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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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隊商護衛 5

 ハーピー戦による被害は、キャラバン側・冒険者側共に大したことはなく、戦闘で乱れた隊列を組み直すことで、再出発の準備はほぼ整った。

 とはいえ、そのまま出発とはならないみたいで、次に始めたのは倒したハーピー達の埋葬作業だった。


 戦闘が終わってすぐに土いじりだなんて、過酷だよねー。

 ま、僕は馬達にヒールをかける担当だから、そっちの作業は横目で眺めてるだけだったけどさ。


 さて、そんなことを考えてたら埋め終わるみたいだし、そろそろノラ達のところへ行ってみようかな~。



「モンスターもちゃんと埋葬してあげるんですね」


「ええ、彼女達にも(とむら)われる権利はありますもの。

 それに、アンデッド化のリスクを考えれば、粗雑なことはできませんわ」



 ふむ、"アンデッド化"ね。

 さすがは異世界、変な現象もある……んん? そういえば、魔法やスキルに関係ありそうなものがあった気が……。



「アイリスさんは、ヒール以外にも聖属性の魔法が使えたりするんでしょうか?」


「聖属性ですか? ……いえ、使えません」


「……そうですか。わたしもヒール以外は使えないので、教えてもらえれば、と思ったのですが……。

 他の聖属性魔法を使える方は希少ですし、高名な司祭様でもないと扱えませんよね」



 ユリアは、今の嘘を信じたようだ。


 あ、もちろん他の聖属性の魔法も、それ以外の火や水、風、雷、土の属性も使えるし、死属性――死霊を生み出したり、操ったりすることもできる魔法も使えるみたいだよ。


 でもとりあえず、そういうことは黙っておこうかな。

 ユリアも希少とか言ってるし、下手に「使えますよ~」とか言ったら、後で絶対メンドーな事になるよね。



「レオノーラ殿、こちらは終わりましたが、どうしますかな?

 まだ日は高いですが、無理に進むこともありませんし、野営の準備など始めてしまいますか?」



 そんな話をしていたら、商人さんの登場だ。


 この相談をノラにするということは、彼女を冒険者側の代表として認識してるのかな?

 さっきの戦いでノラ達の活躍が目立ってたから、と考えてもおかしくはないんだけど……。



「お気遣い感謝しますわ。

 ですが、こちらも問題はありませんし、先へ進むことをオススメしますわ」


「そうですか? ……ユリアさんやアイリスさんは、どうですかな?

 お疲れでしたら、遠慮なく言ってもらって構いませんよ」


「わたしも問題ありません」


「ボクも、そこまで疲れてないので大丈夫です」



 この人の言葉からは、妙に下心を感じてしまうんだよねー。

 見た目とか、フインキとか……何かがそう思わせるのかな?



「お三方がそういうのであれば、出発するとしますかな~。ハッハッハ!」


「ええ、そうしてくれると助かりますわ。

 もしかすると、逃走したハーピーが仲間を引き連れて戻ってくる、ということもあり得ますので」


「っ!? そ、それはいけませんなっ。出来るだけ急ぐことにしましょうっ!」



 商人さんはやって来た時とは変わって、慌ただしく戻って行った。

 うん、ちょっと緊張感が足りない人だよね~。




 ***




 ハーピー達の埋葬を終えてしばらく街道を進んだ後、そろそろ日が落ちてきた辺りで野営を行うことになった。


 街道の脇にはある程度の間隔を開けて、野営にピッタリという感じの開けた空間が点在しているみたいだ。

 簡易的な(かまど)まで設置されていることを考えると、誰かしらが整備してるのかな。



「はい、アイリス。あなたの分よ」



 ノラが手渡してくれたのは、乾燥したよく分からない穀物や野菜をお湯で戻したスープ――要するに、今日の晩御飯だね。

 調理スペースが限れているという話だったから、僕は用意しておいた材料だけ渡して、調理は彼女達にお任せすることにしたんだぁ。



「ありがとうございます。……ん、美味しいですね」


「そ、そう? それは何よりね……」



 答える彼女の笑顔は引きつっている。


 たしかに、味だけでいえば普通って感じだけどね。

 でも、元々がカピカピの保存食だから、それにしてはいい味だと思うし……考え方次第では、美少女の手料理だしさ。

 それだけで十分美味しいよね~。



「そういえば、アイリスさんはわたし達と別れた後、どうされてたんですか?」


「え? そうですね……」



 いつものように可愛い笑みを浮かべたユリアが、問いかけてくる。

 カルラ達との事は……話すと長くなりそうだし、それ以外にしておこっと。



「まずは冒険者になって、薬草とかの採取依頼をやりましたね。

 あとは……森でモンスターを狩ったり。あっ、そうだ。ゴブリンを倒したりもしましたよ」


「――ちょっと待って。森でモンスターを……?

 それにゴブリンとも戦うなんて、危険だったのではないかしらっ」



 ノラがどんどん過保護になってる気がする……。

 やっぱり、僕の見た目が戦闘に向いているようには見えないせいなのかなぁ?



「ノラ様、いくら何でも心配し過ぎじゃないですか?

 アイリスさんだって、どこかのパーティに参加されてのことでしょうし……」


「あぁいえ、一人ですよ?」


「えぇっ? それはさすがに……」



 返答を聞いたユリアは苦笑いだ。あの、優しい笑顔はどこへ……?


 うーん、最近は美少女と行動する機会ができたけど、前世では一人行動が主だったからね。

 それが最も落ち着く状態だから、仕方ないんだよ。



「で、でも、武器だってこれがありますし……ほら、この盾で防御も出来ますから、ね?」



 脇に置いておいたダガーとバックラーをアピールしてみる。

 これがあれば、駆け出し冒険者的には問題ない……と思うなぁー。



「ねえ、アイリス。あなたが冒険者になることを止める資格は、私にはありませんわ。

 けれど、無茶はしないでほしいの。せっかく助けた命なのですもの、大事にしてほしいわ。

 分かっては……くれないかしら?」



 彼女は真剣な瞳で見つめながら、言い聞かせてくる。


 これが、噂に聞く"お姉様"属性というもの、なのか……っ。

 これは頷くしかないよ……うん、それ以外の選択肢なんてないよね。



「は、はぃ、分かりました……。もう危ないことはしないと誓います……」


「ええ、いいお返事ね。それでは、食事に戻りましょうか」



 ……もちろん、その場(しの)ぎの誓いだけど。

 "命大事に"は、僕の行動方針には存在しないみたいだよ?

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