冒険者登録証試験
僕とユリウス、セリスの三人は冒険者組合の前まで来ていた。
「さぁ、冒険者組合に着いたよ……二人とも頑張ってね」
冒険者登録証は誰でも作れるが、冒険者として活動する場合、モンスターとの戦闘になると危険が伴う為、試験が設けられる。
ユリウスとセリスは冒険者登録試験があることを知らないのは、冒険者組合に向かっている時に知った。
冒険者登録証を作成した後は、そのまま依頼を受けられると思っていたそうだ。
「うぅー、少し緊張してきた……」
「よし……頑張ろう!」
セリスが不安そうに呟く。
そんなセリスとは裏腹にユリウスは拳をぶつけて気合を入れている。
冒険者組合の扉を開け、僕を先頭に入っていく。組合の中には強そうな冒険者が沢山いてらセリスは更に不安になっていく。
冒険者は男性が九割を占めていて、女性は一割ほどしかいない。
女性のセリスが不安がるのも仕方のない。
組合の受付は複数あり、ランク毎に分かれている。
今日は冒険者登録試験を受けるから、最低ランクのGランクの受付へ向かう。
「あの、すいません。登録試験を受けたいのですけど……」
「登録試験を受けるのは三名でよろしいでしょうか?」
「いえ、僕は既に登録済みなので、後ろにいる二人が受けます」
「了解致しました! 試験官の人を呼びに参りますので、席に座ってお待ちください!」
待っている間は、どんな試験内容なのかを軽く二人に教える。どんな内容か分かっていた方が気楽だ。
試験内容は二つ。
一つ目は魔力試験。
単純に自身の魔力がどれほどあるのかを測定する。
魔力は身体を強化できたり、武器に纏うことだってできる。
人ごとに魔力の量と、適正な属性が決まっていて一人一属性が普通だ。
大昔に世界を救ったとされる、勇者パーティのメイジは魔力量が膨大で、どんな魔法でも使えると言われている。属性は【闇】と【光】以外の三属性だった。
【火】【水】【木】【闇】【光】
この五属性が全てで、【闇】【光】は殆ど稀にしか宿らないと言われている。
二つ目が体の実戦試験。
試験官と一対一の模擬戦を行い、試験官が合否を決める。
負けたからといって不合格ではなく、模擬戦の内容で評価は変わる。
模擬戦でのルールは、魔力の使用は禁止とされ、メイジの人も武器を持って戦わなければならない。
勝ち負けはどちらかが、負けを認めて決めるものとする。
以上が冒険者登録試験の内容だ。
余程のことが無い限り、不合格にはならない。気弱な僕でさえ合格できたのだから。
「試験内容はこんな感じだけど、二人ともどうかな?」
「んー、魔力はあまり自身が無いなぁ……」
「私も魔力なんて測ったことないよ……」
二人共、魔力に自身がないみたいだけど、ユリウスは拳でセリスはレイピアだから魔力は必須って訳ではない。
「大丈夫だよ! 魔力がどれだけ低くても実戦試験で、結果を残せば誰だって必ず合格できるよ!」
セリスは緊張が少しずつ抜けたが、まだ少し震えている。
ユリウスに関しては、先程よりも気合が入っている。
少しして、背後から試験官と思わしき人が訪ねてきた。
「試験を受けるのは君達かな?」
「はい、僕を除いた二人です」
「わかった。試験場に移動しようか!」
席を立ち上がり、先行く試験官の後ろをついて行く。
試験官の腰には鞭がかかっている。恐らく鞭が試験官の武器。
「さぁ着いた、ここが試験場だ」
試験場の広さは通常の闘技場と同じぐらいで、試験場にしては広い方だと思う。
「早速、魔力を測らせてもらう。一人ずつ、この魔玉に手を置いてくれ」
「魔玉が光るほど、魔力が高いという証で、光の色で属性が分かる」
一番手はユリウスだ。
少し疑っているのか、恐る恐る魔玉に手を置き、魔玉がゆっくりと光り始める。
しかし、光の色は透明だった。
一定まで光続き、ユリウスが手を離した瞬間に魔玉は元へと戻った。
ユリウスは試験官に評価を聞くが、試験官は口をポカーンと開いたまま塞がない。
「あ……あの、私の魔力と属性はどうだったのでしょうか?」
「君の魔力は測れた……だけど、属性に至っては透明なのは初めてだ」
試験官が、魔力や属性に詳しい人を呼びに行ってしまった。
事情を聞いた知識爺さんは慌てて、闘技場までやって来る。
「あ……ありえない! 長い年月、魔力と属性について調べているが、魔玉が透明のままなのは初めて見た」
「確証はない! 恐らく君の属性は【光】だと思う」
ユリウスは表情を変えず、何が何かわからない状態だった。
セリスの魔力と属性も測ってみたが、ユリウス同様に透明のままだった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。