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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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思索 1

 3日目の朝になった。



 昨日はあの後、冒険者ギルドに薬草を納品して初依頼を終わらせた。


 依頼の達成報酬は銀貨5枚。これは少ないのかな?多いのかな?

 ……イマイチこの世界の金銭感覚が分かっていないけど、たぶん少ない方なんだと思う。

 だって、森で遭遇したモンスターの討伐報酬の方が多かったし(こちらは合計で金貨1枚にもなった)。


 ちなみに、報酬の計算から金貨1枚は銀貨100枚に相当することが分かった。



 まあ、初心者用の依頼だから仕方ないよね。

 おそらくは、もっと森の入り口の方にもあの薬草は生えていたんだと思う。

 そうじゃないと、初心者が毎回あんなところまで取りに行くのは大変だからね。


 とはいえ、討伐報酬が高かったのは、討伐したモンスターの数という要因も大きいようだ。

 換金の対応をした受付嬢が、新人が一日に倒す量ではないようなことを呆れ混じりに呟いていた。

 うん、変に注目を集めるのも面倒だから、今後は少しずつ換金することにしよう。



「今日からは、何しようかな~」



 お金の方は、ゴブリンの巣で金貨を100枚も手に入れたから、ノラから借りた分も含めて十分に集まった。

 というより、十分過ぎてしばらくは金銭のことは心配しなくても問題ないだろう。


 とりあえずは毎日払うのも手間だから、宿に一月分の宿泊代を前払いしておいたし、のんびりしていても何ら問題ない。



 この先、生きていく方法だって、何となく昨日一日で見つかったんじゃないかと思う。


 森に行ってモンスターを適当に狩ったり、薬草やらの採集依頼が出ているものを集めたりしていれば、この世界で生きていくことは出来そうな気がする。

 少なくとも贅沢をしなければ、それでやっていけるんじゃないかな。


 とは、思うんだけど……。それって、()()()()()なだけで、()()()()()にはならないんだよね。



 初めは異世界に来たんだからと、前世の世界との違いなんかが気になったりもして、何かやってみようという気になっていた。でも、魔法やスキルを試して、なんだか満足してしまった。


 まだまだこの世界のことを良く知らないし、探せばきっと面白いこともあるのだろう。

 でも、それがわざわざ生き続ける理由になるだろうか?

 ……僕には、生きることなんて、結局は前世と変わらないのではないかと思ってしまう。


 このまま生きる理由がなかったら、僕はまた自殺を選んでしまうだろう。


 現に僕はそれでもいいと思っているし、昨日の行動だって()()()()()()という考えから行っている面があった。



「生きたいから、生きる、か……」



 ゴブリンキングの言葉が頭に残っている。

 もう一度考えてみても、僕はそんな理由で生きることはできそうにない。

 ……だけど、あの時確かにその言葉は僕の心に響いた。


 前世でも似たような言葉を耳にしたことはある。

 だけど、その時は「ふーん、そうなんだ」くらいにしか思わなかったし、そんな生き方は虚しいとさえ感じていた。



 ――なのに、いったい何が違ったのだろう?



 あの言葉が僕の心に響いた理由、それは分からない。

 それでも、ゴブリンキングが生きるのに必死だったことだけは分かる。


 ……それなら、同じような状況――必死に生きようとしている誰か――なら、また同じように僕の心に響く理由を教えてくれるのではないだろうか?

 もしかしたら、そうやって知った中に僕にも理解できる、生きる理由があるかもしれない。



 そうだ、それはいい考えかも。

 当面は"生きる理由を見つけること"を現世での目的にしよう。


 まあ、面倒な気もするし、死んでしまえばこんなことを考えなくても済むのでは? と考えないでもないけどね。

 どの道いつかは死ぬんだし、最悪それまでの退屈凌ぎくらいにはなってくれるよね。



「それじゃあ早速、生きる理由探しを始めよう。

 ……とはいっても、それって何をすればいいんだろう?

 う~ん、こんなこと考えてもいい方法なんて浮かぶわけないよね……」


 ……考えても仕方ないなら、とりあえず昨日と同じように南の森へ行ってみようかな。

 昨日はそこで色々な収穫があったんだし、今日も何かしら見つかるさ。多分、きっと……。



「でも森まで移動するのが大変なんだよね……。何でタクシーもないの?

 ……この世界に来て初めて不便だって思った気がする。

 ん? 待てよ。そういえば魔法のところに……」



 魔法:

<テレポーテーション:Lv10>

 ・・・



 あった。これは、使えるのでは?……うん、これなら森まで簡単に行けそうだ。さっそく使ってみるか。

 えっと、行先は南の森の……昨日薬草を見つけた辺りでいいかな? <テレポーテーション>。


 一瞬の浮遊感の後、視界が切り替わる。


 今まで居た宿の部屋は消え去り、完全に森の中といった風景――というか南の森だ。

 移動時間は一瞬だし、場所の指定も頭の中に思い浮かべるだけだった。

 これは最高な移動手段だ。……ごめんなさい、この世界最高だったよ。

 タクシーなんて時代遅れだった。転移魔法で移動するのが最近の流行りだよね。



「それで、とりあえずで来ちゃったけど、これからどうしようかな?

 えっと、見える範囲には誰も……いない、ね。<ライフディテクト>」



 さすがに一日経って効果が切れてしまったライフディテクトを使い、周囲を探る。

 すると、少し離れたところに複数の反応が見つかった。


 こんな森の奥だし、またゴブリンかな? それとも獣? もしくは冒険者かも? 

 よし、何にしても誰かに会わないと達成出来ない目的なんだし、手当たり次第に行ってみようかな。

21/05/05 サブタイおよび本文修正。

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