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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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隊商護衛 7

 ということで、怪我一つなく迎えた隊商護衛2日目。

 今日はモンスターの襲撃もないし、何も変わったことが無い……強いて言えば、朝目覚めたユリアが、僕を見た途端に顔を真赤にして逃げたことくらいかな。


 なんか事後みたいで可愛いね。……ごめんなさい、童貞が調子に乗りました。

 事後のことなんて何も分からないです。ちょっと妄想で言ってみただけなんです……。


 というか僕が味わいたいのは事後じゃなくて、事の最中なんだよ!

 何も経験してないのに、終わってるのは困るから!



 ……と、心の中でどうでもいいことを考えていたら、もう夜になった。

 今日の見張りは、僕とエルネスタから、ということらしい。


 だから、2人で()き火を囲んで……



「…………」「…………」



 こんな感じに、ずっと黙って周囲の警戒をしている。

 うん、分かってはいたんだよ? 嫌われている相手と自然な会話なんて発生しないよね……。


 かといって、僕は面白い話題を提供できるタイプじゃないので、きっと黙っていた方が正解だけどね。

 ここで変なことを言ってスベったりでもしたら、どう考えても地獄だよ。



「あー、その、なんだ……。色々と、悪かったな……」


「え?」



 エルネスタからの予想外な謝罪に対して、僕が考えたことは「そういえば、彼女とちゃんと会話したのって、初日の出発前だけだったなぁ」というものだった。

 さらに「それ、いま考えなくてもよくない?」と、セルフツッコミしたところで、自分が相当混乱していることに気付いた。

 ……本当に、なんで謝られたの?



「……これだけでは何も分からんよな。私が言いたいのはア、アレだ……。

 思い違いをしていたみたいだから、それを謝っておきたくてだな……っ」


「思い違い……? ですか?」



 はて、思い違いとか言われても……僕には全く心当たりがないけど?



「お前を自殺志望のバカな女のように扱ったことだ……。

 あの時は、大して思いも巡らせずに結論を急いでしまったが……本当は違うんだろ?」


「えっと……何で、そう考えたんですか?」



 自殺志望ってところ正解だから、逆に不正解へ突き進んでるけどね。

 でも、彼女が思い違いだと考えるようになった理由は、知っておきたいかな。


 きっと僕には分からない、彼女なりの思考過程があるんだろうし。



「ああ、そうだな……まずはその冒険者ランクだ。確かEランクだったよな?」


「はい、少し前にFから上がりました……けど、それが?」


「……知らないようだな。ギルドでは噂になってるぞ?

 エルフを連れたピンク髪の新人冒険者が、オーガを討伐してEランクになった、とな」


「え゛え゛ッ」



 驚いてはみたけど……まぁ、そうなってもおかしくはないのかな。

 あの時、受付嬢も驚いてたし、ギルド内には他の冒険者だって大勢いたから噂くらい広まるよね。



「冒険者にとって、情報収集は死活問題ともなる。覚えておいた方がいいぞ?

 ……その点は、あの2人にも頑張ってもらいたいんだが……」



 2人……?

 そういえば、ノラとユリアは僕がEランクと言っても気付いた様子がなかったような?



「それでだ、加えて昨日の戦闘だな。複数パーティの戦況を冷静に観察してからの行動……。

 ただの新人冒険者であれば、ああまでも落ち着いた動きはできないだろ」


「…………」



 それは単に、みんなに全部お任せする気だったから、暢気に眺めてただけだね。

 それを「経験者の動きだったな。私には分かるぞ」みたいな顔で言われると……その容姿も相まって、小さな子が背伸びしてるように見えるよ?



「こうまで材料が揃えば、お前は何か特別な事情があって行動していたことくらい簡単に予想が付く。

 オーガ討伐時にエルフを連れていたことを考えると、そいつらと合流しようとしていたのか……?

 ああいや、無理に聞き出したいわけではないからな?」


「なるほど……」



 ふむ、彼女の考えは大体理解した。

 つまり深読みし過ぎた結果、逆に真実から遠ざかっていくやつだね。


 エルフが絡むと変な方向に考えてしまうきらいがあるから、それが関係してるのかもしれないけど……これは推理モノじゃないんだから、もっとシンプルに考えなよー。


 でも、勝手に都合よく解釈してくれたのなら、わざわざ訂正する必要もないよね~。



「どうやら、すべてお見通しみたいですね。

 ですが……それなら、ボクが一緒にいてもいいんですか?

 みなさんをこちらの事情に巻き込むかもしれませんよ?」


「ふん、そんなこと構うものか。私達もBランクの冒険者だ。

 降りかかる火の粉くらい、自らの腕で払ってみせるさ」



 そう言う彼女の表情は、どこか誇らしげだ。


 ふーん、Bランクというのは誇れるものみたいだね。

 ま、それもそうか。冒険者ランクとしては、上から数えた方が早いもんね。



「ありがとうございます。エルネスタさんのその言葉、助かります」


「ぁ、ああ。大したことは、言ってないがな……。それとだ、エルネでいい……ぞ?」


「エルネ……? ですか?」


「ノ、ノラと一緒だっ。長いからなっ、私のこともそう呼んでくれ……っ」



 エルネは、顔を背けながら手を差し出してくる。


 おお、まさか彼女がデレるなんてね。予想してなかったよ。

 デレる瞬間というのは……何というか、ちょっと照れるね。



「はいっ、エルネさん! これからもよろしくお願いしますねっ」


「ん、よ、よろしくな……アイリス……っ」



 エルネの小さいながらも、何度も弓を使うことで少し硬くなった手を握りながら思う。


 思い違いをしていたのは、僕かもしれないね。

 エルネは意外と可愛い性格をしている……うん、これは間違ってないと確信をもって言えるよ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あえて なのかどうか分からなかったので迷いましたが、一応、 フインキではなく雰囲気(ふんいき)です あえての表記だったら申し訳ありませんʕ •́؈•̀
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