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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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空の襲撃者 5

 ガチャガチャと騒音を立てて、金属の塊が地面に落ちた。


 あー、ノラも死んじゃったね。

 ちょっと前に、ミアの生命反応も消えちゃったし、これで『黄金の盾』は全滅だなぁー。



 ん? もしかして、僕も死んだと思ってた?

 ……いや、思わないよね。死んでたら、そこで物語は終わりだし。……僕としては、むしろ終わって欲しかったけどさ……。


 炎が視界を埋め尽くした時は、死ぬと思った時の安堵感がやってきたのにねー。

 <火耐性>スキルなんてもののせいで、「温かいなぁ」くらいにしか感じなかったよ。



 まぁ、不幸中の幸いだったのは、服なんかの身に着けている物全般もスキルの対象になっていたことかな。

 こんなところで全裸にされたら、僕だって恥ずかしいからね。



「さてと、色々と終わったみたいだし、そろそろ魔法を解除しようかな」



 ちなみに、隠密系の魔法やスキルを発動中だから、ノラ達やワイバーンは僕が近くで観戦していたことに気付いていないはずだよ。


 初めのノラが取り乱してくれたところとか、見ててちょっと嬉しかったよ~。

 美少女に悲しんでもらえる死に方……うん、結構いいんじゃないかな!


 ……っと、考え事してたらアレが食事のために動きだしちゃったし、本当に出ていかないとね。



「ドラゴ……じゃない。えっと、なんとかワイバーンだっけ?

 美少女をハムハムしたいという、その欲求はよ~く分かるんだけどね……わざわざ炭化させるって、なかなか上級者過ぎるんじゃないかな?」



 突然現れた僕に驚いたのか、ワイバーンはすぐさま振り向いた。


 見ていた感じだと、炭になった二人ばかり食べようとしてるんだよね。

 火を通した方が好みなのかな?



「GUWAAAAAAッッ!!」


「……おお、これがノラやミアを吹っ飛ばした尻尾攻撃だね。

 あの娘達には薙ぎ払いだったけど、ボクには頭上からの振り下ろしなんだ?

 感触は……んー、ツルツルしてて爬虫類みたいだけど、ほんのり暖かい。火属性だから暖かいの?」



 叩きつけられた尻尾を撫でながら、独り言を続ける。


 今まで出会ったモンスターは、大抵話せてた気がするけど、コレは話せないのかな?

 ま、独り言は得意分野だから、別に会話が成立しなくてもいいか。



「GUUUUU……」


「警戒してる……? じゃあ、ちょうどいいね。

 ちょっとした頼み事なんだけどさ――その爪でボクのことも貫いてくれないかな?」



 翼と一体になっている手のリーチがどれくらいなのか分からないので、ノラが貫かれた位置まで急接近する。


 ノラの防具類も貫けたんだし、もしかしたらいけるかも……なんて、期待し過ぎると、ダメだった時の精神的ダメージが大きいから、程々にしておこっと。



「ッ!? GYAAAAAAッッ!?!?」


「……んー、やっぱり無理だよねー。ひどいなぁー、彼女達だけ殺してボクは殺してくれないだなんてさぁ。

 ま、こうなるかも、とは思ってたから別にいいけどね」



 この華奢な体も貫通できないだなんて、それこそ何かの間違いだと思わせるほどに分厚い爪が、僕の胸に触れた状態で動きを止めている。

 僅かに押されているような感触は感じるから、まだ貫けると考えてるのかもしれないけど……。



「もういいんじゃない? いい加減諦めて――おっ、後ろにも飛べるんだぁ」



 ワイバーンはその大きな翼を活かして、大きく飛び退ることで距離を開けた。

 そして息を吸い込み、何かの予備動作をとる。


 あの動き、何回か見覚えがある……たしか、ファイア……ぶれす? あの、炎を吐く前にするモーションだったはずだよ。

 たしか、ユリアの氷の魔法はこれで消されたんだっけ?


 あっ、そうだ。


 僕も同じ魔法をぶつけてみて、彼女の魔法と差があるのか試すのもいいんじゃないかな。

 どれだけ違いがあるものなのか、一度くらいは調べてみたいとは思ってたし。



「前にボクの魔法を見て、『凄いっ!?』って驚いてたけど、そこまでなのかな? <アイスショット>」



 目の前に出現した氷の塊が、ワイバーンへ向けて一直線に進む。

 見た目だけで判断するのなら、ユリア作のものよりも一回り大きいくらいで、そこまでの違いはないと思う。



「GYAAAAAAAAAAAAッッ!!!」



 その氷塊に、ほぼ同タイミングで吐き出された炎が衝突し……周囲を白く染め上げる程の粉雪が舞った。



「わぁ、キレイだな~」



 粉雪の正体、それは瞬時に凍りついた炎が即座に砕けたものだ。


 つまり、僕の魔法は炎に消されずに、いや炎を氷に変えながら突き進んでるね。

 こんな幻想的な光景だったら、僕も「凄いっ!?」って驚きたくなっちゃうよ~。



「GYAAAAAA……ッ!! ッッ!!」



 ワイバーンは自らの炎に対する自負のためか、なおも攻撃を止めずにその場に留まっていたが、炎を物ともせず直進する氷塊に敵わないことを悟って、天空へと脱出を図る。


 しかし、その判断は少し遅かったようで……。



「GUWOOOOOOONッ!!?」


「ぅ、わぁぁー……、ちょっと気持ち悪いなぁー…………」



 本体は紙一重で避けることに成功するが、その代わりに長い尻尾の先端へと命中した。

 何回か見た光景ではあるけど、魔法が当たった尻尾は大量の血を飛び散らせながら破裂する。


 そうなれば、血も真赤な肉片も炎と同じように一瞬で凍りついて、砕けていくから……。


 赤い粉雪に早変わりだぁー。

 これがイチゴシロップとかだったら、メルヘンって言いたいけど……ワイバーンの血肉なんだよねぇー。


 と、自分でやったことにやや引きしていたら、空高く舞い上がったワイバーンはそのままどこかへと飛んで行った。

 ……いまいち、ハッキリしない終わり方だけど。ま、こんなものかなー。



「で、後はコレ。どうしようかなぁー」



 戦闘が終了し、静まり返った戦場に残されたのは、死体とキャラバンの残骸達であった。

 もしかして、僕一人で片付けるの? えぇぇ、嫌だなぁ……。

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