パーティ結成 2
ポツンと残された小さな背中が哀愁を感じさせるなぁ。
……ちょっと気になるし、声をかけてみようか。
前世の僕だったら絶対にしない選択で緊張する。
だけど、今の僕は美少女だからねっ、不審者だとは思われないはずだよ! ……きっと。
「ね、ねえ? ちょっと……い、いいかな?」
「おわっ!? あ、あんたなにっ!? いつの間にあたしの隣へっ??」
おっと、そうだった。また<隠密>スキルを発動したままだった。
誰にも気付かれない状態って居心地良過ぎるから、つい切るの忘れちゃうんだよね。
「ふ、普通に近付いただけ、だよ? さっきの人達に気を取られてたせいじゃないかなー?」
「うぐっ、それはあるかも……。
そ、それでっ! なに? なんかあたしに用なわけ?」
スキルを使って近付いたからなのか警戒されちゃってるけど……うん、やっぱりそうだ。
この娘、普通に可愛い!! 美少女……いや、外見年齢はエルネよりも幼く見えるし美幼女だね!
さっきの彼らは何でスルーしたんだろう?
もしかして、ロリコンは絶滅した世界だったりするのかな?
「……いや、ほんと何なの? 黙られたら困るんだけど……」
「え? ぁあ、ご、ごめんね? ……えっと、そ、そうっ!
ど、ドワーフって珍しくて、それでつい声をかけちゃったというか……」
「そう? この街にだってまあまあ住んでるし、珍しいって程じゃないと思うんだけど?」
へー、なるほどね。この辺だとドワーフは身近な存在なのか。
そういえば、ここのすぐ近くにドワーフの国があるって話だったね……すっかり忘れてたよ。
「……ボ、ボクはこの辺の出身じゃなくてね? ドワーフに会うのは初めてなんだぁ……」
「てことは旅人? いや、ここにいるんだから冒険者か。
ふーん……。ちょっと頼りないけど、気配の消し方は悪くなかったし…………。
なあ? あんたのパーティに……入ってあげてもいいよ?」
彼女は少しの間考える素振りをしたかと思うと、強気な態度で提案してきた。
さっきの彼らに対する態度と違う……とかは、まぁこの際置いておくとして。
完全初対面の僕でもいいだなんて、かなりパーティを組むことに拘ってるみたいだね。……どうしてだろう?
「何かパーティに拘る理由でもあるの? 別に、一人でも冒険者は出来ると思うんだけど?」
「一人でやれる依頼もあるにはあるけどさぁ……やっぱし選択肢が限られてくるでしょ?
あたしは早く高ランクになりたいんだよね。てなると、パーティは組んどくべきかなってね」
「はぁ、高ランクに……? それはまた、どうして?」
「ら、ランクを上げたいだなんて、冒険者ならみんな思うことじゃん……?」
んー、パーティがどうというよりも冒険者ランクが重要っぽいね。
僕からしたら、そんなもの高くても低くてもどっちでもいいと思っちゃうけど、この娘にとっては違うみたいだ。
何か深いワケがあるのかなぁ……。
「ふーん、そっか。そうだよね、ランクを上げるのは大事だよね」
でもま、今はこれ以上教えてくれないか。
こういう時は仲良くなって話してもいいと思わせるしかない――つまり好感度を稼ぐしかないよ。
「うん。それじゃあ、パーティ組もうか~」
「急に軽くなったな……ま、いいけど。とりあえず、あたしはニコラね。これからよろしく。
で、あんたの仲間はどこ? お互い、実力は早く知っておきたいだろうし、簡単な討伐依頼でも受けるのがいいと思うんだけど……」
そう言ってギルド内をキョロキョロと見回し始めるニコラ。
ん? 何か勘違いしてない?
ま、すぐに訂正すれば大丈夫だよね。やっぱやめるなんて展開は……あり得ないよね、あはは~。
「あ、うん。ボクはアイリスだよ、こちらこそよろしくね。
っと、そうだ。言い忘れてたけど、ボクはパーティには入ってないよ」
「えっ、一人で冒険者やってるってこと……?
あ、あー冗談かぁ。そうだよね、あんたどう見ても弱そうだし、一人で戦えるわけない――」
「ううん、冗談なんて言ってないよ? 実はパーティ組むのも初めてなんだよね~。
何か登録手続きみたいなのは必要なのかなぁ? ニコラはそういうの知ってたりする?」
「ハヤマッタ……カ? いや、高望みしてもしょうがないし……我慢は必要かぁ……。
――よしっ! えっと、パーティ登録だっけ? だったら、あそこの受付にいえば簡単にできるはずだよ」
結構本気で悩んでなかった? これは早く受付に行かないと……っ。
「そ、そっか。じゃあ、早く登録しちゃおー」
受付は一昨日に討伐報酬を受け取った場所だね。
そして、受付嬢は眼鏡をかけた地味目な女……この人も一昨日と同じだ。
「あのー、パーティの登録をしたいんですけどー」
「は、はいっ。パーティの登録ですねっ?
でしたら、こ、こちらの用紙にパーティ名と、メンバー全員のお名前をお願いします……っ」
うん、ビクビクとした態度も前に会った時と一緒だね。
あ、もちろんこの人に何かしたとか、そういうことはないからね?
「パーティ名かー。ニコラ、何かいい案ある?」
「そうだなぁ…………。『ニコラ様とピンク』なんて、ピッタリだと思わない?」
そう言う彼女は、イタズラを仕掛けた子供みたいな顔をしていた。
ふふ、可愛いね。……いや、そうじゃなかった。
えーっと? "ニコラ様"は、まぁそのままだからいいとして。
この"ピンク"って、やっぱり……。
「ピンクって、ボクのこと?」
「もちろん。
あんたって髪色と、なんか雰囲気とか諸々含めてピンクっぽいし。ぴったりっしょ?」
ピンクねぇ。そんなこと初めて言われた……あーそういえば。
昨日も誰かにピンクって言われた気がするなぁ。
ならやっぱり、今の僕はそう見えてるのか。ふーん。
「じゃあ、それでいこうか」
「え、マジ?」「そ、それはやめた方が……」
僕の返答にニコラと、なぜか受付嬢にまで否定的な反応をされてしまった。
「すっ、すみませんっ、つい口を挟んでしまいまして!
で、でもっ。 そのパーティ名は、あの、よろしくないといいますか……っ」
「あ、あたしも冗談で言っただけだからっ。あー、そうだな…………。
なら、『雷槌』なんてどう?」
「らいつい……って、なに? 何か有名なものだったりするのかな?」
「ドワーフの古い伝承に、雷を帯びたハンマーの話があるんだよ。
『一振りすれば天を切り裂く雷が降り注ぎ、あらゆる敵を灰にする』ってね……かっこよくない?」
今度は真面目な案ってことなのかな?
正直なところ、パーティ名なんて何でもいいし、彼女が気に入るものにしてもらおう。
「へえー、そうなんだ。うん、確かにかっこいい名前だね。じゃあ、それにしようか~」
「あんた、さてはあんまり考えてないでしょ……。
あたし達のパーティ名なんだから、もうちょっと真面目に考えてよねっ!」
僕の考えてる事は彼女にバレバレだったけど、初となるパーティの名前が決定した。
『雷槌』ね。ハンマーってところは何だかドワーフ感があるし、思いつきにしてはピッタリかも。
……って、あれ? でもそうなると、僕の要素なくなってるよね?
そういう意味だと、初めの案の方が良かったんじゃ……。




