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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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始まりの終わり 4

「<クリア>……で、<ドライ>っと」



 やっぱり魔法って便利だよねー。

 髪が長いと、乾かすだけでも大変かと思ったけど、それも魔法を使えば一瞬で解決だよ。



「アイリスって……」


「え? な、なに?」



 先にお風呂から上がったカルラが、着替え中の僕を後ろから凝視してくる。

 いや、着替え中にそんな見つめないでよ。普通に恥ずかしいんだけど……。



「あっ、もしかして……乾かして欲しくて待ってた? はい、<ドライ>。

 でも、自分だけ使って、はい終わり。だなんて思ってなかったからね?

 みんなには、着替え終わったら使おうと思ってたんだよ。……本当だよ?」


「え、ええ。それは、いつもお世話になってるから……ありがと、ね……。

 って、そうじゃなくてっ。あたしが気になったのは、あなたの服よ」


「服……?」



 はて、何か失敗しているところがあるのだろうか?

 最近は、「女物の服を普通に着られるようになったなぁ」と思ってたんだけど……。



「自分だと、ちょっと分からない、かな。な、何かヘンなところある?」


「いえ、ヘンっていうほどではないわ、ね。けれどそれ、地味過ぎると思うのだけど……」



 まぁ、地味と言われたら、その通りとしか言えないね。

 これは替えの服が欲しくて、とりあえず的な感じで買ったものだし、何よりできるだけ目立ちたくなかったし。



「うーん、まぁ、そうだけど。いいんじゃない? 服なんて着れるなら――」


「よくないわよっ! ね、ねえ?

 いつも同じような服を着てるけれど、かわいい服も1着くらいは持ってるのよね?」


「ぉぉ、食い気味……。

 ど、どうかなぁ。ボクが持ってるのって、大体こんな感じだったような……」



 強いて言えば、転生した時に着ていた服が一番お洒落だったような気がするね。

 一応、街娘って印象を受けたし。



「……明日、買いに行くわよ」


「え? いや、いいよぉ。ボクはそういうの、あまり気にならないからさ……それに、メンドウだし……」


「ぐだぐだ言っても無駄だから。

 元々、ラドミラの服も買うつもりだったし、ちょうどよかったわね」


「えぇぇー……」




 ***




 ――というわけで、翌日。僕達4人はとある服屋に入店した。



 店内はお洒落というわけでもなく、そこらの店とあまり変わりがない。

 カルラがやけに意気込んでいたから、どんなところに連れて行かれるのかと心配だったけど、身構える必要なかったね。


 何と言っても、店員が寄って来ないのが安心できる。

 客がいても、カウンターでやる気なさそうに座ったままだし。……あっ、欠伸した。



「だから、アイリスさんには、こっちの方が似合うよっ。

 このフリルがたくさんあしらわれているところとか、可愛くて清楚な感じが絶対にぴったりだもん!」


「いいえ、これの方が絶対にいいわっ。アンジェのは、裾が長すぎるのよ。

 アイリスは、足だってめっちゃキレイなんだから、もっと出していかないと。

 その点、この短さ! 足だけでなく、パンツまで見えるくらいよっ!」



 カルラとアンジェの2人は、頼んでもいないのに僕が着る服を選び始め、勝手にヒートアップしている。

 ……現実逃避していても、目の前の問題は解決しないね。


 というか、微妙にキャラ変わってないかな?



「……それはもう、スカートの意味ないでしょ。

 ボ、ボクとしては、ズボン? パンツスタイル? って、感じが好みかなぁー?

 それにほら、冒険者してるからさっ。色も目立たない方が――」


「「却下」です」



 あー、これは聞いてもらえそうにないね。それを穿くのは、僕だと思うんだけなぁ。


 ……まぁ、いっか。

 勝手に選んでもらえるのは楽だし、2人の方が絶対センスあるよね。



「ラドミラは、どんなのにするの?」


「う~ん。人間さんの服は初めてだから、難しいねー」



 エルフにはエルフ特有の服とかあるのかな? 民族衣装……?

 だけど、ラドミラの服は着せられたものだとしても、2人の服も大して変わらない……ああ、どこかしらの人間の街で着替えたのか。


 普段はエルフ耳を隠してるくらいだものね。それくらいはするか。



「アイリスちゃんは、どれがいいと思う?」


「そうだねぇ……。あ、これなんか、どう? なんか全体的にふわっとしてて、フインキ合うと思うな~。

 ……胸元もパックリと開いてるし」


「これー? ん、いい感じかもー。ありがと、アイリスちゃん~。じゃあ着てみるねー?」



 彼女は、一点の曇りもない笑顔で頷くと、布で区切られた試着室へと歩いて行った。

 どんな感じになるかなぁ~? 後で絶対に見せてもらおう~。



「それじゃあ、はい。アイリスのはコレね」


「ぇ? えっと、選んでくれて嬉しいなぁー。

 この服、いいね。うんうん、ひと目見て気に入っちゃったから、すぐに買ってくるよ……」


「待ちなさい。

 それはとりあえずのお試し用だから、まずは試着ね。一度、着た姿を確認したら、次を選ぶわよ。

 ……嫌そうな顔をしてもダメ。早く、試着室に行ってきなさい」



 有無を言わせない迫力に負けて、先に試着室へ向かったラドミラを追うことになった。

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