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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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現世の死霊 1

 エルネのデレイベントから数時間が経過して深夜になった。

 あれからは気まずいフインキがなくなった代わりに、ちょっとした緊張感のようなものが漂っていた。

 っていうのは、この際どうでもいいんだけどね。


 それよりも重要なのは、森の方だよ。



「どうしたんだ、アイリス? ……異常か?」


「いえ、何もない……と思います。……そのはず、なんですが……」



 ライフディテクトの魔法によって、森全体の生命反応は常に把握できている。

 この近くに存在する反応は僕達を除くと()()()()なく、その反応の正体もおそらくは哨戒(しょうかい)中のミアのものだから、特に問題はない。


 ミアは毎日、自分の番以外でも周囲を警戒してくれているからね。

 1人で森にいても、何の不思議もない。


 それでは、何が問題かと言えば……



「……煮え切らない反応だな。何か気付いたの……いや、これは……何かが近づいて来る……?」



 エルネも同じことを思ったようだね。

 そう、気になっているのは、森の方から音が近づいてくることだ。


 聞こえるのは、木の枝が擦れる音や、木の葉や枝を踏みしめる音。

 しかも、それが重なって聞こえてくるから、相手は複数なんだと思う。


 それなのに生命反応はないから、勘違いなのかな? って考えたけど、彼女も同じように思ったのなら、この感覚を信じてもいいよね。



「どうします? みなさんを起こしますか?」


「待て、下手に動くのは――」


「……危険、すぐに戦闘準備して。……大量のゾンビが来る」



 気配を消して僕達のすぐ横までやってきたミアが、すっと姿を現す。

 彼女も内心は慌てているのか、いつもより饒舌な気がする。


 でもそっか、ゾンビね。だったら、生命反応がないのも納得だ~。



「ゾンビだと!? ちっ、厄介なのに捕捉されたものだ……っ。

 ミアは警戒を続行。アイリスは私と一緒に、全員たたき起こすぞ」


「あっ、はい」「……了解」



 冷静な司令塔がいてくれると助かるね。

 エルネは『希望の剣』の方に行ったみたいだから、僕はノラ達を呼んでくるか。


 だけどその前に、アンデッドを探知できる系の魔法かスキルを探して……これなんかいいかな? <超感覚>っと。

 おっ、なんとなく森の方に何かがいる気がする。

 これがアンデッドというか、ゾンビのことなんだろうね~。




 ***




「フェッセル商会の方々は、私達がいいと言うまで馬車の後方に隠れていてっ!」


「はぃぃ、それはもう絶対にココから出ませんっ!! そちらは何卒よろしくお願いしますっ!!」



 商人さんはそれだけ言って、荷馬車で作った陣地に引っ込んでいった。

 出発前はあんなに余裕があったのに、そんなものは欠片も残ってないみたいだね。



 さてと、それじゃあ対ゾンビ戦の開始だよ。


 気になる相手の戦力だけど、スキルで感じ取った数は百体弱。

 数は、まぁまぁいる感じかな?


 でもゾンビって、個々としては弱いイメージだから、ノラ達ならきっと余裕だよね。



「ノラ様、火属性魔法で一気に焼いてしまいますか?」


「アンデッド相手には、悪手ではないけれど……今回は止めておきましょう。

 もし木々に引火しましたら、大変なことになりますし、ミアの話では敵はかなりの数だとか。

 何がいるかわかりませんから、出来るだけ魔力を温存しておいて」


「……ん、たぶん大物、いる」



 大物ねぇ、どんなのだろう?

 ここにいる全員を殲滅できたりするのかなぁ~。



「大物……そう。それなら、ユリアとアイリスはそいつを優先して。

 確実に倒すためにも、回復魔法は攻撃へ振り向けるようにお願いしますわ」


「回復魔法ですか……?」


「……アイリスさんは、知りませんか?

 回復魔法などの聖属性魔法は、アンデッド系モンスターに大ダメージを与えることができるんです」



 へぇー、そういう効果もあるんだね。

 ていうか前に回復魔法へ意識を向けた時、そんな感じの効果があるって頭に入ってきたかも……。


 ……説明書とかでも、一度読んだはずなのに、頭には入ってないことってよくあるよね?



「あ、あははー、そういえばそんな効果もありましたねー。

 でも、もう思い出しましたので問題ないですよっ。ユリアさん、一緒に頑張りましょうね?」


「は、はい……」



 僕が頼りないせいなのか、昨夜のことが尾を引いてるせいなのかは分からないけど、ユリアは見るからに不安そうだ。


 ちなみに、今回は彼女と一緒に後衛で戦う予定だよ。

 前回みたいに、さらに後方で眺めているのも楽でいいけど、隣で眺めるのも臨場感があって面白そうだよね~。



「敵は私達が絶対に防いで見せるから、安心して魔法に集中するのよ。

 ……というのが方針なのですが。カミル、そちらも問題ありませんわね?」


「ああ、もちろんだ。ハーピー相手には少し苦戦もしたけど、今回は負けないよ。

 そうだろ、みんな?」


「「「おおっ!!」」」



 ハンナは雄叫びに加わってはいないけど……敵がいるであろう方向を静かに見つめている。

 彼女なりに闘志を燃やしてるのかな?


 主人公くん達のパーティも、全員やる気みたいだね~。

 昨日は空中の敵だから苦戦したのかもしれないし、地上戦がメインになるはず? の今回は違う結果が見れるかもしれないなぁ。

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