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アスカリオン

 勝手に入った僕達にも非がある。両者ともに謝罪してから本題に入ろう。


「店の主人に許可なく入ってしまったことを詫びる……すまなかった」

「僕達は決して、盗みに入った訳じゃないんだ! それだけは信用してくれ」


 双方に武器を納め、家を建てる為の費用について聞いた。

 費用は膨大な額が必要だと知り、改めて家を建てるかどうか、三人で相談することにした。


「僕達は帰るよ。勝手に入って、本当に申し訳ない」

「待っておくれ。其方らに相談したいことがあるのじゃが……」


 相談する内容は恐らく、今日の出来事に関するものだろう。僕も助けてあげたいけど、すぐには無理なんだ。


「相談内容は盗人についてか? それなら、冒険者組合に依頼した方が早いと思う」

「僕達は冒険者だから、組合に許可なく依頼を受けてはならないんだ」


 ドワーフの主人は頭を地面につけて、土下座した。


「既に組合にも持ちかけているが、一向に受注する冒険者がいないのじゃ!」


 冒険者組合は、盗人の正体が不明な為、ランクの付け方に困っているのだろう。

 もしも、盗賊団の一員が犯人ならば一つの組合と喧嘩を始めるようなものだ。


「事情はよくわかった……少しパーティメンバーと話したいことがあるから、悪いが後日また訪れる」


 鍛冶屋を出て、僕とユリウスの宿に帰る。


「ソウマ、鍛冶屋で言っていた話って何のことなんだい?」

 

 ユリウスが話しの内容を聞いた。

 本当はすぐにでもドワーフの主人を助けたいが、パーティメンバーに許可なくそんなことは出来ない。


「二人に相談したい、僕はドワーフの主人を助けたい! でも、二人に相談してから決めようと思っている」

「だけど、僕だけじゃ本当に助けられるかどうかわからない。二人が拒否するなら僕は諦める」


 どんな相手かわからなければ、二人を危険な目に遭わせるかもしれない。


「何を言ってるのよ! ソウマがドワーフの主人を助けるって言うのなら私とユリウスは拒否なんてしないよ」

「ソウマがリーダーなんだ! それに私は、一人でも助けるつもりでいたさ」


 思っていた通り、ユリウスとセリスなら、賛成してくれると信じていた。


「聞いた僕が馬鹿だったよ。決まりだ! 犯人が誰であろうと、僕達はドワーフの主人を助ける」


 だけど、念には念をだ。

 今日のうちに、ドワーフの主人には仮に助けないと伝えて、相手の盗人に情報を漏らさないようにする。

 盗みに入るなら、夜から朝にかけてやって来るだろう。


 鍛冶屋の屋根上で監視して、持ち去ったあとを追跡し、そいつの背後に盗賊団が構えているのが分かれば、その場で逃して根城に帰る所を追跡する。


 根城が分かれば組合に事情を説明して、冒険者達を編成してもらい、総攻撃を仕掛けて壊滅させる。


「作戦は以下の通りでいこうと思う。何か意見はある?」


 二人とも頷いて承認した。


「了解した、それでいこう」

「私も意見なんてないわよ!」

「ありがとう……では早速、作戦に取り掛かる!」


 初日の夜は僕とユリウスが監視についていたが、怪しい人間は現れず、朝になった。

 それから監視を毎日していたが、犯人がやって来ることはなかった。


 そして、一週間後の夜中にようやく、犯人が訪れた。

 真っ黒のマントを羽織り、顔を可笑しな仮面で隠している。間違いなく、こいつが犯人だろう。


 扉の鍵を鉄の針金でこじ開け、静かに中へと入ってく。特殊な加工で造られている剣を数本、手慣れた様子で鞄に入れた。


 鍛冶屋を出た後、仮面の犯人を追跡し、背後の組織を炙り出す。


 仮面の犯人が向かった先は、マルテリアの地下にあった盗賊団の根城だった。

 数人の仲間に仮面の犯人は、『逆襲の刻』という合言葉を伝えて根城の中へと入って行った。


 後日、この件を冒険者組合に伝える為、出向いた。


「昨日の夜、可笑しな仮面をした奴がこの街の地下にある根城へと入っていくのを見た」


 そのことを、受付の女性に伝えると、マルテリアの冒険者組合長が相談に応じた。


「私はマルテリア冒険者組合長のマリッジ・テオールという。地下の根城を見つけたとは本当か?」

「本当だ。可笑しな仮面をした奴が、地下の根城に入っていくのを見たんだ」


 テオールは大きな、ため息をつく。

 葉巻に火をつけ、頭を抱えた。


「それで仮面の奴は、『逆襲の刻』という合言葉を使っていた」


 テオールの目つきが変わり、椅子から立ち上がった。


「確かに仮面の奴は『逆襲の刻』と言ったのか!?」

「間違いなく、そう言っていた……」


 ユリウスが気になっていたことをテオールに問いただす。


「テオールさんは、何か事情を知っているのか? 先程から、貧乏揺すりが止まらないじゃないか」


 貧乏揺すりが止まり、ゆっくりと椅子に座って、口を開く。


「全てを知っている訳ではないが、仮面の奴は、【アスカリオン】という盗賊団の一員だ」

「十年前に【アスカリオン】のリーダー、テリオラを捕まえたのだが丁度、三月前にテリオラは脱獄したのだ」


 テリオラが監獄にいる間、常に口にしていたのが『逆襲の刻』という言葉らしい。

 そして、恨みを返す為にマルテリアに帰ってきたと言う。


「テリオラとは何者なんだ? 監獄を脱獄するなんて、簡単にできることじゃない」

「テリオラとは、冒険者の中で一番最初に最高ランクのSランクに到達した。パーティでなく、たったの一人でだ!」

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