依頼の報酬 3
――チュン、チュン、チュビィッ。
窓の外からは、小鳥の鳴き声と暖かな朝日。
そして、隣には美しい体を布団でギリギリ隠せているかどうかの美少女。
ん~っ、最高に清々しい朝だね! 今日はイイ一日になりそうだなぁ~。
え? 昨夜何があったのかをもっと詳しくって? ふふふ。それはノラと僕、二人だけの秘密ということで、ね。
「そんなにすわれてもぉ……まだぁ、なにもでませんわぁ……すぅ、すぅ……」
すぐ近くからとっても生々しい寝言が……。ううん、聞こえない聞こえないっと。
何はともあれ、色々と未知だった経験が出来たし……いつの間にか、僕も経験者になってしまったね……。
まあ、女同士だから童貞で処女って事には変わりないんだろうけど。
さあて、ノラがまだ寝てるのなら、僕は二度寝でもしようかなぁ。
今日は何の予定もない……というか、今日も予定なんてないし。
――コンコン。
ん、ノックの音? えっと<ライフディテクト>、一人……か。
誰か知らないけど、もう少しゆっくりしていたいから居留守に決まりだね。
「……アイリスさーん。わたしです、ユリアですー。……まだ、お休み中ですかぁ?」
聞いただけで優しくて可愛い娘であろうことが容易に想像できるような、心地良い声が扉の外から響いてくる。
普段であれば、この声を聞きながらもうひと眠りしたいと思っていただろうが、今日ばかりは恐ろしさで寝起きのまどろみも吹き飛んでしまったよ。
やっぱり、この状況をユリアに見られるのはヤバイ……? いや、そうでもない……かも。
突然のことに驚いてしまったけど……ノラとヤれて現世にはだいぶ満足してるし、このまま刺されてもいいかな。
うん、つい数日前にも同じようなことを考えて失敗した気もするけど、その方針で決まりだね。
それじゃあ、部屋に招待しよう――って、さすがに全裸はマズイから服を着ないと。
「はーい、起きてますよ。でも、ちょっと待ってくださいね……。
とりあえずは、こんなものかな? ノラの服と間違えて……ないね。
……すみません、お待たせしました」
「……いえ、朝早くに突然来てしまったわたしに問題があるので……」
なんとなくユリアの様子がおかしい。
もしかして、すでに昨夜のことを気付いてるのかな? いやでも、どうやって……?
「えっと、どうしました?」
「……はい、食堂の方に皆さんお揃いですから、アイリスさんも一緒にとお誘いに来たんです」
んん? なんだ、思ったよりも普通の用件だったね。
僕の思い違いかな?
「――それと……」
「……? それと?」
ユリアは一度深呼吸をしてから、とても深刻そうな表情で話を続ける。
「ノラ様を知りませんか? ……実は、先にノラ様の部屋を訪ねたのですが、何度呼びかけても返事がないんです。
何時もでしたら、この時間には起きているんですよ? それなのに……おかしいと、思いませんか……?」
「ああ、そっちの部屋に……なるほど、そういうことですか。
はい。ノラさんなら、どこにいるのか知ってますよ。というか、ここにいますからね」
「え、ここに? それって……!? まさかっ、本当に……っ!」
僕はユリアを案内するため、ベッドの方へ歩き出した。
案内とは言っても部屋の大きさなんてたかが知れてるから、数歩進むだけで見えるけどね。
「っっ!!?
……数日前に話されていたことは、本気だったのですね……」
「あ、覚えててくれたんですね? はい、そうですよ~。
あの時はただの願望でしたが、昨夜あれが色々と現実になりまして……」
それにしても、女の子とヤったことを別の女の子に話す状況って、何なんだろうね?
話してたらちょっと……ドキドキしてきちゃったよ~。
「現実に……っ。そ、それはどこまで!? いえっ、それよりもどちらが求められて――」
「だめですわぁ……。さいしょはぁ、わたしがしてあげるのですからぁ……」
「…………」
再びの生々しい寝言を聞いたユリアが凍り付いてしまったね。
さすがにそれは……僕も恥ずかしくなっちゃうな~。




