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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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現世の死霊 3

 大量のゾンビが一時的に消え去ったことで、視界良好となった戦場には大きな斧を持った大男が立っていた。

 鎧なんかの防具も装備してるし、見た目だけで判断するなら冒険者とか傭兵っぽい人だね。



「ロ、ロータルさん、そんなところにいたら危ない、ですよ……? ゾンビ達に襲われ――」


「ォォォオオオオオオッッ!!」



 雄叫びを上げたゾンビが、その手にした斧を主人公くんへ振り下ろす。

 そして、キィィィンという鋭い音が辺り一帯に響いた。



「――っく!! わ、分かってたけど、あの斧を防ぎ切るのは無茶だったね……」


「は、ハンナっ!?」



 彼女は二本の細剣で斧の軌道を逸らしたが、二本のうち一本は弾き飛ばされ、もう一本も地面に刺して手首を抑えてる。

 主人公くんを庇った時の反応はいい感じだったけど、ノーダメージとはいかなかったみたいだね。



「しっかりしなっ! あれはゾンビだ! ゾンビ、なんだよ……っ。

 もう、どうしようもないことくらい、あんたも……分かってるだろ?」


「だ、だけど……あのロータルさんが死んだなんて、聞いてない……。

 そ、そうだ。あの人達は確か、数日前にレーヴの街まで隊商護衛の依頼を受けてたはず……っ。

 この人は別人じゃないかな? 顔はそっくりだけど、他人の空似ってことも……」



 僅かな可能性という希望を見つけた彼だったが、そんな淡いものはすぐに砕かれてしまう。



「お、おいっ。あれはハイデさんじゃないか!?」


「あっちにいるのはマルコだぞ!?」


「……デリアさん? あれはデリアさん……なのか……?」



 次々と上がる発見報告が、斧を持った人をロー……なんとかさんなのだと確定させたようで、主人公くんの顔に浮かぶ絶望の色はより濃くなったみたいだ。

 ……というかさ。え、誰なの? とりあえず名前だけ出てきたけど、冒険者っぽいゾンビだなってことくらいしか僕には分からないよ?



「ユリアさん、あの人達は誰なんですか?」


「え……? えっと、そうですよね。アイリスさんは、面識がなくても当然ですね。

 ロータルさん、ハイデさん、マルコさん、デリアさん……あの方々は、Bランクの冒険者パーティなんです」


「知り合い……ですよね?」


「……はい。

 ブルクハルトでは、ベテランパーティとして有名で、新人だった時にお世話になった方も多いんですよ。

 わたし達は、そこまで交流があったわけではないのですが……カミルさん達は、特に親しくしていたと思います。

 特に、パーティリーダーのラルフさんとは、年の離れた兄弟のようでした……」



 ふむふむ。つまり、そんな家族みたいに思っていた人達が、いつの間にかゾンビになっていたわけだね。

 いや、そのラルフ? とかいう人の名前は聞いてないか。……言ってなかったよね?


 はぁ、ホント名前覚えるのって、メンドーだなぁ。



「ラ、ラルフさんは? ……いない? いない、よね!?

 よ、よかったぁ……っ、あの人はきっと生きて――」


「い、言いにくいけどよ……アレ、じゃないか……?」



 槍兵の人が指差す先にいるのは、全身が潰れたような、人と判別できるかどうかも怪しい物体だ。

 足が動かないのか、地面を這いずるようにして動いているから、その移動速度は極端に遅い。



「あ、あれが……ラルフさん? バ、バカなことを言わないでくれっ!?」


「現実を見ろよっ!! あの革鎧は、ラルフさんの装備だろ!?

 ……お、俺だって認めたくはないけどよっ!

 あの四人だってゾンビになってんだ……っ、そうとしか考えられねぇっっ!」



 アレを見ろって……うわぁ、完全にグロ映像だよ……。

 僕は直視したくないから、見る時は薄目にして……極力、視界に入れないようにしようー。



「ゴブリン、ですわね……」


「は、はぁ? ゴブリンって、まさか……」


「彼らを殺したのは、ゴブリンの仕業ですわ」



 ノラが毅然とした態度でそう告げる。



「そんな……ラルフさん達が、ゴブリンごときに負けたって言うのかっ!?」


「ええ、他の人達を見たでしょ?

 下半身などの体の低い部位が集中して狙われていますわ。

 それに、こん棒のような殴打武器や、弓による傷跡……すべてゴブリンに襲われた際の特徴ですわ」


「だが、ラルフさんはどうなんだ!? あれは相当な力で潰されないとならないはずだっ!!」


「おそらく、ホブゴブリンですわね。

 ホブは様々な亜種がいますが、パワー特化型のグリーンホブゴブリンであれば、おかしな事ではありませんわ」



 ノラのゴブリン知識が爆発中だ。

 そういえば、彼女はゴブリンに対して思うところがあるみたいだったね。


 確かその話をしたのは、僕が転生した日のことで…………あれ? ホブゴブリンに殺された冒険者……?

 少し前にそんな人がいたような……。



「アイリスさん……ラルフさん達にヒールを使って、解放してあげてはくれませんか?

 このままでは、あまりにも可哀そうで……見ていられません……」


「そう――あ、そういえば、ゾンビを人に戻す魔法とかは、ないんですか?」


「……存在するのなら、わたしもそうしてあげたいです。

 ですが、そのような魔法は寡聞(かぶん)にして……」



 心優しいユリアは俯いてしまい、心底悲しそうだ。


 ちなみに、そんな魔法は僕も使えないよ。

 ま、直接戻すってことじゃなければ、いくつかやり様はあるけどね。



「そうですか。それでは」


「――待って、……魔法を使う相手は彼らじゃない。あっち」



 さっきまで前衛が討ち漏らしたゾンビを狩っていたミアが、急に戻って来て指し示すもの。

 それは……何というか、黒い(もや)だった。



「お、おい。まさかとは思うが、あれは……」


「……ん、たぶんレイス」


「っ!? ゴーストではなく、レイスだとっ!?

 ……なるほどな。であれば、この馬鹿げた数のゾンビ共も頷ける」



 エルネは一人で頷いてるけど、何が分かったんだろう?

 僕には何も分からないんだけど……?



 とか、暢気に話していると、僕達に気付いたからだろうか、レイスに変化があった。


 今まではその後ろが見えるくらいの透明度だったのに、だんだんと濃くなり黒い穴のようになっていく。

 また、それと同時に人の顔みたいなものまでが形作られていき、そして――



「カァァアアアネェェェエエエエエッッッ!!!」



 ――しゃべり出した。

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