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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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救出作戦 5

「……すー……、すぅー……、むにゃ…………んぅ……」



 カルラの示した馬車の荷台には、商会の地下でも見たダークエルフの少女が檻の中で眠っていた。



 思い返すと商会の地下牢でもずっと眠っていたけど、こんな寝心地の悪そうなところでよく熟睡できるもんだね。

 しかも、あの時はまあまあ騒いでいたというか、檻の外で下品な会話が交わされていたのに一切起きる気配もなかったし、もしかして弱ってるのかな?


 と、考えもしたが彼女をよく知る友人から「1度眠ると呼びかけたくらいじゃ起きない子なのよ」と言われたので、その言葉を信じることにしよう。



「<開錠>。うん、ちゃんと開いたみたいだね」


「ラドミラちゃんっ!! ……ホントに、本当にっ、またあえたんだね……っっ」


「も、もう、アンジェは……大げさね……っ、あたしは絶対に会える、って……信じてたんだから……」



 僕の使った開錠スキルによって檻を閉ざしていた南京錠のようなものが外れると、2人は即座にラドミラのそばに駆け寄った。


 アンジェは寝ている彼女にすがりつくようにして再会の感動で泣いてるし、カルラの方もその目元には決壊寸前の涙が浮かんでいて、ただの強がりだということはバレバレだ。



 あーあ、意外と簡単に見つけちゃったね。


 本当はもっと切迫した状況で見つけてもらって、自分の命と友達の命、どちらかを選ばないといけないの? 

 みたいな展開になってくれることを願ってたんだけどなぁ。



 まあ、僕の浅はかな企みなんて、そう上手くいくはずもないか~。

 とりあえずは、友達に対する強い思いというヤツを、彼女達は行動で示してくれたんだから、それで満足しようかな。



「……うーん? まだ、朝じゃないよぉー?

 ……あれぇ、アンジェちゃんにぃ……、カルラちゃん……?

 なんで、わたしの部屋にいるのー?」


「……っ!! ……ほ、ほら、寝ぼけてないで。ここはあんたの部屋じゃないでしょ?」


「えぇ? ……あー、そっかぁ。わたし、どれい? になって人間さんに売られるんだったー。

 わぁ~、じゃあ2人は売られる前に、会いにきてくれたんだー!」



 2人がラドミラを揺り動かすと、彼女はやっと目を覚ました。


 何というか、おっとりした娘みたいだね。

 寝起きだからかとも思ったけど、そういう性格の娘だとこの短い会話でも分かった。



「会いにきた……間違ってはないけれど、そんなのんきなこと言ってる場合じゃないのよ?

 あまりのんびりもしていられないのだからっ、早く帰るわよ!」


「帰る? もしかして、わたしのことを心配して、助けにきてくれたの?

 ん~っ、ありがとうーっ!」


「なっ!?」「わぷっ!?」



 彼女は全身で感謝を表しているのか、2人に抱きついている。


 微笑ましい光景だ。

 でも、最も気になるのは、彼女の胸部でその形を自在に変える、2つの柔らかそうな物体。


 ……一応、僕も助けに来たんだし、同じことをしてくれる可能性だってあるんじゃないだろうか。



「取り込み中のところ悪いけど、ボクのこともいいかな?」


「うん~? 初めて見る人間さん……、

 わぁっ、すごい、かわいいー! すごいかわいい人間さんだー!」


「う、うん、人間さんだよ~? ボクはアイリスっていうんだぁ。よろしく……ね?」


「……ふぅ、アイリスさんはわたし達の用心棒になってもらってるの。

 ここまで来るのに、すごくお世話になったんだから」



 ラドミラの抱きつき攻撃から抜け出たアンジェが、僕の情報を補足してくれる。


 よし、これで僕にも感謝したくなったはず。

 何なら伝え方はもっと激しくても問題ないからね~?



「そうなんだーっ! アイリスちゃんも、ありがとう~!」



 さぁ、来い!



「こんなにかわいい人間さんが、2人を手伝ってくれるなんてうれしいな~。

 あっ、わたしはラドミラだよ。わたしとも仲良くしてねー?」


「……うん、こちらこそ……」



 彼女は目の前まで来ると、僕の手を取って感謝の言葉だけ伝えてくれる。


 そうだよねー。初対面だものねー。

 いきなり抱き着いたりはしないかぁ……。


 はぁ、残念だけど……ま、いいか。

 彼女の手、スベスベで柔らかくて、気持ちいいし。



 さてと、やれそうなことはもう無さそうだね。

 こんなとこにいたってつまんないだけだから、早く帰ろ…………いや、これは。

 ふふっ、まだ終わりと決めつけるのは早かったかもね。



「自己紹介も終わったかしら? ……それじゃあ、そろそろ帰るわよ」


「そうだね」「うん」「はーい」



 僕達が馬車の荷台から出ようとしたところで、外から話し声が聞こえてきた。



「――どこに行くんですかっ!?

 何度も言いますが、これはもう積み荷を心配してる場合じゃないんですよっ!

 俺達が殿(しんがり)を務めますんで、あんた達は早く逃げる準備をしてください!!」


「うっ、うるさい!! あれだけは……っ、あの荷だけは守らねばならないんだっ!!

 いいからお前はっ、私が指定する荷を運んで……」



 そして登場したのは、金ぴかの装飾品で身を飾った中年の男と、何かしらの皮製防具を身に着けた、護衛と思われる男の2人だった。



「な、なんだっ、お前たちはっ!?」



 キャラバン側の人がやってきたみたいだね。

 でも、2人だけ……か。もっと多いと思ったのに、おかしいなぁ?

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  結局こいつは何がしたいの?他人に対して興味がないかと思えばラドミナに対しては興味を抱くし。 [一言]  一貫した目的や主義、思想がないせいで読みづらい。
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