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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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救出作戦 4

 ――そんなことがあって、ゴブリン達がキャラバンを襲撃している現在につながるわけだね。


 でも、約束通りにゴブリン達が動いてくれて良かったよ~。

 もし彼らが来てくれなかったら、ラドミラを救出して何事もなく終わり、ってこともあったかもしれないよね。


 そういえば()()()()ね。ゴブリンも魔法とか使えるのかな?

 って、いま気にすることじゃないか。使ったのはキャラバン側の護衛かもしれないし。



 よしっ、ゴブリン達がせっかく約束を守ってくれたんだから、このチャンスを活かさないと。



「ねぇ、2人共? 何がおきてるのかは、ボクにもよく分からない。

 けど、見張りはみんなそっちに気を取られてるみたいだよ?

 積み荷に近づくには千載一遇のチャンスかもね」


「え? ……えぇ、そうね。そう、よね。……ごめんなさい、少しボーっとしてたわ。

 それじゃあ、行きま」


「――でも、あそこがいま危険なこともまた確かだよ。

 精一杯はやってみるけど、今回は2人のことを守れないかもしれない」


「「……っ!!」」



 僕が珍しく真面目な顔を作って言ったからなのか、2人は表情を引き締めて、本当にいま動くべきなのか考えているようだ。


 危険なことがあっても、僕が助けてくれると思って無茶な事も出来ていたかもしれないからね。

 自分達の身に危険があると事前に理解した状況でも友達のために動けるかどうか、僕としては気になるなぁ。



 あっ、それとさっき言ったあそこが危険というのは本当の事だよ?


 ゴブリン達だと思う生命反応が200匹くらい。

 それに対してキャラバン側も100人近い反応があるけど、そのうち護衛の人間は20~30くらいだったはず。


 なので、いつ彼らが負けてゴブリン達がなだれ込んで来てもおかしくない、って状況だね。



「……行きましょう。いえ、いま行くしかないと言った方が正しいわね。

 アイリスがそう言うのだから、相当危険な状況だということは理解したつもりよ。

 でもそれは、ラドミラが危険な場所にいるということでもあるわ。

 ――それなのに、助けに行かないわけにはいかないもの」


「そうだよね。ラドミラちゃんも1人で心細い思いしてるかもしれないし、早く行ってあげないと」


「あの子のことだから、いつも通りのほほんとしてるかもしれないわよ?」



 カルラがそう言うと、アンジェも同意するように苦笑している。


 ふーん、2人は危険だと分かっていても助けに行くんだね。

 ま、これくらいは想定内だから、次へ行ってみよう。



「なるほど、確かに2人の言う通りだね。

 それなら、できるだけ急ぎで、だけど見つからないように気を付けて近づこうか」




 ***




 僕達は荷馬車の近くまで移動した。

 ここまでは上手くやれたから誰にも気付かれなかった――と、彼女達は思っているんだろうね。


 当然、こんな素人の尾行が一日中バレなかったのには理由があって、僕が<隠密>スキルで全員の気配を消している。

 インビジブルとかの魔法でも見つからないようにはできると思うんだけど、そっちだと魔法陣が出るから発動時に気付かれる可能性があるんだよねぇ。



 ちなみに隠密スキルは、僕の近くにいれば自分だけじゃなく、他人も対象にできるし、お互い気配は普通に感知できるようにすることも可能だ。

 ……魔法やスキルの効果を調べれば調べるほど、2つの違いが分からなくなる……魔法とスキルの境界って何だろうね?



「ラドミラが乗っている馬車は……どれだったかしら?」


「「…………」」



 カルラからの質問に2人して沈黙で答える。

 はじめから覚える気がない僕は別としても、アンジェも覚えていないようだ。


 まぁ、あの広場でどの馬車に乗せられているか分かったとはいえ、その後に馬車の順番が入れ替わったりもしてるから仕方ないよね。



「……1つ1つたしかめるしかないのね。時間がないし、バラバラに探しましょうか?」


「うん。じゃあ、わたしはあっちから探すね」


「ならボクは……あの辺の馬車を見てみようかな」



 さて、今まで発動しておいた隠密スキルをオフにして、っと……これで見つかる可能性がかなり上がったはずだね。


 えっ、なぜこのタイミングでスキルを切るのか、って?

 それはもちろん、彼女達が見つかった時にどういう行動を取るのかを見るためだよ。


 普通なら友達の救出は諦めて逃げると思うんだけど、2人はどうするんだろうね?

 戦う? それとも、一旦隠れてやり過ごす? 気になるな~。



 というわけで、僕はテキトウに馬車を調べるフリでもしとけば、自分の目的は達成できるということだね。簡単だぁ。



「えっと、この積み荷はなんだろう……。

 んー、これって、麦? っぽいけど、種類とかよく分かんないや。

 確定なのは穀物ってことかなぁ? ……思ったよりもつまんないもの運んでるんだね」



 もっと面白い積み荷を探そうかな。と考えたタイミングで、カルラが調べていた馬車から急いで戻ってくるのが見えた。


 もしかして、もう見つかったのかな?

 おー、思ったよりも早くバレたものだね。



「見つけたっ、見つけたわ!」



 やっぱり、見つかったんだ。

 キャラバンの護衛に見つかったのかな? それとも、ゴブリン?


 ……でも、彼女を追いかけてるような生命反応はないような……?



「あそこの馬車でラドミラを見つけたのっ!

 あたしはアンジェを呼んでくるから、アイリスは先に行っていてっ!」


「……えっ?」



 あー、見つけた、見つけたね……。

 そうかぁ、彼女が見つかったわけじゃなくて、目当ての娘を見つけたのね……。


 こんな複数ある馬車から1発で見つけるとか、そんなの奇跡じゃないかな?



 僕は今日初めての驚愕を感じながら、カルラの示した馬車に向かい歩き出した。

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