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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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救出作戦 3

 どこに移動したのかと言うと、少し前に来たゴブリンの巣の最奥、玉座って呼ばれてた部屋です。

 おっと、転移先に直接その部屋を選んではないよ? さすがに礼儀ってものがあるからね。


 まずは洞窟の前に現れて、そこにいたゴブリンに案内してくれるように頼んだわけだよ。

 適当に数匹殺しただけで丁寧に案内してくれるんだから、ゴブリンさんは優しいよね。



「貴様、ナゼマタココニ来タ? ヤハリ余ヲ討ツ気カ?

 ……良イダロウ。ダガ、此度モ生キテ帰レルト思ウナ」



 部屋の奥にある豪華な椅子に腰掛けたゴブリンキングが、余裕たっぷりな態度で言ってくる。


 前回の最後は命乞いまでしてたのに、態度が戻ってる。

 それだけ戦力に自信があるということかな?


 よく見れば側近ポジのホブゴブリンが赤、青、緑とカラーバリーションも豊富になって、10匹に増えてるよ。



 彼らに殺されるというのも、それはそれで構わない……。

 いや、カルラ達がどう行動するか気になるし、今はまだ死ねないか。


 それにここまできたんだし、死ぬなら彼女達も一緒がいいよね。



「……ううん、そういうのが目的じゃないんだ。

 今回は、交渉? 取引? 何かそんな感じのことがしたくて来たんだよ」


「取引ダト? フム……、話グライハ聞イテヤロウデハナイカ」


「おっ、結構簡単に聞いてくれるんだね。ありがとう。

 実はここを出た後、こんなことになってたんだけど――」



 僕はとりあえずカルラ達と出会ってからここに来るまでの流れを、ざっくりと説明した。

 かなりざっくりとし過ぎていて、伝わったのか不安になるくらいだけど、たぶん伝わったはずだ。


 ゴブリンキングって、意外と頭良さそうだから大丈夫。きっと、たぶんね。



「……貴様ノ望ミハ余ノ軍勢デ隊商ヲ襲撃シ、ダークエルフヲ助ケ出シテ欲シイ、ト言ウ事カ?

 断ッテオクガ、余ノ配下ハ知能ガ低イ。

 貴様ヤダークエルフ共モ含メ、同族以外ハ全テ敵ト見做(ミナ)シタ行動シカ出来ン」


「すごいっ、ホントに伝わってる……っ。ああでも、そこらへんは心配しなくてもいいよ。

 やって欲しいことは、キャラバンを襲撃するって、ところまでだから。

 もし誰かが死んでしまったら……まぁ、戦闘だし、それはしょうがないことじゃないかな?」



 僕の返事を聞いたゴブリンキングの厳つい表情が、さらに険しくなったような気がする。


 どうしたのかな?

 彼の不利益になるようなことは言ってないと思うんだけど……。



「……ソウカ。貴様ガソウ言ウノデアレバ、コレ以上ハ余ガ気ニスル事デハナイ。

 ソレデ、ソノ望ミヲ叶エタトシテ、貴様ハドノ様ナ対価ヲ差シ出ス?

 余ニ何ノ利モナイ話ナド、受ケル気ハナイゾ」



 当然の要求だよね。

 むしろ対価を要求してくるということは、それ次第で取引に応じてくれる気があるのかな?


 ……僕がそんな魅力的なものを払えるかどうかは別問題だけどさ。



「えーと、そうだね……。あっ、アレがいいかも。

 ――対価は、僕達が探してるダークエルフの娘以外の積み荷ってことでどうかな?

 たぶんその娘を運ぶキャラバンは、他に大量の商品も載せてるはずだよ。

 その中には可愛い娘だって、ね?」



 これには結構自信がある。

 なぜなら、さっきラドミラが捕まっていた牢屋には、他にも奴隷っぽい娘が大勢いたからね。


 せっかく彼女を運ぶのなら、他の娘も連れて行くんじゃないかなぁ。

 それに、地図にも複数台の荷馬車を使うようなことが書いてあった……そういえばあの地図も渡しておいた方がいいかな?



「女カ……手元ニ多クアッタトコロデ問題ハナイガ、ストックモ十分ニアル。

 対価トシテハ釣リ合ワンナ」


「いやいや、そんなこと言わないでさ。

 この地図も付けるから、これがあればキャラバンの休憩する位置とかも分かるし、簡単に襲撃できてお得だよ?」


「地図、ダト? ……見セテミヨ」



 ゴブリンキングが手を前に出すと、それが合図になっているのか、部屋の脇で待機していたゴブリンの1匹が僕に近づいて、真似するように手を差し出してくる。


 これに地図を渡せってことかな?



「……はい」


「アイ」



 地図を受け取ったゴブリンは、トテトテと玉座の近くまで歩いて行くと、ゴブリンキングに地図を(うやうや)しく捧げている。


 こういう王様と臣下みたいな動きも毎回律儀にやってるのかな?

 見ている分には面白いから、好きにやってくれて構わないんだけどさ。



「ドウゾ」


「ウム。……っ!! フッ、得心(トクシン)ガ行ッタ。

 女ダ何ダト詰マラン提案ヲシテイタガ、本命ハコレカ?

 ……掌ノ上ニイルヨウデ気ニ食ワンガ、悪クナイ取引ダ。貴様ノ話、ノッテヤロウ」



 地図を見た途端、ゴブリンキングの様子が変わった。


 そんなに地図の出来が良かったのかな?

 まぁ、何でもいいや。とりあえず、交渉成立だね。


 もしダメだったら、テイムスキルで適当なモンスターでも手懐けてキャラバンを襲わせようって、考えてたけど手間が省けたみたいだ。



「えっ、本当に? 助かるよ~。

 それじゃあ、さっき話した感じでキャラバン襲撃の件、よろしくねー」


「……アア、念ヲ押スガコレハ既ニ余ノ物ダゾ? 全テガが終ワッタ後ニ返セト言ワレテモ遅イカラナ?」


「そんなこと言わないよ~。その地図もう要らないし、好きに使ってくれていいから」



 さぁて、これで僕の準備は整ったかな。

 後は数日間キャラバンを待つだけだ。……一体、どういう結末になるのか、楽しみだね?

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