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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
1章 終わりと始まり
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初めての冒険 2

 とりあえず、モンスターを求めて森の奥まで進んでみた。


 道中ではゴブリンだけでなく、狼や猪、熊といった前世で見たことがある獣みたいなモンスターに遭遇した。

 それらに色々な攻撃魔法を試してみたが、すべて一撃で死んでしまった。

 ちょっと拍子抜けだ。転生直後に出会ったゴブリンを、必要以上に危険視してしまったのかもしれない。


 少しは戦闘にも慣れてきたし、モンスターを殺した時の嫌悪感も大分薄れてきたと思う。

 討伐証明用に死体の一部を剥ぐのは、まだ抵抗があるけどね。



 やはりファンタジーといえば魔法だし、魔法が使えるだけでこんなに楽に戦闘ができるのか……。

 とはいえ、さすがに魔法強過ぎじゃないかな?

 これがゲームならバランスブレイカーになるんじゃないかと心配だよ。


 それに、今はまだ魔法を使うモンスターがいないからいいけど、敵も同じように使える可能性を考えると安易に喜べない。

 そうなったら、呆気なく死ぬかもしれないし、やりたいことは早々に片付けないと。



「魔法が有効なことは分かったし、次はこのダガーを使ってみようかな?」



 だけど接近戦って怖いよね。安全に敵に近づける方法があればいいんだけど……。


 思い切って魔法専門でやっていくとか?

 多種多様な魔法が使えるようだし、魔力的なものも尽きる感じがしない。

 これなら魔術師としてやっていかれそうだ。


 でもせっかくだから、ダガーとバックラーも使ってみたいんだよね。

 何かいい方法はないかな……。



「そういえば、あれを使えばいけるかな? <インビジブル>」



 これで僕の姿は透明になった……はず何だけど、自分ではよく分からない。

 手とか少し透けているような気もするし、これで他人からは見えないのかな?


 こういう時はモンスターで試してみるのが一番だ。

 気付かれたらすぐに魔法で倒せるよう、準備はしておこう。


 えっと、近くのモンスターは、あっちかな。



「ココ、エモノ、イナイ」


「モドルカ?」



 2匹のゴブリンが話し合っているところを見つけた。

 数も少ないし、透明になっているか試すには好都合だろう。


 さて、本当に僕は見えてないのかな?



「ン? オト、スル?」


「アッチカ?」


「……イナイ?」



 ゴブリンに向けて歩き出すと、足音に気付いたようでこちらの方を警戒し出した。


 位置は完全にゴブリンの視界範囲だから、姿は見えていないのだろう。

 なるほどね。音のことは忘れていた。


 たしか音を消す魔法もあったはず、サイレ……。

 待てよ。魔法を唱えたら気付かれるよね。

 それじゃあ、アクションウィンドウから選んで……いや、元々魔法って口で唱える必要あるのかな?


<サイレンス>。心の中で唱えてみた。これでも発動するような気がするんだよね。



 わざと音を立てるように、ゴブリン達が見ている方角とは別の方向に移動してみる。


 今度は気付いていないようだ。やっぱり心の中で使いたいと意識するだけで良かったらしい。

 これが無詠唱というやつかな? うーん、どうだろう。よく考えたらこの世界の魔法を良く知らないや。

 でも、ユリアは魔法を唱えていたような?……考えても仕方ないか。



「キノセイカ?」


「ケイカイ、ダイジ」



 ゴブリン達の意識は、未だにさっきまで僕が居た方向に向いている。

 今は、目の前のゴブリンを片付けよう。


 近くまで忍び寄ったが、やはり僕に気付いた様子はない。

 インビジブルとサイレンスは、しっかりとその効果を発揮しているようだ。

 ……ついでに、クリーンエアが匂いを消しているのも良かったのかもしれない。



「あとはこのダガーを突き刺すだけ……」



 突き刺したとして一撃で倒せるだろうか? やるなら一番防御力が薄そうな所を狙いたい。

 首がいいかな? よく見える急所だし、ここがいいだろう。



「よし、いくぞ……っ!」



 いざやろうと思うと躊躇してしまう。だけど、ここまで来て止める気にもならなかった。

 一瞬の後、振り下ろしたダガーは無防備なゴブリンの首筋に吸い込まれていく。


 そして、水が詰まったゴム袋に刃物を突き刺したような感触が伝わってきた。



「ゴフッ!?」「ナンダっ!?」



 もう一匹のゴブリンは、突然目の前で仲間がやられて混乱しているようだ。

<アイスショット>。こちらは準備していた魔法で仕留めておこう。



「ふう、死んだ、よね……?」



 ダガーを持つ手は震えている。

 2匹のゴブリンが死んでいることを確認して、現状をはっきりと認識する。


 これが自分の手で殺す感覚か……不快感は魔法で殺した時と比べものにならない。


 はあ、死体からダガーを回収しないと。

 手に残る不快な感触を味わいながらもダガーを引き抜くと、噴き出した返り血を浴びてしまった。


 ……ここに来るまでに魔法によるものとはいえ、殺すことに慣れていてよかった。

 そうでなかったら、今回はさすがに吐いていたかもしれない。



「<クリア>。……血まできれいになるなんて、魔法って本当に便利だよね」



 これで接近戦も経験できた。いや、これを接近戦と呼んでいいのだろうか?

 どちらかといえば暗殺術とか、そういう類だった気がする。


 やはりメインは魔法だね。

 ダガーは敵に近づかれた時とか、どうしようもない時に使えばいいかな?

 ……あと相手を確実に仕留めたい場合も有効かもね。魔法ってちゃんと倒せたか不安になるんだよ。



「ひとまずモンスターとの戦闘は問題ないことが分かったし、そろそろチユ草を探そうかな」


 とはいっても全く探していなかった訳ではないけどね。

 一応モンスター探しのついでにそれっぽい草がないか探してはいた。


 実物を見たこともない草だったから、初めは他の草と見分けられるのか不安だったけど、そこら辺は<鑑定>スキルを使うことで解決できた。

 草を鑑定すると、その名前や成分、それと用途などが読み取れた。

 これがあればチユ草を見分けることができるだろう。


 ちなみにゴブリンや狼などを鑑定しても何の情報も得られなかった。

 生き物というか動物はダメなのかな?



「探すと言ってもどうしよう? この森結構広そうだし、闇雲に探しても見つかる気がしない」



 Fランクの依頼なんだから、チュートリアル的な依頼だと思ったんだけどなあ。

 ……こういう時は、魔法やスキルを見てみよう。解決策の1つや2つ転がっている気がする。



「まず魔法はどうだろう。……ううん? このゴブリンに付いてるのは、まさか……」



<鑑定>。……やっぱりそうだ、これってチユ草をすり潰したものだ。

 ポーションの材料になるって話だけど、直接塗っても効果があるみたいだね。


 それは置いておくとして、ゴブリン達も怪我した時にチユ草を使っているらしい。

 だったら、ゴブリンについて行けば、チユ草が生えている場所が見つかるかもしれない。



「よし、次はゴブリン探しだ。あれ、結局やってることは変わってないような……?」

21/05/04 本文修正。

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