始まりの終わり 4
「<クリア>……で、<ドライ>っと」
やっぱり魔法って便利だよねー。
髪が長いと、乾かすだけでも大変かと思ったけど、それも魔法を使えば一瞬で解決だよ。
「アイリスって……」
「え? な、なに?」
先にお風呂から上がったカルラが、着替え中の僕を後ろから凝視してくる。
いや、着替え中にそんな見つめないでよ。普通に恥ずかしいんだけど……。
「あっ、もしかして……乾かして欲しくて待ってた? はい、<ドライ>。
でも、自分だけ使って、はい終わり。だなんて思ってなかったからね?
みんなには、着替え終わったら使おうと思ってたんだよ。……本当だよ?」
「え、ええ。それは、いつもお世話になってるから……ありがと、ね……。
って、そうじゃなくてっ。あたしが気になったのは、あなたの服よ」
「服……?」
はて、何か失敗しているところがあるのだろうか?
最近は、「女物の服を普通に着られるようになったなぁ」と思ってたんだけど……。
「自分だと、ちょっと分からない、かな。な、何かヘンなところある?」
「いえ、ヘンっていうほどではないわ、ね。けれどそれ、地味過ぎると思うのだけど……」
まぁ、地味と言われたら、その通りとしか言えないね。
これは替えの服が欲しくて、とりあえず的な感じで買ったものだし、何よりできるだけ目立ちたくなかったし。
「うーん、まぁ、そうだけど。いいんじゃない? 服なんて着れるなら――」
「よくないわよっ! ね、ねえ?
いつも同じような服を着てるけれど、かわいい服も1着くらいは持ってるのよね?」
「ぉぉ、食い気味……。
ど、どうかなぁ。ボクが持ってるのって、大体こんな感じだったような……」
強いて言えば、転生した時に着ていた服が一番お洒落だったような気がするね。
一応、街娘って印象を受けたし。
「……明日、買いに行くわよ」
「え? いや、いいよぉ。ボクはそういうの、あまり気にならないからさ……それに、メンドウだし……」
「ぐだぐだ言っても無駄だから。
元々、ラドミラの服も買うつもりだったし、ちょうどよかったわね」
「えぇぇー……」
***
――というわけで、翌日。僕達4人はとある服屋に入店した。
店内はお洒落というわけでもなく、そこらの店とあまり変わりがない。
カルラがやけに意気込んでいたから、どんなところに連れて行かれるのかと心配だったけど、身構える必要なかったね。
何と言っても、店員が寄って来ないのが安心できる。
客がいても、カウンターでやる気なさそうに座ったままだし。……あっ、欠伸した。
「だから、アイリスさんには、こっちの方が似合うよっ。
このフリルがたくさんあしらわれているところとか、可愛くて清楚な感じが絶対にぴったりだもん!」
「いいえ、これの方が絶対にいいわっ。アンジェのは、裾が長すぎるのよ。
アイリスは、足だってめっちゃキレイなんだから、もっと出していかないと。
その点、この短さ! 足だけでなく、パンツまで見えるくらいよっ!」
カルラとアンジェの2人は、頼んでもいないのに僕が着る服を選び始め、勝手にヒートアップしている。
……現実逃避していても、目の前の問題は解決しないね。
というか、微妙にキャラ変わってないかな?
「……それはもう、スカートの意味ないでしょ。
ボ、ボクとしては、ズボン? パンツスタイル? って、感じが好みかなぁー?
それにほら、冒険者してるからさっ。色も目立たない方が――」
「「却下」です」
あー、これは聞いてもらえそうにないね。それを穿くのは、僕だと思うんだけなぁ。
……まぁ、いっか。
勝手に選んでもらえるのは楽だし、2人の方が絶対センスあるよね。
「ラドミラは、どんなのにするの?」
「う~ん。人間さんの服は初めてだから、難しいねー」
エルフにはエルフ特有の服とかあるのかな? 民族衣装……?
だけど、ラドミラの服は着せられたものだとしても、2人の服も大して変わらない……ああ、どこかしらの人間の街で着替えたのか。
普段はエルフ耳を隠してるくらいだものね。それくらいはするか。
「アイリスちゃんは、どれがいいと思う?」
「そうだねぇ……。あ、これなんか、どう? なんか全体的にふわっとしてて、フインキ合うと思うな~。
……胸元もパックリと開いてるし」
「これー? ん、いい感じかもー。ありがと、アイリスちゃん~。じゃあ着てみるねー?」
彼女は、一点の曇りもない笑顔で頷くと、布で区切られた試着室へと歩いて行った。
どんな感じになるかなぁ~? 後で絶対に見せてもらおう~。
「それじゃあ、はい。アイリスのはコレね」
「ぇ? えっと、選んでくれて嬉しいなぁー。
この服、いいね。うんうん、ひと目見て気に入っちゃったから、すぐに買ってくるよ……」
「待ちなさい。
それはとりあえずのお試し用だから、まずは試着ね。一度、着た姿を確認したら、次を選ぶわよ。
……嫌そうな顔をしてもダメ。早く、試着室に行ってきなさい」
有無を言わせない迫力に負けて、先に試着室へ向かったラドミラを追うことになった。




