森の迷子 2
いよいよ戦いも終盤という感じで、目の前では2人の少女の感動的なシーンが繰り広げられている。
もしこれが映画やアニメだったら、ここで助けが来たりするのかな?
いや、二人とも死んだ方が感動的なラストになるのかもね。
「コロス!コロス!」
「マテ! ユダン、ダメ!! ……カコム、ソレカラ、ヤル!」
彼女達の反撃を警戒しているのか、弓持ち以外のゴブリン5匹が2人の周囲を囲むように動き出した。
当然ながら都合良く助けなんて来るわけもなく、このまま行けば2人は殺されてしまうのだろう。
あっ、そういえば女は生け捕りにするんだっけ?
なるほどね。昨日ゴブリンの巣で見た光景はこうやって出来ていくのか。
「<ヒール>! ――お願い早く傷を癒してっ!」
「イケッ!」
「ギャギャッ! エモノ! タベル!」
「タベル、ダメ! イケドリ! イケドリ!!」
ヒールが発動したことが合図になったのか、取り囲んでいたゴブリン達が一斉に動き出した。
前衛の子は座り込みながらも弓を構えている。だけど、これでは倒せても一匹だろう。
もう戦闘は終わりだろうし、この後はどうしようかなぁ。
昨日と同じように、ゴブリンの後を付けてみようか?
だけど、またゴブリンの巣に行くのもね……。彼らが違うところから来たという線に賭ける……とか?
「カルラちゃんっ!」
「……お願い当たって!!」
苦し紛れに放った矢は襲い掛かるゴブリンの一匹に当たる――わけもなく、またもや避けられてしまった。
射線がバレバレだし、矢の速度もイマイチなのだから当たらなくて当然だ。
それは彼女も分かっていたのか、すぐに弓を手放して隠し持っていたナイフのようなものを取り出している。
また、激しく動いたためか、彼女の頭を覆っていたフードが脱げた。
まだ、彼女は諦めていないらしい。すごいなぁ。それとも、道連れを増やそうってことかな?
それなら気持ちは分かる。彼女は1人ってわけじゃないけど、人生の最後なんだしやっぱり一人でも多い方が……。
って、あれ……? あの子の耳って、もしかして……?
前衛の娘のフードの下から出てきたのは美少女……ということは置いておくとして、燃えるように真っ赤な髪と"先の尖った長い耳"だった。
長い耳といえば、ファンタジーではエルフの定番だ。
エルフといえば、ファンタジー世界に来たら、一度は会っておきたい種族の代表ではないだろうか。
街ではエルフって見かけたかな……、いや、それらしい人を見かけた記憶はない。
もしかして、エルフって希少な存在なのかも?
そんな(たぶん)希少なエルフは、今にもゴブリンの餌食になろうとしている。
うん、これは助けるしかないな。
森を歩けばすぐに見つかるゴブリンと、希少なエルフを天秤にかける必要もない。
昨日と同じようにゴブリン程度、さくっと倒してしまおう。
「<アイスショット>っ!」
「ギャッ!?」「グギャ!?」「ガァッ!!」
「な、なに!?」
2人に襲い掛かっていた5匹のゴブリンに、潜んでいた茂みから氷の礫をプレゼントする。
それと同時に、アイスショットが命中したのかも確認せず、少し離れたところにいる弓兵ゴブリンへと走り出す。
「ナンダ!? オマ――アグッ?!」
弓兵ゴブリンは急接近する僕に気付いたようで、こっちに弓を向けようとした。
隠密スキルを使っていても、さすがに目の前に出てくれば気づかれるようだ。
矢を放とうとした弓兵ゴブリンだったが、こちらは既に肉薄している。
反撃を許すこともなく、ダガーを突き刺すことができた。
……それにしても突き刺す時の加減が一番難しいね。
全力でやったらこのゴブリンも破裂しちゃうかもしれないし。
血塗れになっても、クリアを使えばキレイになるとはいえ出来れば避けたいからね。
というわけで、ダガーもこのゴブリンに刺さったままにしておこう。
「……あなたは誰? 助けて……くれたの?」
後ろを振り返ると、アイスショットもちゃんと命中していたようで、5匹のゴブリンは全滅していた。
彼女たちは無事なようだ。最悪、即死でなければヒールで治せるかなと考えていたが、無事なら何も問題ない。
当然のことながら、いきなり現れた僕に彼女たちは警戒しているみたいだ。
さて、この状況からどうしたらいいかな……。
後のことを考えずに動いてしまったけど、知らない女の子に声をかけるって、よく考えると高難易度イベントだよ。
……でも、待てよ。この状況って……ノラ達と出会った時と逆のような? だったら……。
「怪我は……してるようだね。……それならヒールを使――」
「このようなトコロで強者と出会えるトハな。雑魚も使いようト言うことか」
人が精一杯かっこつけようとしていたのに横槍を入れられた。
話が終わるまでくらい待ってほしいな……。
差し当たって言えるのは、連戦の予感がするってことだね。
21/05/05 本文修正。




