パーティ結成 4
そうして、ゴブリン達のすぐ傍に到着した。
あと数歩でダガーが届く距離にいるというに、ゴブリン達は「ギャー! ギャー!」とか「デテコイ! デテコイ!」とか喚きながら甲羅を叩いている。
「(嘘!? ここまで近くにいるのにバレてないの……っ?)」
「(ね、大丈夫でしょ? じゃあ、今度こそ戦闘開始だね)」
「(あぁ……。いや、待ってまだ心の準備が――)」
最後の数歩を進むと同時に、手に持ったダガーをゴブリンの首筋に突き刺す。
「ォッ……!?」
ゴブリンが短く、くぐもった声を発した――が、そんなことは気にしないで、さらに軽く押してあげれば反対側となる喉から刃が顔を覗かせた。
スプーンでプリンを崩すくらいの力しか要らないから、簡単な作業だね。
「あーっ、もう! あたしだってやってやるよ!? おりゃあぁぁっ!!」
「ッ!? ナン――ギャッ!?」
気合の入った掛け声とともに振り下ろされたハンマーによって、ゴブリンの頭部が僅かにひしゃげた。
威力は十分だったようで、ぴくぴくと痙攣する以上の動きは見えない。絶命の一撃となったようだ。
うわぁ、中身出てきてるよぉ。
鈍器での攻撃って思ってたよりもエグイなぁ……。
「ナニ!? ナニ!?」「テキ!! テキ!!」「サキ! コッチ!!」
とまあ、ここまですればスキルを使っていても気付かれるようで、ゴブリン達の攻撃対象が亀から僕達に移った。
んーと、あと数匹はこのままやれるかな。
「さらに、はいっと。プラス三匹だね」
「「「ギャッ!?」」」
死体となったゴブリンから引き抜いた勢いで、横並びとなっていた他のゴブリンをダガーで切り裂いていく。
とりあえず、五匹は反撃される前に殺せたね。
残りは八匹か。やっぱりゴブリン程度だとすぐに終わっちゃうなぁ。
「うりゃあ!! こっちだって!」
「グギャッ!!」
ニコラの方も今のところ順調なようで、その小さな手に持った大きなハンマーを振り回して、さらに一匹片付けている。
「鈍器って……これも使い方によってはそうなるのかな?」
「ヨソミ――ブッ!?」
「うん、やっぱりいけるね」
バックラーでも同じようなことが出来るかも? と思って顔に叩きつけてみたら、数メートルぐらい吹き飛んでいったね。
たぶん、やってることはスキルのシールドバッシュと同じっぽい?
ならアレも、威力を調整すれば今回と同じくらいになるのかも……。
しばらくは雑魚モンスター狩りがメインの依頼になりそうだし、気が向いたら試そうかな。
「最後の――りゃっ!! よしっ、これで弓持ちは全部やった!! 遠距離は気にしなくて大丈夫だぞっ!」
「えいしょっと。あ、ホントだね。ありがと~」
どうやら彼女は、倒す相手を選んで戦ってるらしいね。
でも、どれから倒せばいいかなんてそんな難しいことは分かんないので、僕は"とりあえず目に付いたヤツを攻撃する"って方針から変更はないよ。
「ニ、ニゲロッ! ニゲロッ!!」
「あ、もう逃げちゃうの? うーん、追いかけるのはメンドーだね。
じゃあ、出来るだけ威力弱めの、<アイスショット>」
「「「ガッ!?」」」
残りのゴブリンの数に合わせて作った四つの氷の礫が、逃げる彼らの胴体を貫通し絶命させる。
おっ、いいね。ちゃんと頭が残るくらいには威力の調整が出来てるよ。
やり過ぎると討伐証明までバラバラになっちゃうから、ここだけは成功して良かった~。
「お、ぉぉ……。魔法なんて使えたんだ…………」
思いの外、本気で驚いてるみたいだね。
そういえば、この世界でも魔法を使えるのは一部の人に限られるみたいだから、こういう反応が普通なのかな。
そうだ。勢いだったけど魔法使っちゃったわけだし、クラスはもうアレでいいや。
「んーとまぁ、一応は魔法戦士だからね。これくらいは普通だよ~」
「魔法戦士? ……珍しいクラスだな。てか、だったら最初から魔法使ってよ!
いきなり突っ込むより、魔法で数減らしてからの方が絶対安全だったじゃんっ!!」
あーあ、幼女に怒られちゃったよ。
もしかして、ゴブリンと戦うのそんなに怖かったのかな?
ま、それはそれとして――突っ込むって、何かエロいなぁ。
「あはは~、ごめんねー。魔法使わなくてもいけるかと思ってさぁ。
でも実際、問題なかったでしょ?
最後も、こっちが魔法を使えるって知らなかったから、無防備に逃げ出したのかもしれないし」
「それはっ! …………そういう考え方もあるかもだけど」
まだまだ不満がありそうだけど、テキトーにいなしたら落ち着いたみたいだね。
――意外と扱い易い娘かも。




