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アスカリオン2

 言っていることが真実なら、相当手強い相手だ。

 冒険者とは一人では達成出来ないからパーティ組んだり、ランク分けをしている。


「テリオラとは本当に一人だけで、Sランクまで到達したのか?」


 テオールは、天井を見上げて語り出す。


「うむ……今は冒険者組合長をしているが、テリオラと私は同時期に冒険者なったのだ」

「当時、テリオラはCランクのパーティに新人ながらスカウトされたのだ。それからのパーティの勢いは凄まじかった」


 その後、テリオラのパーティはBランクに昇格した。

 しかし、昇格後すぐにパーティは解散した。パーティ内で、内輪揉めが起きたのが理由だが、テリオラの不運はまだ続く。

 

 幼馴染の恋人を、悪質な冒険者パーティに殺害されてしまった。

 結婚式を挙げる三日前の出来事だった。


 事件から二年が経った頃。突如、テリオラは冒険者として復帰をする。


 パーティは組まず、がむしゃらになって依頼を受注した。

 更に、復帰から一年が経過した頃には、最高峰のSランク冒険者となった。


 しかし、昇格からすぐにテリオラはマルテリアから姿を消した。


 今から十年程前、殺戮集団の【アスカリオン】を引き連れて、冒険者パーティを無差別に襲った。


 怪我人と死者を合わせて、百人以上出る大事件になった。マルテリア史上最悪の罪人として、全ての街で指名手配されたのだった。




「それからは最初に話し通りだ……奴が脱獄したということは、もう一度十年前の事件を起こすつもりだろう」


 そんなことが起きたら、平和なマルテリアが地獄へと化してしまう。

 十年もの年月をかけて作り上げた平和が、一つの事件によって無駄になるなんて、許せない。


「【アスカリオン】の根城は既に分かっているんだ! 大きな事件になる前に、対処しておくのが得策ではないか」


 ユリウスとセリスの二人も賛同するが、組合長のテオールに動き出す気は無い様子だ。


「組合長、貴方が動かないのであれば冒険者達は動かない。それなら、僕達がテリオラの対処をするがいいか?」


 テオールは顔を下に向けて返事がない。

 本当に、このままテリオラを放置しておくつもりなのか?


 僕は放置するのは断固反対だ。

 ユリウスとセリスに最終確認をする。


「二人とも、僕は【アスカリオン】へ攻撃を仕掛けるつもりだけど、どうする?」


 ユリウスとセリスは向き合い、笑顔でハイタッチをする。


「勿論、私とセリスも同行するさ! 聞かなくても分かっていただろうに」

「私達がしないと誰がするのよ! 冒険者の組合長って案外、臆病なのね」


 今回に限っては、相手が相手だったから心配になっていた。

 だけど、二人が一緒ならテリオラにだって負ける気がしない。


「それじゃあ、僕達は失礼します。組合長には心底、ガッカリしました」


 その場を後にしようと冒険者組合を出る。

 出てすぐに冒険者組合の扉が開き、テオールが飛び出てきた。


「待て。本当に君達の三人で乗り込むつもりか? 勝てる勝算でもあるのか?」

「先程も言った通り、僕達の三人で乗り込みます。勝算も何も、ユリウスとセリスがいれば、負ける訳がない」


 テオールは呆気に取られたまま、その場で膝をついて囁く。


「何を言っているんだ……Fランクの二人と、Bランクの冒険者の三人で、勝てる訳ないではないか」



 倒れ込んだテオールから振り返り、鍛冶屋のドワーフの主人の元へ訪ねる。

 盗人の犯人が分かったことを伝えた。


「だから【アスカリオン】のメンバーが今まで、盗みに入っていた」

「僕達は貴方の相談に乗ることにした。盗まれた物を取り返し、貴方の元まで必ず届けてみせます」


 ドワーフの主人はこの間の出来事をもう一度、謝罪し僕達に大事な物を授けてくれた。


「これら全てはわしが造った最高傑作の剣と防具じゃ……これでワシを……この街を救っておくれ」


 授かったのは鉱石の中で、最高峰の【オリハルコン】で造られた剣と防具だった。

 それとは他に、ユリウスとセリスの為に軽くて頑丈な鉱石で造られた防具を授かった。


 御礼をして鍛冶屋を後にする。

 宿に戻り、【アスカリオン】に乗り込む為の作戦会議をした。


「ユリウスとセリスにはテリオラ以外を相手にして欲しい。その間に僕は、テリオラを捉えて拘束する」


 二人とも心配そうに僕を見る。

 僕にテリオラの相手が出来ないと思っているのだろう。


「大丈夫さ! 僕は対モンスターは苦手だけど、対人間の場合、それなりに自身がある」


 理由は単純にモンスターの場合、本能に任せて考えなしに行動する。

 人間の場合は必ず、頭で考えてから体を動かす。それさえ読めれば簡単に対処できる。


 元々、騎士の才能はなかったけど参謀としては才能のある方だと思っている。


「もしも、少しでも負けると思ったら、すぐに助けを求めるよ! その時は二人とも来てくれるかな?」

「ソウマがキッパリと、言う時の言葉は嘘がない。 私はソウマを信じるさ!」

「私がすぐに助けに行くよ! そうなる前に幹部達を全て倒して行くけどね」

「あはは、二人ならそう言うと思っていた」


 作戦会議中だというのに、皆んなの笑みがこぼれる。相変わらず、一緒にいると安心して微笑んでしまう。


 次の日の夜。作戦が始まった。

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