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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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救出作戦 6

「お前たちっ、よく見ればあの時の魔女とエルフ共じゃないかっ!?

 なんてしつこい奴らだ……っ! っ!! しかもそこにいるのは私の大事な商品!?

 誰の許可があって檻から出しているんだっっ!!」



 僕達が馬車から出るところでやって来た中年男は、荷台の状況を確認すると顔を真赤に染めて怒り出した。


 あの悪趣味な金色の首輪……見覚えがあるような?

 ああそうか。この人、前に商会で出会った店長とか呼ばれてた人だ。


 うーん、それじゃあ相手の戦力は実質1人かぁ。

 なおさら危機的状況とはいえないね。



「ラドミラは商品じゃないって、そう言ってるでしょっ!

 誘拐して無理矢理閉じ込めておいて勝手なことを言わないでっ!

 さあ、そこを退いてくれる? この子はあたし達と一緒に帰るのだから」


「ふんっ、そういうわけにはいかんな。

 おっと、この前と同じようにいくなどと思わない方がいいぞぉ?

 なんとこちらには、Bランクの冒険者殿が付いているのだからなっ」



 ふーん、Bランクの冒険者ね。

 冒険者ランクって、やっぱり高い方が強いものなのかな?


 それだったら、Eランクの僕が勝てる可能性は限りなく低そうだ。

 僕が負けたら残りはゴブリン数匹も倒せないエルフが2人(もう1人は武器すらないため戦力として考えない)だし、急にピンチな状況になったね。



 意外と望む展開になったのかも。

 サクッと負けて、そのあと彼女達がどう行動するのか見てようかな。


 まぁ、その場合だと僕は先に殺されてるかもしれないけどね。



「それでは、やり方はラルフ殿にお任せしますので、私の商品を取り返してください」


「――お断りだ」



 うん? ……聞き間違いかなぁ。

 あのラルフとか呼ばれた冒険者が命令を拒否したように思ったんだけど……。



「は? い、いま何と……?」


()()()()と言ったんだ。

 ……あんた、いけ好かないやつだとは思ってたが、まさか積み荷が誘拐した少女とはな」


「だ、だから何だというんだ……っ。何を商品にしようが私の自由じゃないかっ!

 それに、それは先に荷を確かめなかったお前のミスだろうっ!?」



 そうだそうだー、ちゃんと確かめないそっちが悪いぞー。


 ……あっ、そういえば。

 キャラバンが都市を出発する時に最後に合流したのって、この人みたいな冒険者風の人達だった気がする。

 もしかして、あれは遅れて来たんじゃなくて、積み荷を確認させないようにわざと出発ギリギリの時間を指定されてたのかな?



「ああ、それは俺の責任だ。だから彼女達を逃がすのは、俺のせめてもの償いだな。

 さあ嬢ちゃん達、こちらは何もしない。好きに逃げてくれ」


「え、えぇ、そうね…………」



 突然の展開に、3人は彼を信用していいのかどうか迷ってるみたいだ。


 そうか。これは僕達を安心させて、近づいてきたところを不意打ちしようという作戦かもしれない。

 ほら、こちらは4人だし、数だけでいえば4対2で、あっちが不利だからね。



 ……いや、本気でそう考えてるわけじゃないけどさ。

 まぁ、一応ね。もしかしたらってこともあるから、僕が行って確認してみよう。



「じゃあ、最初はボクが行くよ」



 どう見ても無防備ですよー、という感じで荷台の外へと歩いていく。


 そして、彼らの横を通り過ぎて背中を見せる――が何もしてこない。

 ええー。この人、本当に逃がす気なの?



「いいんですか? ……本当に逃げちゃいますよ?」


「ああ、もちろんだ。だが、悪いな。

 近くの都市まで護衛してやりたいところだが、俺はこのキャラバンの連中を守る仕事が残ってんだわ。

 ――ここは今、大量のゴブリン共が群がる戦場だ。気を付けて逃げてくれよ……」



 はぁ。おっさんのキメ顔なんて見せられても困るだけなんだけどね。


 そんな僕達の会話が聞こえていたのか、カルラ達3人もすぐに荷台から出てきた。

 彼が依頼主の命令を無視する気なのは確定だ。



「このっ、役立たずがっ! 女を捕まえることも出来ん能無しめっ!

 冒険者などという傭兵モドキを雇ったのは間違いだった……っ。

 報酬は一切払わんからな!!」


「分かった、分かった。報酬なんてどうでもいいから、あんたも逃げる準備をしろよ。

 俺の仲間たちだって、いつまで持つか分からないんだぜ?」



 後ろからは、店長が冒険者の人に喚き立てる声が聞こえてくる。


 あの人は自分で捕まえようとはしないのかな?

 って、それは無理か。戦えるようには見えないもんね。


 ……前回、僕がやり過ぎたせいかもしれないけどさ。



「みんな、行きましょうか」



 さてと、置いて行かれても困るから僕も一緒に逃げないとね。



「おいっ、待てっ。私は許しておらんぞ!

 ……伯爵様にお願いして、必ずお前たちを捕まえてみせるからなっ!」


「あんたも、もういいだろう……? それに、あまり騒ぐとゴブリンども――ぐがっっ!!?」



 ドサッという重い物が倒れるような音が聞こえたので振り返ってみると、冒険者の男が倒れていた。


 いつの間にか、首から矢なんて生やしちゃってるのがとっても印象的だね。



「こ、今度はなんだ!?」


「ギャッ、ギャッ、ギャ!」「メイチュウ! メイチュウ!」


「ひぃっ!? ゴブリン……っ!!」



 お、やっと出て来たみたいだね。

 ずっと、あの2人以外の生命反応があったから「誰かが隠れてるんだろうなー」とは思ってたけど、ゴブリン達の方だったかぁ。


 こっちはもう逃げるだけだから、いまさら出て来られても……という気もするけどね。



 それはそうと、Bランク冒険者って案外弱いなぁ。

 不意打ちとはいえ、ゴブリンにあっさり殺されちゃったよ。

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