭で、それに二人の男が続く形で、モンスターからひたすら逃げてるみたいだ。


 ん、あれ? 彼女達は三人パーティだっけ? まあいいか、そこは重要じゃないし。



「どうする? 逃げてるってことは、彼女達じゃ勝てない相手だって事だと思うけど、助けに入ったりするの?」


「……ワイルドボウは、Dランク推奨のモンスターだよ……?

 あたしらに、なにができるっていうのさ……」



 ほぉ、Dランクねぇ。それって……強いの? 弱いの?

 よくわからないけど、僕達のランクから考えれば格上って事になるから、戦闘は避けるのが無難なのかな。



「そっか。なら、このまま隠れてるしかないよね」


「…………ぁぁ」



 弱々しい声で頷いたニコラは、何とも神妙な表情で俯いている。


 隠れてるのは不満だったかな?

 いや、あのモンスターが怖くて身体が(すく)んじゃったのか。


 せっかく怖いモンスターが来てくれたんだし、元気のない幼女を触る方法でも考えようかなぁ。

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