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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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初めての冒険 5

 ゴブリンキングの必死な命乞いを目の当たりにしたせいか、先程までの奇妙な感覚は消えていた。


 それに、なぜ生きたいのかなんて、どうしてゴブリンに聞いてしまったか。自分でもよくわからない。

 でも、それが自然と頭に浮かんだ疑問だった。



「何故生キタイカダト!? 生キルコトニ理由ガ必要カッ?!

 ――俺ハ生キタイカラ、生キルンダ!! ソレ以外ノ何ガアル!?!」


「っっっ!!」



 生きたいから、生きる。彼の答えはそんな当然のことだった。


 確かに僕もそれは知っている。……だけど、きっとそれは()()()()()()()なんだろう。


 ただ生きたいがために生きるなんて、僕には拷問のようで理解することはできない。



「ドウダ、貴様ノ質問ニハ答エタゾ?!

 ソ、ソウダ、ココノ財宝ハ全テクレテヤル! ……コレデ満足シタカ?」


「……うん、そうだね。色々と参考になったよ。……ありがとう」



 理解はできない。それでも感銘のようなものを受けた気分だ。


 まさかゴブリンにこんなことを教わるとは思わなかった。

 道連れにする気も無くなったし、ここで死ぬのはやめておこう。



「?? ……ソ、ソウカ。ソレハ良カッタナ。デハ財宝ヲ持ッテ、スグニココヲ出ルトイイ」


「えっと。財宝はいいかな。それが目的で来たわけでもないし……」



 ゴブリン達が薬草を持っているみたいだったからここに来ただけだし、別に財宝はいらないよね。

 あっ、でもこれがあればノラに借りた分も返せるし、何もいらないというのは少し勿体(もったい)なかったかも……。



「何? ……ソレデハ女カ? 貴様ノ目的ハ捕エタ女共ノ解放カ?」


「うん? ああ、彼女たちね…………」



 倉庫エリアにいた彼女たちか……。確かにゴブリン達に犯され続けるのは不憫(ふびん)だし、ついでに助けてあげようかな。

 ……けど、助けたとしてそれをどう説明しよう。


 ゴブリンと交渉して、解放してもらったなんて信じてくれるかな?

 この世界のゴブリンの立ち位置を良く知らないけど、少なくとも街中で生活しているゴブリンは見なかった。

 それに、このゴブリンキングは例外としても、ゴブリン達に人間と交渉する知能があるとは思えない。


 何より、冒険者ギルドで大っぴらに討伐対象にまでされているんだ。

 まさかそんな相手と交渉するのが一般的だとは到底考えられない。



 どう考えても、交渉して彼女たちを解放したなんて信じられないだろう。

 かといって、いまからゴブリン達を倒すとか、彼らと戦うフリをして、助けたように装うとかそんなことをするのも面倒だよね。



「いいや、彼女たちが目的でもないよ。

 欲しいのはチユ草っていう薬草なんだけど、キミたちも傷薬として使ってるよね?

 どこに生えてるか知らないかな?」


「薬草? アア、アレノコトカ。群生地ヲ知ッテイルガ……本当ニソレガ目当テナノカ?」


「うん、そうだよ。その群生地ってやつ教えてくれるかな?」


「……配下ニ案内サセヨウ。ソレデ目的トヤラハ全テカ……?」


「そうだね。これで目的は達成なんだけど……、やっぱりその……金貨、少しもらってもいいかな?」


「…………アア、好キニシロ……」



 せっかくだから、ノラから借りた分くらいはもらっておこうかな。

 たぶん金貨100枚くらいあれば足りるよね?


 あ、そうだ。これはゴブリンの巣の攻略報酬ってことにしよう。




 ***




「ヤクソウ、アノ、クサ」


「<鑑定>。……うん、確かにチユ草のようだね」


「アレ、キズニヌル、ナオリ、ハヤイ」



 ゴブリンの巣から出て、近くにあるというチユ草の群生地まで案内してもらった。


 冒険者ギルドで見たチユ草と同じものなのかよく分からないけど、鑑定スキルもチユ草だといっているし、間違いないのだろう。

 ……やっぱり、僕にはただの草にしか見えないけどね。



「案内ご苦労様。そうだ。キングにも薬草助かったよって伝えといてくれるかな?」


「ワカッタ、ツタエル」



 あの広間を出た後は、複数のゴブリンが囲むように洞窟の外まで送ってくれたけど、そこからはこのゴブリンが一匹で案内してくれることになった。

 広間にいたゴブリンと比べると頼りない気もするけど、しっかりとお使いはできるようだ。


 というか、これが薬草だと分かっている……?

 それってこのゴブリンも鑑定スキルを持っているからだよね?

 ……ゴブリンより劣っているとは考えたくないんだけど。



「ドウシタ? トラナイ、ノカ?」


「え? えっと、そうだね。遠慮なくもらっていくよ」



 やめよう。こんなこと考えても、悲しくなるだけだ。

 ……とりあえずは、チユ草が手に入ったことを喜んでおこう。



「アンナイ、オワッタ。オレ、カエル」


「ああ、うん。じゃあね。道案内ありがとう」



 道案内ゴブリンはトコトコと来た道を戻っていった。


 実のところ案内中に襲われるかも、とか考えていたがそんな仕草もなかった。

 ゴブリンって意外と話せば分かる種族なのかもしれないね。



「さてと、チユ草を摘んでしまおうか。

 これだけあれば十分……というか絶対、依頼の量よりも多いよね」



 チユ草らしき植物(鑑定スキル調べ)は、そこら中に咲いていた。

 ゴブリン達も使っているものなのだから、全部摘んだりはしないけど、またここに来ればチユ草採取の依頼は簡単に達成できそうだ。



「よし、これで初依頼は完了だね。今日はもう街に帰ろっと。

 ……あれ? こんなスキル使ったかな?」



 ログウィンドウ

『諦観』が発動しました。



 ふとログウィンドウを見ると、使用した覚えのないスキル? 魔法? が載っていた。

 そういえば、ステータスの特殊能力とかいう欄に『諦観』と書かれていた。

 でも、いつ使ったのかな……? こんなもの使った記憶がないのだけど……もしかして自動的に発動した?

 まあ、そういうタイプの能力もあるか。それで、これはどういう効果なのかな?


 他の魔法やスキルは意識を向けるだけで、効果など全ての情報が頭の中に入ってきた。


 しかし、どれだけ集中しても、この『諦観』だけは何の効果も分からなかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんやこの作品。 出鼻から怪しいなとは思ってたけど、「死んでもいいや〜」とかほざきながら主人公びっくりするぐらい自分本位の自己中女やん。 人生満足してって理由で自害する時も多くの他人に…
[一言] ゴブリンを殺さないなんて、人を助けない! 女主人公は嫌いです......
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