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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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輝く花 3

「ねーどこまでいくのー? そろそろ教えてよー、ニコちゃんってばぁー」


「ん? んーー、いや。もうちょっとしたら話すわ。

 ま、行けばわかんだから、あんま心配すんなって」



 翌日。僕達『雷槌』の三人は、近隣にある山の山道を歩いていた。


 目的地は……説明したくてもフローラと僕は教えてもらえてないから、何も言えないね。

 二コラが先導するままに付いて行くだけだよ。


 でもなんかこの道、見覚えがあるような気が……って、そうだよここ。

 何日か前にも来たことあったよ。確かあの時は、ハーピーに追いかけられて大変だったなぁ。



「むぅぅぅ、意地悪ニコちゃん……。

 あーあ。わたし、足いたくなってきちゃったなー。教えてくれないんじゃあ、もう歩けないなぁー」


「え、大丈夫? <ヒール>、とりあえず回復魔法使ってみたけど、どうかな?

 痛みと、それから疲労も回復するはずなんだけど……」



 明らかにフローラの機嫌が傾き始めた事を察知したので、即座に回復魔法を飛ばしておいた。

 二コラは素っ気ないところがあるからね。フローラのサポートくらいはしてあげようかな。



「……っ! すごいっ、疲れが消えちゃったみたい!

 これならどこまでも歩けるね、アーちゃ……じゃないのっ! そうじゃなくて――」


「GAAWOOOOOOOOOOOO」



 何かが気に入らなかったのか、喚き出したフローラの話を聞いていたら謎の咆哮(ほうこう)(とどろ)いた。

 咄嗟に頭へ浮かんで来たのは昨日の熊――だったけど、記憶の中のそれと比べてしまえば迫力が明らかに違っている。



「ぁぅっ!? ね、ねえっ、みてみてっ!? アレなに!!?」


「う、そだろ……?」



 頭上を確認した二人が驚きのあまり絶句してる。

 確かに、空を舞うそれはあまりに大きく、影なんて僕達三人を包み込んでもまだ余り有る程だ。


 ……これくらい勿体ぶればいいかな? ま、いいよね。

 いやぁ、実は大したものじゃないから、サラっと言うけど――



「ああうん、ワイバーンね。流石に飛ぶのは速いよね、もう行っちゃったよ」


「……気づかれなかったな。ふぅ、命拾いしたぁ」


「いまのがワイバーンなの……? 尻尾、なかった……」


「ん? 尻尾? あー、言われてみればそうだね。

 尻尾生えてなかったかも。どこかに落として来ちゃったのかな?」



 ノラ達と出会ったワイバーンには、長いのが生えてたしね。

 武器みたいに使ってたの何となく覚えてるよ。


 もしかして、着脱式だったりする?



「おい、まさかワイバーンと戦おうなんて考えてるわけ――」


「まてーっ、金貨ひゃくまーいっ! わたしの魔法でたおしちゃうんだからぁ!!」


「ちょっ、マッ!? フローラこそ、待てって!!

 ……ほ、本気かよ」



 そういえば、ギルドに貼ってあった依頼に、報酬は金貨百枚って書いてあったね。

 ふーん、フローラもアレを見てたのか。


 まだこの世界の金銭感覚がフワッとしてる僕でも、それが結構な額だってのは何となく分かるし、彼女が狙いたくなっちゃう気持ちも頷けるよ。



「アイリスっ! あいつを一人にするわけにはいかないし、早く追いかけるぞ!!」


「うん、それはもちろん。

 でも、その後は? ワイバーン探しを一緒にして、戦うの?」


「ぅっ、それは……状況次第だが、必要ならたたか――いや、戦闘は絶対に避けるぞ。完全に無謀だからな。

 はぁ、だけどあいつ。一度決めると聞かないからなぁ……強引に止めさせようとしたら、一人で探すとか言い出しかねないし。

 とりあえず、もっと近くからアレを見せて、怖さを分からせるしかないだろ」



 なるほどね。二コラとしては"戦闘"は選択肢にもないと。

 ――ま、仕方ないね。


 ノラ達も簡単に壊滅したくらいだから、強敵っていうのが一般的な認識になってるんだろうね。

 僕達みたいな低ランクの冒険者が戦うのは、きっと自殺行為に等しいのかな。




 ***




 その後、尻尾のないワイバーンを見て一人駆けだしたフローラには、あっさりと追いつくことが出来た。

 というより、すぐにバテちゃったみたいで、今は僕が手を引いて歩いてるくらいだよ。



「うぅぅぅ……ワイバーンさん、どこまでいっちゃったの?

 はやいよぉ、もどってきてよぉ……」


「うんうん、そうだよね? 勝手に飛んでったワイバーンが全部悪いよ、フローラは何も悪くない。

 ――ってことで。そろそろ回復魔法使ってもいいと思うんだけどー……ど、どうかな?」



 そしてなぜ彼女に魔法を使ってないかといえば、二コラから「体力がもどったら、また一人で突っ走るからダメだ」と言われてしまったからだ。

 意外と厳しいよね。もっと素直になって、甘々にしてもいいんだよ?



「ああ回復させていいぞ。それと――こっからは静かに。

 かすかにだが、羽音と鳴き声が聞こえる……かなり近づいてるな」



 えーと、生命反応の位置も彼女が真剣に見つめる先と一致するね。

 それじゃあ、ほぼ発見出来たみたいだから、二コラのナビに従えば大丈夫かな。



「はい了解、からの<ヒール>っと」


「――~~っ、アーちゃんありがと~! ……あ、静かにしないとだった。

(じゃあ、こうやって小さな声で話すようにしようねアーちゃん)」


「っっ! (だ、だねっ。五月蠅(うるさ)くすると二コラに怒られちゃうから、き、気を付けないとなぁ……)」



 元々、手を繋いでいたのでかなり近かった距離を、さらに詰めて(ささや)くように話すフローラ。

 もう密着状態だよ~。しかも耳元に暖かな吐息があたって……ぁっ。



「…………」



 加えて、二コラから向けられる「コイツら本当に連れて行っても大丈夫か……?」って感じの、(あき)れた視線が心地いいね!

 という、とても(なご)やかな空気――二コラとフローラからすれば、あくまでも真剣――でワイバーン探しを始める僕達だった。

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