パーティ結成 5
ゴブリン達を一掃したことで、ドデンと鎮座する塊だけが後に残された。
う~む、近くで見ると……なおさら亀だなぁ。
ずっと閉じこもったままだけど、生命反応はあるから生きてはいるみたいだね。
「それじゃあこの亀倒して、終わりにしちゃおっか」
「え゛、やるの? 本気? スタークトータスはこっちから手を出さなければ無害だしなぁ。
放っておいてもよくない?」
なんだ、モンスターにも無害なのとかいるのね。
てっきり、見つけたら絶対殺さないといけない、みたいな考えが一般的なんだと思ってたよ。
となると依頼はクリアしたも同然だし、もう一つの目的がどうだったか聞いておかないとね。
「へー、そうなんだ。知らなかったよ。
だったら、ゴブリンの討伐証明を回収するだけでいいね。
それで……ボクは合格になるのかな? このままパーティ組んでくれる?」
「ぁ、あぁ、そうだな……。あんた――アイリスも、なかなかやるじゃん……っ?
だから…………ま、そういうことだよ……」
短いながらもその言葉には、僕を認めてくれたと確信させる響きがあった。
とりあえず、スタートラインに立てたというところかな。
ん? 何のかって? それはもちろん、幼女攻略道のだよ~。
いやぁ~、大変な道のりになりそう――
「な、なぁ? ……あたしはどう、かな?」
「んん? どう、って?」
「そ、そりゃあ。アイリスから見て、あたしはどうだったか……って、ことだよ……」
「あ、うん。もちろん、ニコラもいい感じだったよ。
弓を持ってるゴブリンを先に倒したり、戦闘中も冷静だったでしょ? アレ、頼もしかったな~」
とりあえず褒めておくのが正解だよ。きっとね。
というかこれ、もうデレ期に入ったと言っても過言じゃないかも?
フフフ、幼女とお楽しみできる日も意外と近いね!
……って、あれ? この生命反応、こっちに近づいて来てるような……。
「~~っ! へ、へぇー、そう、なんだ~。まぁ、当然といえば当然だけどねっ!
あたしにかかればこの程度――どうかした? 遠くの方をじっと見て……まさか!?
まだゴブリンが残ってたとか……っ!!」
「どうだろうね。たぶん、ゴブリンではないと思うけど、何かがこっちに来てるみたいだよ」
「なにかっ!? なにかって、なにっ!! ……ち、違う違う。こういう時こそ落ち着いて……そうだ!
何があるかわからないから、そいつの裏に隠れて様子をみようっ」
そう言うと、彼女は僕の手を取って甲羅の陰へ連れて行く。
ふむふむ、これは……小さくて可愛い手だなぁ。
幼女だ幼女だって思ってはいたけど、想像通りのぷにぷに感だね~。
「……たしかに、何かがきてる……。だけどあれ、人間じゃないか?」
「ぁあ、ホントだー、ただの人間だねー」
なんだ、モンスターじゃないのかぁ。
見るからに恐ろしいヤツだったら、恐怖に震えるニコラを抱き締めたり、色々する口実になったのにね。
……いや、待って。あの先頭を走る娘は……それに、後ろにいるのだって…………。
どうやら、まだまだ終わりではないみたいだ。
「ねえ、あの人なんか見覚えない? それに、なんで一直線にこっちへ来るんだろうね?」
「見覚えっていわれてもなぁ、遠くて朧気にしかわからんし……。
んー、ピンク髪なのか……? で女かな? って、あの女じゃん!?
アイツらもきてたのか……」
そう。こっちに向かって来てるのは、ギルドでニコラのパーティ参加を断った人達だ。
しかも――
「かなり慌ててる? ……待って、後ろにいるのって!?」
「うん。すごく大きな猪? みたいなのに追われてるね」
「ワイルドボウかよっ! アイツら下手にちょっかいでもかけたのか!?
いや、不意に遭遇したってことも……」
わいるど……え、なに? と、とにかく、新しいモンスターが出たってことだけ分かれば問題ないね。
彼女――確かリーゼって娘が先頭で、それに二人の男が続く形で、モンスターからひたすら逃げてるみたいだ。
ん、あれ? 彼女達は三人パーティだっけ? まあいいか、そこは重要じゃないし。
「どうする? 逃げてるってことは、彼女達じゃ勝てない相手だって事だと思うけど、助けに入ったりするの?」
「……ワイルドボウは、Dランク推奨のモンスターだよ……?
あたしらに、なにができるっていうのさ……」
ほぉ、Dランクねぇ。それって……強いの? 弱いの?
よくわからないけど、僕達のランクから考えれば格上って事になるから、戦闘は避けるのが無難なのかな。
「そっか。なら、このまま隠れてるしかないよね」
「…………ぁぁ」
弱々しい声で頷いたニコラは、何とも神妙な表情で俯いている。
隠れてるのは不満だったかな?
いや、あのモンスターが怖くて身体が竦んじゃったのか。
せっかく怖いモンスターが来てくれたんだし、元気のない幼女を触る方法でも考えようかなぁ。




