依頼の報酬 2
商会での用事を済ませた僕達は、その足でこの街の冒険者ギルドに寄ってモンスターの討伐報酬を清算した。
主人公くん達の分はギルドから渡してくれるってことだから、これで護衛依頼関連の話は片付いたね。
その後は、ノラに案内してもらった宿で夕食を食べて、皆と一緒にお風呂を済ませてから自分の部屋に戻ってきた。
……ふふふ、やっぱり美少女と一緒のお風呂はいいよね~。
「でも、どうせならもう少し攻めておけば良かったかな?
例えば、カルラみたいに胸を揉んでみるとか……いやいや、それはまだ早いよね。
こ、好感度って、コツコツと貯めていくものだからさ! ……はぁ、もう寝よっと……」
素晴らしい結論にたどり着いたところで、今まで座っていたソファーからベッドへと移動する。
……別に、ヘタレたわけじゃないからね? 後のことも考えた思慮深い行動を選択しただけなんだよ?
ち、ちなみに。
ソファーなどの調度品が一通り揃ってるし、前に泊っていた宿と比べて部屋も豪華だねぇ。
ベッドだって、シーツはサラサラでいい手触りだし、弾力性もそこそこある。
大きさ自体はそこまで変わらな――とベッドの感触を確かめていたら、コンコンと扉を叩く音が聞こえてきた。
「? ……どちら様ですか?」
「わ、私よ。開けてもらえるかしら?」
返ってきた綺麗な声は、金髪美少女ノラのものだった。
しかも扉の前の生命反応は一人分。つまり、彼女は一人で僕の部屋を訪ねて来たってことだね~。
「あ、はーい! いま開けますぅ~」
美少女が夜中に部屋を訪れる……その先の展開なんて、もう決まったも同然だよね!
……まぁ、たぶん寝る前にお話しましょうとか、そんなところだと思うけどさ。
それでも、十分だよ……うん。
「どうしました? ボクに何か用事でも?」
「ぇえ。少しお話が、ありますの……入ってもいい?」
ほら、やっぱり思った通りだったね。けど、ノラの様子がいつもと違うような……?
彼女は、白くて細い指先をお腹の前辺りで擦るようにしている。
その仕草は普段のキリっとした態度と対照的だし、なにより――いつもの鎧じゃなくて、ヒラヒラとした寝間着姿なのが素晴らしい……っ!
夜なんだから寝間着なのは当然だろって? そうだね、夜に薄くて無防備な服を着るのは当然のこと。
だから、そんな無防備な娘をつい部屋に入れてしまうのも当然のことだよね~。
「はい、どうぞ入ってください~」
「っ――お、お邪魔しますわ」
緊張した様子の彼女は、そのままソファーを通り過ぎてベッドに腰かける。
あれ? そっちに座るんだ。まあ、問題はないというか……むしろ、このまま一緒に寝て欲しくなっちゃうね。
「……このベッド、座り心地もいいですよね? でも、横になると更に――」
「えいっ!」
「っ!?」
ベッドの感触の話をすることで何の違和感もなく隣に座ったら、ノラが急に抱きついてきた。
ふわりと漂ってくるのは、上品な甘い香り……彼女らしい華やかな芳香だな~。
一体どうしたんだろうぉ? 何かのご褒美かな~?
「……よ、横になってくださる?」
「え~? あー、は~ぃ」
彼女に言われるがまま、後ろにぽふんと倒れる。
どうやら、僕をベッドに押し倒すつもりでくっついてきたんだね。
たしかにちょっと力強めだったけど、よく分からなかったから受け止めちゃったよ。
「突然こんなことをしてしまって、ごめんなさい……。
けれど、このまま自分を抑えておくことは出来そうにありませんの……っ」
「自分抑える……? それは、どういう……」
目と鼻の先にある、澄み切った青空のような瞳に吸い込まれてしまいそうで、上手く頭が回らない。
それでも、今の彼女の様子はあまりにも普通じゃなくて、「これから言われることを理解しなくちゃ」とだけは思った。
「今も記憶はあいまいですが……あなたがワイバーンの炎に呑み込まれた時に感じた、恐怖が消えてくれないのですわ。
もしかしたら、この瞬間にもまた失ってしまうのではないかと……そう考えてしまいますの。
ですから――あなたを私のものにすると決めましたわっ。そうすれば、この不安もきっと消えて無くなりますもの……」
……う、うん? 彼女の話を頭の中で整理してみたけど……い、いやぁー、その結論はさすがに無茶苦茶じゃないかな?
たぶん、僕のことが心配だって話なんだろうね。でも、最後が……?
大体、ノラにそこまで想われるようなことをした覚えがないし……と、そこで思い出したのはアンジェのことだ。
共通点はベッドの上で見つめ合っている、この状況くらいなものだけど、もしノラが男だったら?
そうだったら、適当な理由を付けて襲ってしまうこともある……のかなぁ?
「アイリスが嫌と言うのでしたら、私も諦めますわ……ですが、私の想いは――ひゃうっ!?」
ほとんど可能性すらない考えだが、一度浮かんでしまったものは気になってしまい、僕の手は彼女の股の間へと伸びていた。
ふむふむ……うん。アレがついてるなんてことはないね。
というか、昼間には直接見たんだし、ノラが男なんてあり得るわけがなかったよ~。
……うん? それは何時なのかって?
ほら、彼女を蘇生させる時があったでしょ。その前に体を回復魔法で元通りにして、それで全身をちょっと、ね。
アハハー、僕もかなり混乱してるのかなぁー?
「せ、積極的ですのね……。けれど、受け入れてくれたということですわねっ。本当に嬉しいですわ……」
僕の行動がさらに火をつけてしまったようで、ノラの目が一層熱っぽくなった気がする。
そしてそれは、彼女の秘所に触れた僕も同じで――
「……は、はい。ボクもノラさんとこういう関係になれて、嬉しいです……」
「ア、アイリス……っ!! では、まずは私がしてあげますわっ――」
考えてみれば、僕が拒否する理由こそ何もないじゃんね。
よし! 変なことを考えるのはやめて、このまま二人で気持ちいいことするぞ~。
――こうして、前世も含め初めての経験となる夜は更けていくのだった……。




