表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
33/134

交渉 1

「店長、お客様がご到着されました」


「――入ってもらいなさい……おぉ……これはこれは。

 麗しいエルフのお嬢様方が、当商会を訪ねてくださるとは誠に感激ですなぁ。

 おっと、私はギュンター・ルンプと申します。以後、お見知りおきを」



 案内された部屋はこれまた一層豪華な場所で、床には何かしらの動物の毛皮まで敷かれている。


 そんな部屋で大仰に出迎えてくれたのは中肉中背の中年男だ。

 第一印象は身なりが豪華……いや装飾過多と言った方がピッタリな見た目をしている。


 顔立ちなどはノーコメントという感じだけど、案内役だった副店長に似てる気もするね。

 それ以外は金色に輝くネックレスや腕輪の主張が激し過ぎて、成金の2文字しか浮かばないや。



「あなたがここの店長? ……さっそくだけど、その商品について詳しく聞きたいわ。

 一体、何を紹介してくれるのかしら?」


「もちろん、あなた方もよくご存知の娘ですよ。

 白銀のように美しい銀髪に、少女としての幼さを残しながらも発育の良い体。

 そして何よりも、エルフの中でも希少な"ダークエルフ"というとても商品価値の高い奴隷でございます」


「!!! その子――ラドミラは奴隷でも、ましてや商品なんかじゃ決してないわっ!!

 あなた達が誘拐して無理矢理奴隷にしたのは分かっているのよ!

 さあっ、あたし達の親友をすぐに解放しなさいっ!!」


「おやおや、誘拐などと人聞きの悪いことを言われては困りますな。

 我々は正規の手順を踏み、こちらの商品を仕入れたのです」


「ふ、ふざけ――」


「しかし、もしかすると何か手違いがあったのかもしれません。

 なので、その証拠を提示していただけませんか?

 あなた方が誘拐だと主張されるのでしたら、もちろん証拠ぐらいありますよね?」


「証拠って、あたし達はラドミラが連れ去られる姿を目撃したの……っ! だから…………」



 証拠かぁ。

 そういえば、この世界だと誘拐事件ってどう捜査するんだろう?


 魔法で捜査とかできれば、簡単に犯人も被害者も見つけられると思う。

 でもそれができるなら、彼女達が遠くの街まで探しに来なくても、普通は警察的な存在が動いてくれるよね。


 まさか誘拐しても捕まることの方が稀だったり?

 それじゃあ、誘拐し放題なんじゃあ…………いや別に、誘拐とか興味ないよ?

 美少女を捕まえて監禁してもバレないかも、なんて考えてないからね?



「ふむ、その様子ですと、証拠はあなた方の目撃証言のみということですかな?

 いやはや、そのような不確かなもので、ありもしない疑惑をかけられては……」


「――この国ではエルフの誘拐は死罪になるんですよね?」



 お、今度はアンジェが攻勢に出るみたいだ。

 彼女なら商人相手でも、話を優位に進められるかな?



「ラドミラちゃんがあなた達に誘拐されたという明確な証拠はありません。

 ですが、あなたがエルフを奴隷として売ろうとした事実があります。

 これが公になったら、あなたも困るのではないですか?」


「なるほど。確かにあなたの仰る通りだ。

 誘拐ではなくとも、本人の同意がないエルフの売買は罪になりますからな。

 ……それをもとに私を脅そうというのですか?」


「わたし達はラドミラちゃんが無事に帰って来てくれれば、それ以上は望みません。

 彼女を解放してくれるのなら、あなたを(とが)めるようなことはしないとお約束します」



 アンジェは一歩引くことで、相手の譲歩を引き出そうとしてるみたいだね。

 交渉としては悪くない気もする。だけど、相方はそれを受け入れられるのかな?



「アンジェ何を言ってるの!? こいつはラドミラを奴隷にしたのよっ!!

 それを許すなんて……っ、あたしにはできない……!

 何か重い罰を受けさせないと気が済まないもの!!」


「わ、わたしだって本当は許せないよっ!!

 ……でも、そうでもしないとラドミラちゃんを助けられそうにないの……っ。

 たぶんカルラちゃんの言ってることは正しいと思う。わたしは弱いから、その正しさを貫けないんだ……」


「!! ……ううん、あたしが間違っていたわ。

 熱くなり過ぎて、状況が分かってなかったみたい……ごめんなさい……」



 喧嘩を始めたかと思ったら、いつの間にか2人だけの世界になっていた。


 この雰囲気に、店長もつい流されちゃったりするのかも?



「ほほぉ、面白い提案ではありますね。

 しかし、それが成立するのは私の商品が()()()の奴隷であれば、の話ではありますが」



 おお、2人の感動的なシーンを目の当たりにしても、まだ店長は屈しないらしい。

 普通は、何かいい感じの雰囲気に流されてラドミラ解放からのハッピーエンドって展開でしょ?


 まったく、空気が読めない人だねぇ。



 ところで、僕はやることもないし、あの見るからにふかふかなソファーに座っててもいいかな?


 ふかふかソファーに、後はお茶とお菓子なんかがあれば最高の見世物になると思うんだけどなぁ~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ