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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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始まりの終わり 3

「そういえばアイリスさん、さっきは驚きましたよぉ」


「ん? あっ、ゴメンゴメン。いきなり、『体で払ってもらう』とか言ったら驚いちゃうよね……」



 というか、言った後に自分で驚いた。


 まさか、考えていたことがストレートに口から出ちゃうなんてね。

 あの後、何とか軌道修正して、「お風呂で背中を流してもらいたい」くらいの意味にすることができて良かったよ。



 いやまぁ。本心としては、本番までしてくれた方が嬉しいけどね?

 だけど、言葉の意味を理解していない娘が約2名いたし、そんな純真な娘を(けが)すのは……うん? それはそれで……アリだな……。



「い、いえ、それもなんですけど……。

 飛行魔法まで使えるとは思ってなかったので、わたしとしてはそちらの方が驚きでした」


「……やっぱり、空を飛ぶのは魔法でも難しいの?」


「はいっ! 熟練の魔術師にしか使えない、高度な魔法だと思いますっ」



 アンジェは、キラキラした目をこちらに向けてくる。


 うーん、フライの魔法を使って城壁を乗り越えたのは間違いだったかな……。

 だけど、あれを使わなかったら、都市に入れなかったしなぁ。


 何でも門が開いている時間は限られているようで、その時間を過ぎてしまうと、翌日の朝まで野宿になるらしいよ。



 だから、あれは仕方がない事だとしても……予防線を張るくらいはしておこうかな。

 後で面倒なことになるのは、嫌だからね。



「あー、でも……あの魔法は消耗が激しいから、そう何度も使えな――わっひゃぁぁあっっ!!?

 ちょっ!? な、なに? ……えっ? カルラ……? そんなところ鷲掴みにしないでよっ」


「んー……。くっ、こっちはあたしよりも大きいし……」



 美少女に胸を揉まれるという逆体験に、かなり動揺した。

 なんか自分の口から、やけに高い声が出たような……。



「その顔で、胸まで大きいだなんて、もうズルじゃないの?」


「な、なにが……? だいたい大きいって言うのは、ああいうのを指すんじゃないかなぁ」


「うーん? あ、これぇ? えへへー、すごいでしょ~。色んな人がほめてくれるんだー」



 ラドミラは自分の胸が凝視されているというのに、嬉しそうに微笑んでいる。

 きっと、あれが強者の余裕というのだろうね。



「ほら、本人もあんな感じだし、あっちを揉んできなよ」


「も、揉んではないわよっ。ちょっと大きさを確かめただけじゃない……っ。

 それに、ラドミラのは既に確認済みよ! ……どう頑張ってもあたし程度じゃ勝てないって、すでに悟ったんだから」



 カルラの目が少し虚ろになった気がする。

 それほどの感触か……ッ。いいなぁー。



「じゃあ、こっちは?」


「ひゃっ!? ア、アイリスさんっ?!」



 横で無防備に会話を聞いていた、アンジェの胸部に手を被せてみた。

 胸って、ここかな? んん? 合ってる……よね?



「確かめてないわ。というか、その必要ある? どう見ても、ただの板じゃない」


「……カルラちゃん? 世の中には言っていいことと、ダメなことが――ひゃうっっ!?

 そ、そこを触るのもダメなことですよっ!?」


「おっ、ここが正解かぁ」



 明らかに感触が異なる部分を摘まんでみると、可愛い声が聞こえた。

 やっぱり、先端部分は感度が違うね。



「……ッ、あのっ、あのあの! そろそろ、離してくださいよっ」


「ええー。……そういえば、前にアンジェもボクの胸、揉んだよね?」


「――っ! あ、あれは勘違いというかっ、そういうつもりじゃ無かったといいますか……」


「へぇ~、知らなかったよー。アンジェちゃんも大好きなんだね~」


「っ!!」



 ラドミラの言葉を聞いたアンジェが固まってしまった。

 無垢(むく)な笑顔が、精神的に一番効くと思うんだ。



「……はは、もう好きにしてください……」


「それじゃあ、遠慮なく」



 うーん、タオルの上からだから分かり辛いけど、(わず)かな柔らかさが……。

 これが男の胸だろうか? ――否。断じて、否だ。


 やっぱり、女の子認定したのは間違いじゃなかったね。……下には、アレがツイてるけど。



「……楽しい?」


「うんっ、まだまだ触っていたいくらいには、気に入ったよ」



 カルラに白い目で見られても、手にした感触を(たの)しみ続ける。


 とはいえ、アンジェの顔がトロンとしてきたし、これくらいで解放してあげるか。

 さて、次は――



「カルラの番だね」


「えっ?」


「だって、さっきボクのを揉んだよね? だから当然、次はボクが揉む番だよね?」



 よしっ、互いの胸を揉むイイ感じの流れが出来たね。

 後は勢いで押し切るだけだ。



「ま、待って? ……は、話し合いの時間が、必要だと思わない?」


「ううん、思わないね」


「なんだかあなたっ、目が怖いわよ!?」



 ジリジリと僕が近づくと、それに合わせて彼女も後退(あとずさ)る。



「大丈夫、だいじょうぶ。女の子同士だよ? 何も心配することないって……」


「ぇぇと……、そうだっ! あたし、ちょっと湯あたりしたみたい?!

 そういうわけで、先に上がるわねっ!!」



 カルラは、出会ってから初めて見せる素早さで、浴室を飛び出して行った。



「あーあ、逃げられちゃった」



 あともうちょっとだったのに……惜しい事をしたなぁ。


 それにしても、何がいけなかったんだろうね?

 流れ的には、完璧にイケる! って、思ったんだけど。



「それじゃあ、わたしのをさわるー?」



 ラドミラが小首を傾げながら、可愛らしく自身の胸を強調してくる。

 そうだった。僕にはまだ、この娘が残ってるじゃないか。



「……い、いいの? じゃあ……」


「ダメですよっ! なにが『じゃあ……』なんですかっ!?

 前から思ってたんですけど、ラドミラちゃんに接する時、おかしくなりませんかっ?!」


「ええっ? いやいや、そんなことないよー」


「あるんです!! 特に視線がエッチですからっ! さあさあっ、わたし達も出ますよ!」



 アンジェに背中を押される形で、僕もお風呂場から退場することになった。


 まさか、こんなところに伏兵がいたとは……っ。

 ちょっと怒っている気がするのは、さっきイジり過ぎたのが原因かなぁ?


 でも、「視線がエッチ」なのは仕方ないね。僕は色々と……その、難儀(なんぎ)だからさ。



「あー、待ってよー。わたしも出るからぁ。……ところで、どうしてアンジェちゃんは前かがみなの?」


「~~ッッ!」



 ああ、僕よりも難儀な娘がいたんだった。

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