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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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パーティ結成 4

 そうして、ゴブリン達のすぐ傍に到着した。

 あと数歩でダガーが届く距離にいるというに、ゴブリン達は「ギャー! ギャー!」とか「デテコイ! デテコイ!」とか喚きながら甲羅を叩いている。



「(嘘!? ここまで近くにいるのにバレてないの……っ?)」


「(ね、大丈夫でしょ? じゃあ、今度こそ戦闘開始だね)」


「(あぁ……。いや、待ってまだ心の準備が――)」



 最後の数歩を進むと同時に、手に持ったダガーをゴブリンの首筋に突き刺す。



「ォッ……!?」



 ゴブリンが短く、くぐもった声を発した――が、そんなことは気にしないで、さらに軽く押してあげれば反対側となる喉から刃が顔を覗かせた。

 スプーンでプリンを崩すくらいの力しか要らないから、簡単な作業だね。



「あーっ、もう! あたしだってやってやるよ!? おりゃあぁぁっ!!」


「ッ!? ナン――ギャッ!?」



 気合の入った掛け声とともに振り下ろされたハンマーによって、ゴブリンの頭部が僅かにひしゃげた。

 威力は十分だったようで、ぴくぴくと痙攣(けいれん)する以上の動きは見えない。絶命の一撃となったようだ。


 うわぁ、中身出てきてるよぉ。

 鈍器での攻撃って思ってたよりもエグイなぁ……。



「ナニ!? ナニ!?」「テキ!! テキ!!」「サキ! コッチ!!」



 とまあ、ここまですればスキルを使っていても気付かれるようで、ゴブリン達の攻撃対象が亀から僕達に移った。

 んーと、あと数匹はこのままやれるかな。



「さらに、はいっと。プラス三匹だね」


「「「ギャッ!?」」」



 死体となったゴブリンから引き抜いた勢いで、横並びとなっていた他のゴブリンをダガーで切り裂いていく。


 とりあえず、五匹は反撃される前に殺せたね。

 残りは八匹か。やっぱりゴブリン程度だとすぐに終わっちゃうなぁ。



「うりゃあ!! こっちだって!」


「グギャッ!!」



 ニコラの方も今のところ順調なようで、その小さな手に持った大きなハンマーを振り回して、さらに一匹片付けている。



「鈍器って……これも使い方によってはそうなるのかな?」


「ヨソミ――ブッ!?」


「うん、やっぱりいけるね」



 バックラーでも同じようなことが出来るかも? と思って顔に叩きつけてみたら、数メートルぐらい吹き飛んでいったね。

 たぶん、やってることはスキルのシールドバッシュと同じっぽい?


 ならアレも、威力を調整すれば今回と同じくらいになるのかも……。

 しばらくは雑魚モンスター狩りがメインの依頼になりそうだし、気が向いたら試そうかな。



「最後の――りゃっ!! よしっ、これで弓持ちは全部やった!! 遠距離は気にしなくて大丈夫だぞっ!」


「えいしょっと。あ、ホントだね。ありがと~」



 どうやら彼女は、倒す相手を選んで戦ってるらしいね。

 でも、どれから倒せばいいかなんてそんな難しいことは分かんないので、僕は"とりあえず目に付いたヤツを攻撃する"って方針から変更はないよ。



「ニ、ニゲロッ! ニゲロッ!!」


「あ、もう逃げちゃうの? うーん、追いかけるのはメンドーだね。

 じゃあ、出来るだけ威力弱めの、<アイスショット>」


「「「ガッ!?」」」



 残りのゴブリンの数に合わせて作った四つの氷の(つぶて)が、逃げる彼らの胴体を貫通し絶命させる。


 おっ、いいね。ちゃんと頭が残るくらいには威力の調整が出来てるよ。

 やり過ぎると討伐証明までバラバラになっちゃうから、ここだけは成功して良かった~。



「お、ぉぉ……。魔法なんて使えたんだ…………」



 思いの外、本気で驚いてるみたいだね。

 そういえば、この世界でも魔法を使えるのは一部の人に限られるみたいだから、こういう反応が普通なのかな。


 そうだ。勢いだったけど魔法使っちゃったわけだし、クラスはもうアレでいいや。



「んーとまぁ、一応は魔法戦士だからね。これくらいは普通だよ~」


「魔法戦士? ……珍しいクラスだな。てか、だったら最初から魔法使ってよ!

 いきなり突っ込むより、魔法で数減らしてからの方が絶対安全だったじゃんっ!!」



 あーあ、幼女に怒られちゃったよ。

 もしかして、ゴブリンと戦うのそんなに怖かったのかな?


 ま、それはそれとして――突っ込むって、何かエロいなぁ。



「あはは~、ごめんねー。魔法使わなくてもいけるかと思ってさぁ。

 でも実際、問題なかったでしょ? 

 最後も、こっちが魔法を使えるって知らなかったから、無防備に逃げ出したのかもしれないし」


「それはっ! …………そういう考え方もあるかもだけど」



 まだまだ不満がありそうだけど、テキトーにいなしたら落ち着いたみたいだね。

 ――意外と扱い易い()かも。

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