試験の合間に
まさかの【光】属性が二人もいたことに、冒険者組合は慌ただしくなっていく。
ユリウスとセリスは壁を背に、物知り爺さんや試験官から質問攻めに合っている。困った顔で応える二人を羨ましく思った。
僕にもそれがあればと……。
質問攻めに合うユリウスは、戸惑いながらもその場から脱した。
「魔力や属性はわかったから、早く試験の続きをしよう! 私は武闘家だから属性になんて、興味は無いんだ」
試験官は落ち着きを取り戻し、試験を再開した。同時に、遅れてセリスが物知り爺さんの質問攻めから逃げ出してきた。
「興奮してしまってすまない……私も初めて見たものだから」
「さて、魔力試験は終了し実戦試験の方にかかる! 装備を整えて五分後にまた、闘技場に来てくれ」
試験官は今でも興奮している、爺さんを闘技場から連れ出し、出て行った。
忘れてはいたけど、魔力量はまだ聞いていないんだけど……。まぁ、それどころじゃなかったか。
装備を整える二人に歩み寄り、邪魔をしないように様子を伺ってみる。
「二人とも魔力試験お疲れ様……色々と災難だったね」
セリスが口を膨らまして愚痴を漏らした。
「そうだよ! 私達は冒険者になれれば属性なんてどうでもいいのよ!」
「それなのに、『一体、何故【光】属性なんだ』って何度も何度も……」
セリスの愚痴に便乗してユリウスまでもが愚痴を漏らす。
「何故かって……そんなの私達が先に聞きたいさ! それに、お爺さんなんて聞く時に胸を触ってきたし、絶対に許せない!」
ユリウスとセリスはお怒りの様子だ。怒りながらも準備する二人に、同情しながらも呟く。
「ま……まぁ、二人とも次の実戦試験、頑張ってね。その怒りを試験官に全てぶつけるんだ!」
ユリウスがぶつけたいのは、お爺さんの方だと思うけど。
「ソウマ見ててくれ! 絶対に勝つよ」
「私も勝って、絶対に合格してみせるよ」
別に勝たなくても【光】属性の時点で恐らく、二人とも合格だと思う。勝てるなら勝った方が間違いないけど。
「しっかりと二人を見守るよ! 試験官は多分だけど、槍使いだから間合いさえ掴めれば、二人なら勝てるよ!」
ユリウスとセリスが、装備を整える手を止めて、僕の方を不思議そうに見る。
「試験官が槍使いってわかるの? 試験官って腰に剣をつけていたよ?」
セリスが首を傾げて問いかける。
「多分だけど、腰にあった剣は槍が無い時の為にある、予備の物だよ」
「それに、剣は少し古びていたし見えにくいけど、刃こぼれもしていた」
ユリウスがゆっくりと歩み寄り、更に問いかけてくる。
「そうだとしても、何で槍使いだってわかるんだい? 槍じゃなくても、短剣や大剣なんかの可能性もあるのに何でなんだ?」
説明する為に、両腕の袖を捲り上げて腕を見せて説明した。
「僕は騎士だから剣を使って戦う。その証拠に、剣を両腕で持つから腕の太さが、あまり変わらないんだ」
「でも、試験官は右腕だけ異常に太かったんだよ! 恐らく、槍を右腕だけで持って、左腕は槍を支えるだけだからだと思う」
実際に装備を見てみないとわからないんだけど、腕を見た感じそう思った。
それに、ウルカ達のパーティに槍使いが、腕のことを言っていたからだ。
「まぁ、槍使いだと思った理由はそれだけかな……間違ってたらごめん!」
謝る頭を上げると、ユリウスとセリスは顔を合わせて微笑む。僕の予想を笑っているのな。
「やっぱり、槍使いじゃないかな? 僕の見間違いかもしれないし……」
「違うよ! 改めて、ソウマは凄い人だなって、ユリウスと言っていたんだよ!」
「そうだよ! 普通の人だったら、絶対に気付けないさ!」
そうなのかな? 褒められてると思うと嬉しいな。
そんなことを話している間に、試験官が闘技場に戻ってきた。
「装備の準備は終わったか? 実戦試験の説明をしたいからこちらに来てくれ」
まだ、準備が終わっていなかったユリウスとセリスは慌てて、準備して試験官の元に向かった。
「実戦試験は試験官の私と模擬戦をしてもらう。負けても不合格って訳じゃないから全力でかかってきてくれ」
「魔力を使用するのは禁止で、どちらが負けを認めたら終了だ。試験の合否は私が決めさせてもらう……以上だ!」
実戦試験の説明が終わり、僕とセリスは闘技場の観覧席に移動し、ユリウスから模擬戦を始めることになった。
試験官は思った通り、槍を装備している。
対する武闘家のユリウスは、ナックルを装備し、全身に武闘家用の防護装備を装着している。
「では、実戦試験の模擬戦を始める! 心してかかってきてくれ!」
ユリウスは地面を勢いよく踏み込み、気合を入れる。
「本当に槍を装備してるなんて……ソウマの言った通りだ」
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