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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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隊商護衛 6

 晩御飯を食べ終えてから数時間が経った。


 今、僕と一緒に火を囲んでいるのはノラとユリアだけで、エルネスタとミアは仮眠をとっている。

 夜の間は交代で見張りを行うみたいだね。


 ……よく考えずにこの依頼を受けてしまったけど、彼女達が参加してたのは幸運だったかも。

 もし、『希望の剣』だけだったら、気まずい夜を過ごすことになってたよ。



「昼間はモンスターに出会いましたけど、街道周辺でも襲われることって多いんですか?」


「そうね……。モンスターの行動次第になりますから、襲撃されるかどうかはその時々で変わりますわ。

 けれど、街から街へと移動するだけだからと、護衛も連れない旅人が行方知れずとなるのは、珍しいことではありませんわね」


「そうなんですか。てっきり街道は安全だと思ってましたよ」



 危険な世界だね。

 夜に遭遇するものなんて、野生の動物か不審者くらいだった前世と対比しちゃうよ。


 ……ん? そういえば、護衛なしで故郷へと帰って行った3人のエルフ娘がいたような……。

 いやいや、彼女達なら大丈夫だよね。たぶん元気にしてるって!



「そのような国が理想なのでしょうね……。

 私達が一匹でも多くのモンスターを討伐して、そんな世の中を――ユリア……? どうしましたの?」


「ぅぅ……ん、…………」



 急にノラの肩へ、こてんと頭を載せるユリア。

 いつもこんな感じに甘えているんだとしたら、それはそれで微笑ましいことだけど……眠くなっただけみたいだ。



「ふふっ、限界のようね。悪いけれど、ベッドまでこの子を運んでくれるかしら?」


「はぁ、それはもちろん構いませんが……ボクに任せちゃっていいんですか?」


「? ええ、アイリスが問題ないのでしたら、お願いしますわ」



 ユリア的には、ノラの方が嬉しいと思う……でもぉ、お姉様の許可が出たのなら、喜んで引き受けるよ。

 せっかくの機会を逃す手はないよね!



「分かりました、任せてください! ……ユリアさ~ん、ボクと一緒にベッドまで行きますよ、っと」



 既に眠気でゆらゆらしている彼女が倒れてしまわないように、その華奢な腰に手を回す。

 そうなれば当然、密着しないといけないわけで……おお、柔らかい~、それに(ほの)かに優しくて甘い香りが~。



「それと、アイリスもそのまま眠ってくれて構いませんから」


「えっと、いいんですか? 夜はまだ長いと思いますけど……」


「貴重な魔術師が疲労していては、何かあった時に困ってしまいますわ。

 なので、あなたが休むのは私達のためにもなりますのよ?」



 眠気は全くといえる程に感じてないけど、ノラがそういうのならユリアと一緒に眠ろうかな。

 美少女と一緒に眠る……うへへ~。



「ありがとうございます。では、お先に失礼しますね」


「お休みなさい」




 ***




 僕が進むと、ユリアも寝ぼけながら歩き出す。


 こうして並んでみると、彼女の方が少し背が小さい。

 体も本当に細いし、簡単に折れてしまうんじゃないだろうか。


 ……このまま草むらにでも連れ込んで、悪戯(イタズラ)したくなっちゃうなぁ。

 じょ、冗談だよ? いやいや、ホントだって! そんなこと本気で考えるなんて……ねえ?



 さ、さて、僕達の寝床について説明しておこうかなー……。

 ええと、ベッドとか寝床とか言ったけど、別にそんな大層なものではなく、地面に布を敷いただけの場所だね。


 それなら移動しないで、みんながいるところで寝ればいいんじゃないの?

 と思うけど、少し工夫がしてあって、その周りを囲うように荷馬車を配置している。


 モンスターが襲ってきた場合は、「これが盾にもなる」とか言っていたような、いなかったような……まあ、何か考えがあるらしいよ?



「ユリアさーん? ベッドに着きましたよー? ……もしかして、ボクと一緒に寝たいですか?」


「ぅぅ? いいですぅ、一人で寝ますからぁ。ありがとう……ございましたぁ……」



 彼女は、半分眠った声で答えてから自分の寝床へと入っていく。


 くっ、さり気なく聞いてみたのにダメだったか……というか今、しっかり拒否してから眠らなかった?

 普通にショックなんだけど……。


 はぁ、もういいや。大ダメージをもらったし、僕も寝よっと。



 ………………うーん、何か物足りないような?

 でも物足りないって、何が――ああ、そうか。数日前では、イイ感じの抱き枕(美少女エルフ)がいたんだった。


 なるほどね。これが枕が変わると眠れないということかー。

 それじゃあ仕方ないよね。誰か代わりになりそうな娘を――



「あっ」「えっ」



 ――と考えて目を開けたら、ユリアと目が合った。



「まだ眠ってなかったんですね?」


「ぇ、ええと……ふ、布団に入ったら目が冴えてしまって……っ。そういうこと、ありませんか……?」


「ああ、はい。偶にありますよね」



 眠くなって布団に入ったはずなのに、結局は寝れなくて数時間退屈な時を過ごすアレ。

 何でなるのかな? 不思議だよねー。



「…………。今日のノラ様、どう思いましたか?」


「へ? ノラさんですか? そう、ですねぇ……初めて会った時と同じで、お綺麗でした?」



 唐突な質問への回答は、極々(ごくごく)普通の感想しか出なかった。

 でも、まぁ……うん、これしか答えようがないよね。


 彼女と会ったのなんて、まだ二回目だしさ。



「……今日のノラ様は、本当に楽しそうで、何時もより輝いていました……」


「そうなんですか」



 ふーん、僕にはよく分からなかったけど、ノラ大好きの彼女がそう思ったのなら、間違いはないんだろうね。



「アイリスさんは…………」


「?」


「アイリスさんは、ノラ様のことが……す、好きですか?」



 ユリアの表情は相変わらず優しげなものだ。

 だけど、その目はどこまでも真剣で……うん、この質問はどう考えても重要だぞ。


 もし返答を間違えれば、大変なことになるのは確実だろう。


 ……ん? 待てよ。大変なことって、具体的にはなんだろうか?

 刃傷沙汰(にんじょうざた)とか……? それは悪くない、というか良いのでは……?


 よし! 美少女と美少女を取り合って死ぬ。

 そんな最高の最後を迎えるために、大袈裟(おおげさ)に答えてみよう~。



「……大好きですよ」


「っ!? そ、それは友人として……ですよね?」


「友人……ノラさんがそう思ってくれるのなら、それでも嬉しいです。

 ですが、出来ればそれ以上の関係になりたいですね」


「そ、それ以上って、どこまでの関係なんですかっ!?」


「ボクとしては、どこまでだって問題ないですよ。もちろんこの体を(ささ)げる事も……」


「か、からだ~~~っっ!!」


「はい~。だって、初めて会った時には、命を助けてもらいましたし~。

 今日もハーピーから身を挺して守ってもらいましたからね。

 もう、この体はノラさんのモノと言っても過言では……あれ? ユリアさん聞いてますか?」


「…………」



 返事がない。いつの間にか寝てしまったみたいだ。

 えー、今イイ感じに盛り上がってきたところだよ? もうちょっと付き合ってくれてもさー。


 ……とりあえず言えるのは、ユリアに刺されて死ぬことはないってことかな?

 いやいや、結論を急ぐ必要はないか。もしかしたら、僕が寝てるうちにヤッてくれるかもしれないし……まぁ、ほぼほぼ無い展開だとは思うけどね。


 あーあ、もういいよ。寝よう寝よう。じゃあね、お休み。

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